子どもに愛されるダメ親のススメ『バケモノの子』

バケモノの子 メインビジュアル

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思春期の子どもって、基本的に親のことをウザイと思ってますよね。親なんて何もわかってないし、ダサいし、うるさいし!

親は親で「この子のためを思ってあれこれ言ってるのにどうしてわかってくれないのかしら!」と、もどかしく思ってる。

ついこの前までは仲良く手をつないで遊んでたのに、いつからこんなぎくしゃくしちゃったんだろう?……というのは、自我を確立しようとする思春期の子と親の普遍的な関係性なんで、ある程度はしょうがない。

映画『バケモノの子』は、そんなすべての思春期の少年たちに「君は一人じゃない。みんな味方なんだよ!」と、そしてすべての親たちに「立派な親じゃなくたっていいんだよ!」っていう強いメッセージをくれる、やさしいやさしい物語です。

竜さんの「大切なことは全部映画が教えてくれた」

誰もがみんな心に小さな闇を抱えて、それでも一生懸命もがいてる!


幼い頃に両親を失い、ひょんなことからバケモノの世界に迷いこんでしまった九太は、父親代わりの熊徹というバケモノに育てられながらも、幼少期のトラウマから心に闇を抱えちゃうんですね。

バケモノ界で皆の尊敬を集める猪王山に引き取られ、何不自由なく育ってきた一郎彦もまた、自分の生い立ちに苦しみ、人知れず闇を抱えている。

九太が人間界で出会った少女・楓は言います。
「私もときどきどうしようもなく苦しくなるときがある。どうにでもなれって、何かが胸の中から噴き出してしまいそうになる。きっとみんなそう。だから大丈夫。だから、大丈夫!」

楓もまた、裕福な家庭に育ちながらも親の幸せのために生きている自分に葛藤し、苦しんでいるんですね。

彼らに限らず、思春期の子どもっていうのは多かれ少なかれみんな「人に言えない悩み」を抱えるもんです。それをどうしていいのかわからなくて、そんな風に悶々としているのは自分だけだと思い込んで人知れず苦しむ。

大人から見たら笑っちゃうくらい小さな悩みでも、子どもにとっては大事件ですもの。みんなだってそうだったでしょ?

そんな心の闇をコントロールできずに増幅させてしまった子たちが、いわゆる少年犯罪に走ってしまうなんて言うけど、そんなもん子どもにコントロールなんてできませんよ。大人だって感情にふり回されるじゃないですか。

心の闇を大きくするのも小さくするのも、まわりにいる人たちです。

苦しいのは自分だけじゃない、みんなどこかで同じ思いをしてるんだっていう共感が、心を楽にしてくれる。誰かを頼って、助けられて、叱られて、守られて闇を広げずにすむ子と、すべてを自分で抱え込んで闇を大きくしてしまう子がいるだけです。

心の闇っていうのは「孤独」のことだから、自分は一人じゃないんだ!って思えれば、自然と消えていく。もがきながら成長する九太たちがそれを教えてくれます。

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立派な親じゃなくたっていい!


心にぽっかりと開いた闇の穴を埋めてあげられる最も身近な存在はもちろん「親」なんだけど、べつに立派な親じゃなくたっていいんです。

猪王山や楓の親のように社会的に成功している立派で優れた大人じゃなくても、熊徹のようにだらしなくて子どもみたいなハンパな親でもいいんです。優れた模範を見せなくてもいいんです。

むしろ熊徹のようにプライドも恥も捨てて、親と子(師匠と弟子)というよりは同じ年の友達のように対等に向き合って、ケンカばかりのほうが心が通じ合ってるんですね。おだやかな家庭より、親に「大ッキライだ!」って言えちゃう方が本当はずっと健全です。

対して猪王山は武術にも長け、たくさんの弟子を抱える人格者だけど、親と子という上下関係を崩さず、一方的に大人の解釈を押しつけるから、めいっぱいの愛情を注いでいるつもりなのに一郎彦の闇に気づけなかった。「この子のために正しい道を教えてあげよう」なんておこがましいことを考えるから見えないんです。

ていうか見た感じでも、「私は良き理解者だよ」ってにこやかに悠然としている猪王山って、悩みとか打ち明けにくいんですよね。なんだかんだうまい具合に丸めこまれそうで(笑)。
でも熊徹だったら、ちゃんとした答えはくれなそうだけど、なんか全部話せそうな気がする。

だからきっと子どもたちって、正解が欲しいんじゃなくて「話を聞いてほしいだけ」なんですよね。

親だってみんな初めての子育てで、親ビギナーなんだから、人の行く道を導いてあげることなんて本来できないんじゃないでしょうか。
価値観の移りゆくこのスピーディな世界で、何が正しくて何が間違っているかなんて教えられない。熊徹の言うように「意味は(子どもたちが)自分で見つける」ものです。子どもたちにはそれができる、って信じてあげることです。

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親は子に育てられる


筆者にも思春期の息子がいますが、彼が大人になるにつれて、僕自身が彼に育てられたんだなっていう実感が強くあります。熊徹が九太との生活の中で成長していったように、「親は子に育てられる」とはよく言ったものです。

親もカッコつけずに子どもに腹割って、弱いところもカッコわるいところも見せちゃいましょうよ!
子どものために何かする、なんて思わずに、ただ隣にいて、ときに知恵を貸してあげて、子ども自身が「意味を見つける」手伝いをしてあげるだけでいい。

熊徹の言葉が物語っています。
「九太は自分じゃ一人前のつもりでいるが、今はまだ誰かの助けが必要なんだ。オレはハンパもんのバカヤローだが、それでもあいつの役に立ってやるんだ。あいつの胸の中の足りねえもんを、オレが埋めてやるんだ」

それが、親にできる最大の役目なんじゃないでしょうか。

(文:茅ヶ崎の竜さん)

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