『帝一の國』が予想を遥かに超えて、めっちゃ面白いという事実

■「映画音楽の世界」

(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝(C)古屋兎丸/集英社

古屋兎丸の人気漫画を実写化した映画『帝一の國』。主演に菅田将暉を迎えた同作は高校の“政権闘争”をテーマに、本物の政治ゲームを彷彿とさせるようなひりひりとした緊張感で生徒会長選挙を主軸にした物語になっています。

共演に野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大ら人気若手“イケメン”俳優を豪勢に配し、現在話題の作品に引っ張りだこの永野芽郁、ベテランの吉田鋼太郎、山路和弘が脇を固めています。

そしてこの作品が、すこぶる面白い! 決して単調になることはない物語と、個性際立つ各キャラクターの魅力がぎっしりと詰まった本作。今回の「映画音楽の世界」では、そんな『帝一の國』を紹介したいと思います。

キャラクターも、ストーリーも、とにかく熱い!

本作の魅力の一つは、よくぞこれだけのキャストを揃えられたなと感心するほど豪華なメンツがキャラクターを生き生きと演じきっていること。古屋兎丸の原作ビジュアルを上手く体現して、汚れ役すら厭わない強烈なインパクトはそれだけで本作の成功を意味しています。

策士であり靴を舐めてでも生徒会長に登り詰め、己の“國”を作ろうとまで野心を燃やす赤場帝一。親の世代から赤場家と確執関係にあり、常に帝一と張り合う東郷菊馬。親の足かせに引きずられながら対立する構図はそのまま海帝高校生徒会長選挙へと重なっていきます。

この生徒会長選挙というのが物語の中心になりますが、「たかが高校の生徒会選挙」と侮ることなかれ。その結果はスクールカーストどころか、日本の政治経済の将来を左右するほどの影響力があるとされます(実際にその影響が巡り巡って帝一と菊馬の対立へと繋がっている)。

そのため、海帝高校で繰り広げられる政権闘争は実にえげつなく、時には人間の欲望の片鱗を浮かび上がらせるほど現実めいたもの。優秀であるがゆえに自信に満ち溢れた様子を表面上にたたえながら、水面下で繰り広げられる攻防。常に相手の動向を伺いつつ一歩先の局面を予測しながらの展開は人間性すらあぶり出していきます。

(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝(C)古屋兎丸/集英社

高校が舞台なのである意味ライトなタッチではありますが、間宮祥太朗演じる氷室ローランドと千葉雄大演じる森園億人の生徒会長選にスポットを合わせながらそれぞれの思惑が最後までもつれていくので、先が読めないミステリー的な観方も可能です。

それでもこの政治ミステリーを全く飽きることなく観ることができるのは、絶妙なコメディセンスが全体のトーンを整えているからでもあります。「高校生」だからこそ許されるノリもあり、例えば歴史のテストに出てきそうな「マイムマイム事変」は、リアリティを欠如しながらも億人という生徒への人望を語る上で巨大な踊りの輪が形成されていくというビジュアル的な驚きも観客に与えます。

一歩間違えれば寒いギャグになりかねない各キャラクターに濃厚な個性を与え、菅田将暉の全力演技や志尊淳のにゃんにゃん系ヒロイン気質など、随所に“笑い”に繋がる要素が選挙戦とのギャップ効果を生み出しています。

では本作が政権闘争コメディだけで物語が終わるのかといえばそんなことはなく、むしろ裏テーマ的に寄り添うドラマパートが軸になる仕掛けになっています。親の期待を一身に背負う世襲的な親子関係。政治ゲームとはいえあくまでも高校生であることの“友情”、あるいは“因縁”。

そもそも、なぜ帝一が「自分の國を作る」ことに固執するのか。その意味が明かされると同時に、時を超えて親と子の信頼関係にまで楔を打ち込むことになります。決して上辺だけでストーリーが構成されているのではなく、物語の起点である因果をしっかりと描き、帝一の野望という表立ったテーマの裏側にぴたりと寄り添い続けて物語のすべての要素へと枝分かれしていきます。

生徒会長選挙と、帝一が抱える思い。全てが絡み合ってなお結末は見事と言うほかない緻密な脚本になっていて、オープニングからエンディングに至るまで圧倒的な熱量を誇った作品はそうそう出会えるものではありません。

(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝(C)古屋兎丸/集英社

フンドシ太鼓が熱い!

勢い付いているのは音楽も同様です。劇伴を担当したのは、これまでに『舟を編む』や『湯を沸かすほどの熱い愛』を手掛けてきた渡邊崇が担当。オーケストラの編成としてはそれほど厚みはない少数演奏ではありますが、その代わり各ストリングスパートやブラスの力の入れようが前面に押し出されて物足りなさは微塵も感じさせません。

メロディラインもはっきりしているので帝一のボルテージを音楽面から高ぶらせ、生徒会長選の「面白み」をより引き立たせています。かと思えば億人を囲む「マイムマイム」は巨大な踊りの輪に対してチープ感のある原曲アレンジでサントラ盤の中でも「海帝高校校歌」と並んで異彩を放っています。

「帝一の國」オリジナルサウンドトラック

残念ながらサントラ盤からは漏れてしまいましたが、作品内でもっとも血潮をたぎらせたのがフンドシ太鼓こと「大海祭」と名付けられた太鼓曲ではないでしょうか。生徒会長選挙が開始され、帝一が氷室に学園祭の出し物として提案したパフォーマンスで、こちらの楽曲は和太鼓グループ「彩」が作曲を担当。

(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝(C)古屋兎丸/集英社

彩は東京大学サークルとして開設されたのちプロになったグループで、本作では作曲と同時に出演者への指導並びに演奏シーンでの出演も果たしています。演技用に抑えた打譜とはいえ、プロ集団と肩を並べてフンドシ姿で力強く太鼓を打ち付ける様は若手俳優の肉体美も手伝って卒倒してしまうような、圧倒的なエネルギーを見せてくれます。プレミアイベントで俳優陣が揃って演奏パフォーマンスを行ったのを見た人も多いのではないでしょうか?

本作の主題歌を担当したのは3ピースバンドのクリープハイプ。永井監督からオファーを受け取った彼らが書き下ろした「イト」は、ボーカル・尾崎世界観の文字どおり独特の世界観と、繊細ながら一筋縄ではいかないような鋭さを感じさせる歌詞が、帝一の“国取り”を盛り上げています。

本作はドラムリズムとストリングスのメロディが士気を上げる楽曲から和太鼓、民謡、クラシック、J-POPと、実にバラエティに富んだ音楽も「聴きどころ」になっています。

まとめ

近年の良質な邦画ラッシュの流れに合流する本作の魅力は語り尽くせませんが、とにかくストーリー、ビジュアル、音楽などよくぞここまで1本の作品にまとめたなと拍手を送りたくなる作品です。私たち観客も生徒会長選挙の渦に巻き込まれたような臨場感があり、沸き起こる笑いもあって劇場全体が一体になっているような感覚があります。

なので「ソフトが出たら」「テレビ放送早そうだし」などと思っていたらもったいない。劇場で大勢の観客と共有することで、海帝高校に入学したような“擬似入学”を通して、帝一たちの選挙を見守ってみてはいかがでしょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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