藤岡弘、こそ日本のスタローン!「クリード」に涙した映画ファンなら必見の作品「仮面ライダー1号」。

仮面ライダー1号

(C)「仮面ライダー1号」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

読者の皆さんは聞いた事があるだろうか、「技の1号、力の2号」という言葉を。

そう、きっと昭和ライダーファンなら、DNAに刻み込まれているはずの、この言葉。実は今回の鑑賞中、ある場面でこの言葉が、ずっと筆者の頭の中でリフレインされていた。

本作での1号ライダーのデザインは、今までのスマートなそれとは大幅に印象が異なり、言わば重量感溢れる「アーマータイプ」に変更されている。これは、肉体的に限界寸前でありながら、45年間戦い続けて来た本郷猛が、自身の肉体の衰えをカバーするために自己改造を続けた結果と見る事が出来るだろう。同時に彼の乗るネオサイクロンも、今回はスピードよりもパワー重視の重量級モンスターバイクといった仕様にリニューアルされている。

実は、本作を観て非常に意外だったのが、今回1号ライダーが多くの場合「ライダーパンチ」で敵を倒していた事だ。ラストのボスキャラ対決や、要所ではライダーキックで敵を倒す事もあるのだが、本来2号ライダーの必殺技である「ライダーパンチ」で敵を倒す1号ライダー!その雄姿に思わず感動する筆者の頭にリフレインしていたのが、冒頭で紹介した、「技の1号、力の2号」の言葉だった。

2号ライダーの特性である「力」を受け継いで闘う、1号ライダー=本郷猛!残念ながら今回ダブルライダーでの復活登場は実現しなかったが、確かにその時、自分には二人で共に闘うダブルライダーの姿が見えた気がした。そう、スクリーンには映らなくとも、そこに「一文字隼人」2号ライダーは確かに存在したのだ!

公開前はファンの間でも賛否両論あった、今回のデザイン変更だが、個人的には変身前と変身後で、シルエットに違和感が無くなったのは、結果的に成功だったと思う。

仮面ライダー1号

(C)「仮面ライダー1号」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

これは昭和ライダー対平成ライダーの時に感じた事なのだが、本郷猛と変身後のライダー1号との体型の差がありすぎて、それだけで現実に引き戻される感が強かったからだ。前述したように、2号のパワーと、年齢を経た1号の重厚感を表現する上で、今回のデザイン変更は最大限の効果を上げていると言っていいだろう。

今回は敵組織である「ショッカー」の設定も、現代の情勢に合わせた変更が加えられており、反抗勢力である「ノバ・ショッカー」の戦略が、旧ショッカーの様な直接攻撃による破壊活動ではなく、経済戦略により裏から世界を支配するという、より巧妙でリアルに感じられる物となっている。

この新旧世代交代という裏テーマがあるからこそ、本作での地獄大使の存在が生きて来るというわけなのだが、ただ、ノバ・ショッカー幹部3人の中で、長澤奈央だけが怪人体にならないのは、少し不満だったと言える。彼女の武器がサーベルだったので、てっきり「蜂女」的な怪人に変身する事を期待していたのだが・・。うーん、個人的に残念でならない。

とは言え、ここ数年の劇場版の様に、安易な「パラレルワールド」や「歴史改変」物にしなかった製作陣の判断には、心から拍手を送りたい。

近年の「オールライダー大戦」路線で陥っていた悪循環、つまり「過剰な情報量、希薄になる意味」から、やっと脱却出来たと言えるのではないだろうか。
今までの様に全ての状況をセリフで説明しようとせず、とにかく藤岡弘の表情、そして彼の背中、立ち姿だけで我々に大事な事を伝えてくれるからだ。

命の意味や、年々希薄になる人と人との繋がり、原発やエネルギー問題など、本作の企画段階から関わっている藤岡弘の主張やテーマが、作品に明確に反映されている事は、彼の出演を長年待ち望んだ我々ファンへの、何よりのプレゼントだと言っていい。

ラストシーン〜エンドクレジットまで、背景に映り続ける「風力発電用の大きな風車」こそは、大自然の使者であり風を力に変えて戦う仮面ライダーからの、現代社会へのメッセージだと言えるのではないか。

仮面ライダー1号

(C)「仮面ライダー1号」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

ただ、その反面、今回96分という、子供向けには長めの上映時間に加えて、全体的にアクションが少なめ(特に前半部)だったせいか、劇場内の子供たちが本郷猛のセリフ絡みのシーンではおしゃべりを始めたり、退屈そうにしていたのは残念だった。子供をターゲットとした映画として製作する以上、やはり今回以上にメッセージ性を高めたり、大人向けの内容にする事は、ひょっとしたら限界なのかも知れないと感じたのも確かだ。

実は本作を鑑賞中、ずっと本郷猛の姿が、「ランボー最後の戦場」でのスタローンと重なって見えてしまい、思わず目頭が熱くなってしまった。更には、本作での本郷猛と地獄大使のまさかの展開、これは「ロッキー・シリーズ」でのロッキーとアポロの関係ではないか!「そうか、日本のスタローンは藤岡弘、その人だったんだ!」そう思わずにはいられなかった。

映画「クリード」で、自身の「老い」と「弱さ」を恐れずに見せたスタローンの姿に涙した映画ファンなら、本作のラストシーンでスクリーン一杯に映し出される本郷猛からのメッセージをその眼で確認するためにも、ぜひ今すぐ劇場に駆けつけて頂きたいと思う。

過去の「仮面ライダーFIRST」や「仮面ライダーNEXT」のように、一気に大人向けのターゲット作品に移行する事は難しいだろうが、今年4月1日よりネット配信される「仮面ライダー・アマゾンズ」の様に、子供向けの時間帯・地上波放送では難しい内容・描写の作品も、今後製作されていくようだ。
世代を越えて受け継がれ、今後ますます進化・変革していくであろう、「仮面ライダーワールド」。

そして、その「原点にして頂点」こそ、やはり本郷猛=藤岡弘である事を認識させてくれるのが、この作品「仮面ライダー1号」だ。
そう、仮面ライダー1号の「1」は、「ワン・アンド・オンリー」の「1」でもあるのだ!

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(文:滝口アキラ)


    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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