スター・ウォーズよ、もっとがっついてこう!「ローグ・ワン」で分かった、新体制スター・ウォーズの戦略と課題。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

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まずは何といっても「ローグ・ワン」

エピソードカウントにはないスピンオフムービーの “前日談”というアナウンスでしたが、ここまでエピソード4「新たなる希望」の直前にまでつなげてくるか!?という映画になっています。いわば前“日”談話ならぬ前“数時間”談。

いずれ、「新たなる希望」との連続上映企画なんてものがあってもいいかもしれませんね。

とはいえ、「新たなる希望」の前なのでルークやハン・ソロは出せませんし、オビ・ワンやヨーダもまだ隠遁中です。そしてエピソード3「シスの復讐」からは20数年の月日が経っているので、そちらからもキャラクターを簡単に引っ張ってくることはできません。

というわけで、この映画用の新キャラクターが大量投下されます。しかもインパクトを早めにつけておきたいために今までの無名俳優を登用する慣習から外れて、キャストはキャリア的にかなり厚めです。

ヒロインのジンを演じるフェリシティ・ジョーンズはトム・ハンクスのラングドン教授シリーズ最新作「インフェルノ」で相手役を務めています。その父親を演じるのはデンマークの至宝マッツ・ミケルセン、帝国軍の軍服姿が映えます。過激すぎて反乱軍からも煙たがられる過激派のリーダーにはオスカー俳優のフォレスト・ウィテカー。そして、頼りになる用心棒コンビにドニー・イェンとチアン・ウエン。(ここで中国から二人も大きな役どころで登場するのが今のハリウッドでのチャイナパワーを感じますね。)

生身の俳優が出せない分、記号的なモノはちゃんと出ています。帝国軍からはデス・スターにスター・デストロイヤー、タイファイターが、反乱軍からはX-ウィンング、Y-ウィングなどのフィギュアやLEGO©でおなじみのマシーン。そして、中身に関係ないといいますか役者さんの顔が出ないで済むダース・ベイダー、R2-D2、C3-P、などの象徴的なキャラクターも登場。

デス・スターの司令官ターキンも登場します。(若手俳優ガイ・ヘンリーのそっくりさん演技をCGで加工!)そして最後にはあの彼女が若い姿のままで。

今後の戦略が見えてきた

エピソード7「フォースの覚醒」はエピソード6「ジェダイの帰還」の約30年後のお話しでした。ということで、丸々何もかも一新してしまうこともできたはずです。ところがルーク、レイア、ソロがそろって登場。脇のキャラクターもセミリタイア中だったものの、帝国軍残党ファースト・オーダーの脅威のために、再び戦列に復帰したなどという説明書きで登場するなど“懐かしのあの顔・この顔”状態でした。

そしてこの「ローグ・ワン」の内容。次にアナウンスされているスピンオフも“ハン・ソロの若き日の物語”ということなので、今後の戦略はとにかくクラシック三部作(エピソード4~6)に寄せてくることなのが分かりました。

グッズの売り上げ、キャラクターの定着の度合いを冷静に大人の目で見てみたとき、やはりシリーズの基幹にあるのはクラシック三部作であるいう判断が下されたのでしょう。

そもそもの話。

スター・ウォーズが再開したのは生みの親ジョージ・ルーカスが「シスの復讐」で終わり!!と宣言したにもかかわらず、ディズニーにシリーズの権利を売却したところから話が始まります。

目下ディズニーにはもともとのいわゆる“ディズニーアニメ”に“ピクサーアニメ”。それに“MCU(=マーベルシネマンティックユニバース)”のマーベルコミックス映画全般(X-MENシリーズ以外はほぼ全て)、そして“スター・ウォーズシリーズ”ととにかく、強烈なブランド力を誇るものが大結集している状態です。

まぁ、ディズニーといえばブランドの確立と拡大に関しては右に出る者はいないといってもいいほどの歴史と技術を誇っているので、自然な流れかもしれませんね。

だから抱えているシリーズの安売りはしませんし、安易なタイアップに走ったりしていません。

ただし、覚えていますか?

 日本において「フォースの覚醒」が週末興行ランキングで「妖怪ウォッチ」に敗れて初登場2位スタートになったことを。
そして、それから一年。再び「ローグ・ワン」は「妖怪ウォッチ」に敗れて、またもや2位スタートとなりました。

ハリウッドの主要市場国において初週で1位を取れなかった国は日本ぐらいでしょう…。

「フォースの覚醒」は数字的に言えば最終的に「妖怪ウォッチ」とWスコア並みの数字をたたき出して格の違いを見せつけましたが、それだけに“最初の最初”の部分が残念でなりません。そして、その総興行収入も「君の名は。」に抜き去られてしまいました…。

10年以上のブランクを経てのシリーズ復活というと日本でいえば今年「シン・ゴジラ」がありました。「シン・ゴジラ」のがむしゃらさはちょっと引いてしまうほどでした。何パターンもあるチラシ・ポスター・予告編はもちろん、TOHOシネマズ新宿のゴジラヘッド、新聞全面広告、TOHOシネマズのロゴCMととにかくゴジラもびっくりの物量作戦に打って出て“空白の時期にいてゴジラを知らなかった人たち”へ徹底的に刷り込みました。

対して「フォースの覚醒」は予告編こそ数パターンありましたが、チラシとポスターは一種類だけ予告編も新規開拓というよりは旧来からのファンへのサービスといった趣のものが多くて「シスの復讐」からの空白を埋めてくれるほどのものではありませんでした。

それでも「フォースの覚醒」はそれでもよかったのかもしれません。もうないと思われたシリーズの新作が始まる。さらに先がわからない新シリーズが始まるということ自体が大事件ではあるので、淡白な宣伝も良しとしましょう…。

しかし、「ローグ・ワン」はスピンオフ。シリーズを見ていない人には全く分からない話なのですから、もっとがむしゃらにがっついて欲しかったです。チラシ・ポスターも今回は何パターンも出てきましたが、そもそもシリーズがわからない人にはあの球形宇宙衛星のようなものが恐怖の兵器“デス・スター”であることもわからないでしょう。

「ファンタスティック・ビースト」の宣伝の一環で「ハリー・ポッター」シリーズが地上波で放映したぐらいですから、せめて「新たなる希望」の地上波放送ぐらいはほしかったのが正直なところです。

天下のディズニーに上から目線で恐れ多いのですが、ブランド力に胡坐をかいているように見えてきます。ドカッと王者の風格を見せるのもいいのですが、スター・ウォーズを愛するものとして「妖怪ウォッチ」に2連敗というのは悔しい限りです。もっとがむしゃらにがっついていきましょう!!!

(文 村松健太郎)

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    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎
    脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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