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『マイ・サンシャイン』は感動作? 実はゾンビ映画級のパニックが街を襲う!



©2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES



「007」シリーズのダニエル・クレイグと、アカデミー賞女優ハル・ベリーが共演する新作映画『マイ・サンシャイン』が、12月15日から日本でも公開された。

1992年に起こった、“アメリカ史に残る大暴動”を描いた本作だが、日本版のポスターからは、家族の無い子供たちを育てる女性を描いた感動作の様に思えるのも事実。

果たして気になるその内容とは、一体どんなものだったのか?



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ストーリー


1992年、LAサウスセントラル。家族と暮らせない子供たちを育てるミリー(ハル・ベリー)。貧しいけれども、ミリーの愛情は光りに溢れ、誰もが居場所を見つけていた。白人の隣人オビー(ダニエル・クレイグ)は騒々しいミリーたち家族に文句をつけながらも、実は彼らを見守っている。
しかし、黒人が犠牲になった事件に対する不当な判決が出たことにより、LAで暴動が始まり、ささやかに暮らしていたはずの彼らの生活にも、変化が訪れる…。
暴徒と化した市民が商店から略奪している映像をテレビで見て、店に向かう子供たち。小さな子供たちだけが家に残される。ミリーとオビーは子供たちを守ろうと必死に混乱を極めた街を奔走する――。


予告編


実は、あの“ロサンゼルス暴動”を描く、骨太な内容の作品だった!



貧困や家庭環境などの理由で親と暮らせない子供たちを育てている、ホストマザーのミリー。それぞれ親も育った環境も違う子供たちだが、皆仲良く家族として暮らしていた。ところが、そんな彼らの幸せな日常に突然ロサンゼルス暴動の波が押し寄せて…。



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本作の舞台である、LAのサウスセントラル地区での厳しい生活や、子供たちが常に危険や暴力、そして犯罪への誘惑にさらされながら生きている状況など、実は本作で登場するシーンは、全て現実を基に描かれているというから、驚かされる。

まだ暴動の原因すら分からない子供たちの目線から語られることで、観客側もこの暴動の中にいきなり放り込まれた様な臨場感が味わえる本作。

特に、今回全員がオーディションで選ばれた子役たちの演技は実に自然で、二人の大スターにも決して引けを取らない素晴らしいものとなっていた。



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そんな子供たちが、あの大暴動の中で何を見て何を体験したのか? 決して綺麗ごとだけでは終わらせない、予想外に骨太なその内容には、きっと誰もが衝撃を受けるはずだ。

非常にシンプルな原題『KINGS』に込められた想いとは?



1991年にアメリカで起こった二つの事件。「ロドニー・キング暴行事件」と「ラターシャ・ハーリンズ射殺事件」に対して下された、あまりに黒人の人権を無視した判決がきっかけとなって、住民の怒りや不満が次第にあの“アメリカ史に残る大暴動”へと発展していく過程が描かれる本作。

日本版ポスターの印象から、子供たちとの絆を描く心温まる感動作と思って劇場に足を運んだ観客は、きっと映画の冒頭から衝撃を受けるに違いない。

そう、この二つの事件が実際のニュース映像を交えて紹介されるなど、実は決して甘い感動物語などでは無いその内容は、とても女性監督が撮ったとは思えないほど、力強く緊張感に満ちたものだからだ。



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二つの事件とも証拠の映像が残されていたにも関わらず、加害者側が罪に問われなかったという、黒人社会の厳しい現実が観客の前に突きつけられる本作。

同じ人間でありながら、その命の価値が肌の色や人種によって左右されるという事実を知った当時の黒人たちの怒りや絶望は、きっと我々の想像を超えるものだったに違いない。



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実は原題の『KINGS』には、『マイ・サンシャイン』というどこか甘さが漂う邦題とは違って、非常に深い意味が込められている。

暴動のきっかけとなった事件の被害者である“ロドニー・キング”と、暴動へと向かう黒人社会の中で、必死に理性的な行動を呼びかけた牧師たちの象徴としての、“キング牧師”の存在がそれだ。

この二人の“キング”の対比に加えて、サウスセントラル地区の貧しい生活から盗みに走る者と、それでも自身で働いてお金を得ようとする者との対比を描きつつ、次第に暴動へと発展していく社会の大きな流れの中で試される、家族の愛情や絆の強さを同時に描いている本作。



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ミリーたち家族が直面する“ロス暴動”の凄まじい臨場感とその結末を、是非劇場で体験して頂ければと思う。

最後に



長編デビュー作『裸足の季節』の印象が強い女性監督、デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの作品だけに、ハル・ベリー演じるミリーと子供たちとの絆を描いた、女性目線の泣ける感動作と思って今回鑑賞に臨んだ本作。

だが、映画冒頭の衝撃的な展開を含めて、実は1992年の“ロサンゼルス暴動”へと向かう大きな流れに巻き込まれた家族の姿を、子供たちの目を通して克明に描こうとする、非常に志の高い作品となっていた。

しかも、当時の暴動の様子を迫力満点に再現した終盤の展開は、完全にゾンビ映画の様な緊迫感とパニックに街中が襲われるという素晴らしさ!



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中でも特に印象に残ったのが、バーガーキングの店舗が子供たちに襲撃されそうになるシーン。店を取り囲む子供たちに向かって、バーガーキングの店員が取った神対応が実に見事なのだ!

社会的な一般道徳を説くよりも、やはり自分達の生活や利益にどう直接関わってくるかを説明した方が、子供たちの心には分かり易く響く。そう教えてくれる店員の名演説なのだが、何とこのエピソードも事実に基づくものだったとは!



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深い家族愛や社会問題、更に緊迫感溢れる暴動シーンまで、想像以上にエンタメ性の高いこの『マイ・サンシャイン』。

あのダニエル・クレイグが挑戦する、まさかの『プロジェクトA』オマージュシーンは、是非劇場で!

(文:滝口アキラ)
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