『WAR ウォー!!』レビュー:007が待ちきれない方も必見のインド映画!

 WAR (C) Yash Raj Films Pvt. Ltd.

ここ数年、多くのインド映画が日本でも公開されるようになっていますが、かつての歌って踊ってのイメージを軽く凌駕した多彩なジャンルで(でもやはりどこかに歌やダンスのシーンはある!?)エネルギッシュに攻めて攻めて攻めまくる面白さは、現在隆盛を極めるアジア諸国の映画の中でも群を抜いているといっても過言ではないでしょう。

7月17日からヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森にて公開される『WAR ウォー!!』も、そうした1本で、2019年度のインド国内興行収入第1位を記録した大ヒット作です。

ウォー=WARということで戦争映画を連想する方もいらっしゃるでしょうが、さにあらず。

ここで繰り広げられるのは、007も“ミッション:インポッシブル”も顔負けの、世界をまたにかけた壮大かつスリリング、そしてアクション満載のスパイものでありまして……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街485》

これがもう、まさに「ウォー!!」と絶叫したくなるほどの面白さなのでした!

組織を裏切った指揮官と
それを追う部下の確執

『WAR ウォー!!』はインドの対外諜報機関“RAW”(Research and Analysis Wing)の調査・分析部に属するスパイたちの熱い闘いを描いたアクション映画です。

国際的イスラム教過激派テロリストを追っていたRAWのNo.1スパイのカビール(リティク・ローシャン)が、急に味方の高官を射殺して行方をくらましたことからドラマは始まります。

RAWはカビールを抹殺することを決定し、優秀な若手スパイのハーリド(タイガー・シュロフ)がその任に名乗りを上げますが、上司は難色を示します。

ハーリドはカビールの教え子であり、これまで幾度も部下と指揮官として数々のミッションに参加していました。

リスペクトする師でもあるカビールはなぜ組織を裏切ったのか?

疑念を払拭しきれないまま、ハーリドはカビールの行方を追いますが、やがて両者の邂逅は前代未聞の展開を迎えつつ、頭脳と肉体、そして弾丸を駆使した史上最強の国際的スパイ合戦が繰り広げられていくのでした!

ハリウッドを凌駕する勢いの
圧倒的インド映画パワー!

 WAR (C) Yash Raj Films Pvt. Ltd.

とにもかくにも全編151分という、インド映画にしては比較的短い(!?)長さの中、見る側の脳内アドレナリンが過剰分泌されっぱなしの快作です。

カビールの裏切りから始まるドラマは、その後彼とハーリドの出会いに遡って、じっくりと両者の関係性を明らかにした上で現在へと戻り、以後はもはや“BATTLE”よりも“WAR”と呼ぶほうがふさわしい凄腕スパイ同士の確執と連帯、陰謀、破壊といったドラマティックなシークエンスが世界各国ロケを背景にした空、陸、海、さらには氷上のアクションによって繰り広げられていき、ついには怒涛のエンタテインメント超大作として屹立していくのです!

イケメン肉体派の主演ふたりも大いに魅力的で、たとえばジャッキー・チェンがもっともアクティヴに動いていた1980年代作品のテンションを彷彿させるほどの過酷なアクション・シーンの連鎖に圧倒されつつ魅了されっぱなし!

それでいて、時折ブレイクタイムのように登場するゴージャスなダンス・シーンも大いに微笑ましく(こういった見る側の気を緩めさせるのどかさも、インド映画の良いところ)、徹頭徹尾見る側を楽しませようというインド映画ならではの姿勢に脱帽させられることしきりなのでした。

本作のシッダールト・アーナンド監督は、トム・クルーズ主演の『ナイト&デイ』をリメイクした『バン!バン!』(14)のようなアクションものからラブストーリー、ファミリードラマまで徹底したエンタメ志向がうかがえる俊英です。

またハリウッド・アクション映画にかなり精通しているようで、本作も『ミッション:インポッシブル』&『ワイルド・スピード』シリーズや『フェイス・オフ』『キングスマン』などのオマージュも多数盛り込まれており、映画マニアならば鑑賞しながら「あのシーンの元ネタは~」といった楽しみ方もオススメできます。

スパイ映画としてのストーリーもネタバレ絶対厳禁の面白さで、007新作が公開される秋まで待ちきれないとお嘆きの方も、まずはこの夏、ハリウッドを凌駕する勢いのインド映画超大作『WAR ウォー!!』で大いにストレス発散&スカッとさわやかに!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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