『疑惑のチャンピオン』が炙り出す“都合の良いことを信じる恐ろしさ”

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サイクルロードレース“ツール・ド・フランス”で7連覇を達成するも、その後ドーピングが発覚しそれらを剥奪され追放されたアメリカ人ランス・アームストロングを描いた映画『疑惑のチャンピオン』。

年末の12月21日よりついにブルーレイ&DVDが発売。ドーピングの話はスポーツマンだけの話と思って侮るなかれ。この映画は広義で見れば「都合の良いことを信じてしまう人間の恐ろしさ」を描いています。他人事ではなく胸に手を当てて見るべき痛恨の一撃映画です。

映画『疑惑のチャンピオン』の物語とは?

まずはわかりやすく簡潔にまとめてみましょう。

ステージ3の精巣ガンに倒れたサイクルレーサーが奇跡の復活をし、その後“ツール・ド・フランス”で7連覇の前人未到の偉業を成し遂げるも、その裏では組織ぐるみでのドーピングが行われていた…。

というお話です。これは実話でして所謂原作本が存在します。

原作本のタイトルは『Seven Deadly Sins: My Pursuit of Lance Armstrong』。


※洋書です。

著者のデイヴィッド・ウォルシュはどこの誰かと言いますと、サンデー・タイムズの記者。つまり、このデイヴィッドは長年明らかにされなかったランス・アームストロングのドーピング疑惑を暴いたというわけです。つまるところ暴露本的なところがあります。

これをベースに映画的に見応えたっぷりに脚色され映像化されたのが今回の『疑惑のチャンピオン』というわけです。

詳細のあらすじ紹介を挟んで、本題である「ドーピング」と「都合の良いことを信じる恐ろしさ」について語って参ります。

1993年にサイクルロードレースの最高峰〈ツール・ド・フランス〉にデビューした若きアメリカ人、ランス・アームストロングは、勝利への飽くなき野心に満ちあふれていた。しかしスイスの薬局で血液中の赤血球を増加させる薬を購入し、レースで優勝した直後、激しく咳き込んで吐血してしまう。医師から、重度の精巣ガンに冒されすでに脳にも転移していると宣告された彼は、絶望のどん底に突き落とされる。  過酷な大手術とリハビリを経て快復したアームストロングは、競技生活に復帰しチャンピオンに返り咲くため、スポーツ医学の権威であるイタリア人医師ミケーレ・フェラーリの指導を仰ぐ。フェラーリはサイクリストのパフォーマンスを向上させる独自のプログラムの実践者だった。
こうして再出発の態勢を整えたアームストロングは、1999年の第86回〈ツール・ド・フランス〉に乗り込み、驚異的な快走を披露して見事に優勝を果たすが、ガンを克服してのセンセーショナルな復活劇にかねてからアームストロングの才能を高く評価していたスポーツ・ジャーナリスト、デイヴィッド・ウォルシュは疑念を抱く。上り坂が苦手だったアームストロングが、短期間のうちにこれほど飛躍的にスピードが上昇するようになったのは、あまりにも不自然ではないかと……。  その後も彼は無敵の快進撃を続け、2005年の〈ツール・ド・フランス〉で7連覇を達成。しかし、その偉業と共に巧妙な手口でドーピング検査をすり抜けながら、ウォルシュからの追及を躱し続ける闘いも繰り広げられていた。サイクルロードレース史上に偉大な記録を打ち立てた最強のチャンピオン、ランス・アームストロング。果たして彼は英雄か、それとも……。

ドーピングについての驚き

今年の夏日本中を熱狂に包んだリオオリンピック。ロシア選手のドーピングについての報道も多くされ“ドーピング”という言葉は良くないながら広く認知をされました。

この映画、ランス・アームストロングのドーピングは大きく2側面あります。

1つは誰もが知っている身体への何らかの投与のドーピング。今作でもこれがメインのドーピングとなりますが、「ここまで綿密にやるのか!」とその組織ぐるみのドーピング行動に思わず驚愕してしまいます。(映画的見どころでもあります)

ランス・アームストロングは現役を引退するまでドーピング検査で陽性は出ていません。ドーピングがバレたのは引退後なので、検査は完全にクリアしていたわけです。どのようにクリアしていったかは…是非映画でご確認を!

またもう1つのドーピング、と言いますか不正がなかなか「そうくるか!ってかできるのか!?」と驚くものでした。こちらも是非映画でご確認を!(個人的にはこっちの方がビビりました)

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都合の良いことを信じる恐ろしさ

ランス・アームストロングは言ってしまえば“平気でドーピングしまくってた”わけで、そこには「またやってしまった…」的な葛藤は皆無です。

これはスポーツ業界全体からドーピングがなくならないことにも繋がると思うのですが、どうも人によっては心の底から悪いと思わないようです。それくらい日常茶飯事でドーピングがされているのかと思うと何とも複雑な気分になりますが…。(オリンピックでもバレずにやってる人いるんだろうなと疑念を持ってしまいますね)

倫理的によろしくないということを一旦置いて考えると、「ドーピングしてでも勝つことは本人だけでなく関係者にもプラスな部分が多いんだろうな」と考えられます。またランス・アームストロングは癌から再起してますので、ドラマティックなストーリーがそこには存在します。

つまり「そうすることが一番都合が良かった」ということでしょう。もう一度書きますが倫理的にはよろしくないという前提でのお話です。

“都合の良いことを信じる”ということで考えれば人間誰しも思い当たる節があるのではないでしょうか。

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・好きな人が「きっと自分のことを好きかもしれない」と信じる都合の良い解釈。

・良い占いは信じて、良くない占いは信じない都合の良い解釈。

・「来年はきっと良い年になる!」という根拠なき都合の良い願望。

と、この辺りは可愛いもので、今年芸能界を悪い意味で賑わせたゲス不倫騒動や薬物問題などは“都合の良いことを信じた末に最悪の結末”を迎えたと言えるのではないでしょうか。

“信じる”とは素敵なことに思えて、時としてそれは魔物になるなとこの映画を見て思いました。

暗い話をしているように聞こえるかもしれませんが、そんなことはなく、冷静にそのように思えた映画です。

来年を良い年にするために、間違ったことを信じないために、『疑惑チャンピオン』、是非見てみてくださいね。

http://www.shochiku.co.jp/dvd/champion/

(文:柳下修平)

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