ワガママになるだけでみんなハッピーになる「寅さん幸福論」

『マイ・インターン』でデニーロが演じたベンもそうだったけど、ただそこにいるだけでまわりの人を幸せにしてくれる人っていますよね。

中には、おせっかいだったり、ワガママだったり、情けなかったり、決していい人ではないのに、けっきょくこの人がいるとみんな笑ってるなあっていう人。

僕はお悩み相談みたいな仕事もやってるんだけど、じつは悩みに向きあうよりも、悩みを抱えながらも楽しいことをやって笑っているうちに「そもそもそんなに悩むことなんてなかったんだ」って気づくことが、究極だったりするんです。

これは有名な心理カウンセラーの心屋仁之助さんが同じようなことを言っておられるんですけどね。

そんな、ただ好きに生きているだけでまわりをハッピーにしてくれる人っていったら、そう、『男はつらいよ』シリーズの寅さんじゃないですか。

男はつらいよ 星井七億 女子力 寅さん

ということで今週は、目に見えない寅さんの魅力に迫ってみましょう。

竜さんの「大切なことはぜんぶ映画が教えてくれた」

ちゃんとしなくていい。自分が好きなように生きている

自分で「フーテンの寅」と言うくらいですから、定職にも就かず、日本中を気ままに旅している寅さん。

たまに露店で日銭を稼いでいるけれど、お金があれば基本的には働かず、のんびり生きています。

対して寅さんの実家のまんじゅう屋「とらや(くるまや)」では、おいちゃんやおばちゃん、妹のさくらたちが毎日一生懸命働いてます。裏の工場ではタコ社長も文句を言いながらもヒロシたちと仕事をがんばって、みんなちゃんと働いてます。

あたりまえですよね。ちゃんと働いて、家や家族を持って、きちんとした生活をする。それが人間のまっとうな生き方なのは言うまでもないことです。

けれど、なぜか「ちゃんとしてない」寅さんのほうが、自由で、楽しそうに見えたりもしませんか?

そりゃいくつになっても結婚もしないでふらふらしてるおっさんって、あんまり幸せじゃない気がするけど、よくよく考えてみると、何にも縛られず、笑ったり、泣いたり、怒ったり、感情をめいっぱい出しきって生きてる寅さんこそが、人生をまっとうしているような気がします。

僕らだって、寅さんみたいにもっと「ゆるんで」いいんじゃないでしょうか。

フーテンになる必要はないけど、今よりもうちょっとだけ自由になって、好きなことやって、ワガママ言って、人に迷惑をかけてみたら、不思議とまわりも幸せになるんですよ。

だって、まずは自分が笑顔になるから。笑顔は伝染でしか広まらないから。

今は少なくなった安心してケンカできるおじさん

コミュニケーションの主流がメールやSNSなどの顔を合わせないインターネットツールに取って替わってから、人々はケンカをしなくなったように思います。

僕が子どもの頃は、近所のおじさんとかおばさんとか、学校の先生だって、日常的にけっこうな剣幕で言い争いをしたりしてましたよ。

それは「どんだけケンカしても最後には大丈夫」という目に見えない安心感がみんなの心の底にあったからだと思うんです。

目の前にいる人だったら、感情的になって「死んじまえ!」と言ってしまったとしても、その表情や興奮状態からいろんなものを汲み取ってもらえるから、修復不可能なほどに関係がこじれたり、本当に殺意を抱くほどの憎悪にはならない。そういうの全部含めてのコミュニケーションなわけです。

でもメールで「死ね!」なんて送られてきたら、かなりキツイですよね。

寅さんはそういう古き良きリアルなコミュニケーションの時代の中でも、とりわけ自分を隠さず、ありのままを見せることで「安心してケンカのできる」懐の深いおじさん。ああ見えて包容力の塊なのかもしれません。

いつの時代でも、人は誰かに嫌われることや失敗を必要以上に恐れるものだけれど、寅さんみたいにもっと言いたいこと言ったら、もっと楽に生きられるかもしれません。

少なくとも大切な家族や友人くらい、遠慮しないでケンカしましょうよ。ケンカを恐れて、お互いの本音を隠すから、心が離れていくんじゃないですか。

ケンカしたって大丈夫って思えるのが、本当の家族ですよね。

威張らない、等身大の自分でいい

寅さんは口が悪くて、おいちゃんおばちゃんにもいつも威張っているように見えるけど、本当は自分の等身大を痛いほど理解しています。

「私より馬鹿がおりますか」と自ら言うように、自分の欠点も全部認めた上で、甘えられる人には甘えて偉そうな口をきいて、ふんぞり返ってるんですね。

僕らが人生に不自由や窮屈さを感じるのって、等身大、ありのままの自分をさらけ出すのが怖いからなんですよね。でも寅さんは「もうしょうがあんめえ」と等身大の自分を受け入れているから、何でも言えるし、好きなことができる。

「完璧じゃないあなたにこそ魅力がある!アナ雪の「ありのままで」ってどういうこと?」にも書いたように、本当はありのままを出したほうが愛されるし、まわりも幸せになるんです。

あれ?幸せって何だっけ?

『男はつらいよ』を見てると、「馬鹿だなあ寅さん」って思うことがよくあります。ていうかそればっかりです(笑)。でもそう思った直後にいつも「でもいいよなあ寅さん」ってうらやましくなる。

いい年して結婚もできなくて、いつも恋に慌てふためいてみっともないけど、よく考えたら、結ばれない寅さんはいつだって誰か素敵な女性と恋に落ちていられるという、とてつもない「幸せ」があるんだなあ。

なんて思っていると、ふと疑問が湧いてくるのです。

あれ?幸せって何だっけ?

お金をたくさん稼ぐことだっけ?人にスゴイって言われることだっけ?大きな夢を達成することだっけ?

もしかしたら、世間やみんなが言うそういうことばかりじゃなくて、好きな人たちを心に置いて、気の向くままに旅をして、四六時中恋心を募らせて、このたった一度の人生を旅することかもしれないな、なんて、思っちゃったりする。

お金を稼いでもいいし、人にスゴイって言われてもいいし、気ままに旅してたっていい。

ただひとつ、他人が決めた「幸せ」じゃなくて、自分がいつの間にか笑顔になっちゃうような、そんな自分だけの「幸せ」を大切にしていきたいですね。

そうすると、不思議とまわりも幸せになるんです。そしていつも笑顔でいると、もっともっとまわりも幸せにしたくなる。まわりが幸せなことほど幸せなことってなくないですか?

そのスタートは、ワガママで、おせっかいで、ちゃんとしてない寅さんになることかもしれません。

ちなみに最近の僕は、猛烈に仕事が忙しいときに限ってdTVで寅さんを見て時間を費やして自分を追いこむっていうドMな趣味をやってるときが、一番幸せだなあ(笑)。

「俺には、むずかしいことはよく分からないけどね、あんた幸せになってくれりゃいいと思ってるよ」___『男はつらいよ 葛飾立志編』

(文:茅ヶ崎の竜さん)


    ライタープロフィール

    茅ヶ崎の竜さん

    茅ヶ崎の竜さん

    「30代からの人生をもっと楽しむ!」ための情報を発信するフリーランスブロガー。中高時代は映画監督を目指すも、アメリカ留学直前に心変わりして挫折。「映画は失敗やしくじりもプラスに変えてくれる魔法の芸術」という言葉を胸に、あらゆるジャンルの映画を見ますが、「どんでん返し系」「家族モノ」「奮起して人生やり直す系」が特に大好物。アラフォーになってからは邦画に涙することも増えました。永遠の映画中年!

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