『劇場版 仮面ライダージオウ』が問題作にして最高傑作である「3つ」の理由!

※ここからは映画本編の若干のネタバレを含みます。
 映画鑑賞前の方は、鑑賞後に読むことをおすすめします。

理由3:劇場版最高傑作!だが同時に最大の問題作なのが凄い!

結論から先に言うと、間違いなく全平成ライダー劇場版映画の最高傑作でありながら、同時に最大の問題作に仕上がっていた本作。

確かに映画の冒頭から序盤のコメディ展開こそ、「あ、またいつもの時代劇設定か…」と思わせるが、実はそれすらも後半の展開への重要な伏線となっているのに加えて、平成という時代、そして平成ライダーという存在が何だったのか? その意味と本質を観客に問いかける攻めた内容は、平成ライダーシリーズの総括と令和ライダーへのスタートを飾る、正に平成ライダーファン必見の作品に他ならない。

そう、最近の『平成ジェネレーションズ』2作の傑作ぶりと比べて、どうしても夏の劇場版の出来に不満や”これじゃない感”を強く感じていた方にこそ是非観て頂きたいのが、今回の劇場版なのだ!

劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©2019 テレビ朝日・東映 AG・東映

今回特に秀逸だったのが、本作に登場する悪役、時の管理者”クォーツァー”の設定だろう。

一見テレビシリーズの設定を無視して登場するように見えるが、映画が進むにつれて、そこに隠された本当の姿や製作スタッフが込めた真のメッセージが観客に明かされる展開は実に見事!

しかもこれは、『平成ジェネレーションズFOREVER』でも描かれていたメタ構造を更に深く掘り下げたものであり、平成ライダーに対して浴びせられてきた数々の否定的意見や不満を象徴する存在として、今回の悪役が登場するという展開が素晴らし過ぎるのだ。

この部分に気が付くと、何故本編中で平成生まれの人々が犠牲になるのか? 何故”クォーツァー”たちが平成という時代をもう一度やり直そうとするのか? など、本作が描こうとした真のテーマが、より明確になってくるはず。

劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©2019 テレビ朝日・東映 AG・東映

実は、今回の悪役である仮面ライダーバールクスの持つ剣の形が「ん、”あのライダー”の武器に似ているな」と思いながら観ていたのだが、その後の展開で本当にその通りの設定だと明かされたことには、正直驚かされた。

思い返せば、昭和最後のライダーにして実は平成最初となる”あのライダー”の設定も当時は賛否両論を呼んだのだが、今から考えると後の平成ライダーの定番となった”フォームチェンジ”や、”武器の使用”へのきっかけとなっていたのも事実。

そのため、本作での悪役が平成ライダーたちの存在を、「デザインや内容に統一性が無くて見にくい」と切り捨てる様に言う描写が、更に深い意味を持つ点も実に見事なのだ。

加えて素晴らしいのが、全平成ライダーの存在そのものを否定的に切り捨てる悪役に対して、そのライダーにすら選ばれなかった”キワもの”的存在に光を当てて、彼らがジオウたちに未来への道を示す展開だ!

既に情報として、”バラエティ番組出身のライダー”の出演は報じられているが、意外にもこのシーンで観客が笑うどころか「おお!」という驚きの声が劇場内に上がっていたのが印象的だった本作。

確かに、当時は仮面ライダーのパロディものとしての認識しか無かったが、我々を毎回楽しませ笑わせてくれたこの”ライダーに選ばれなかった存在”も、実は仮面ライダーへの愛とリスペクトの産物だったのだ! そう観客に再認識させてくれる展開は、正に感動の一言!

もちろん彼以外にも、ファンから不評や不満の声が上がっていた”ライダーに選ばれなかった部類のヒーロー”たちが次々に登場するのだが、まさか登場するとは誰も予想しなかった”あのライダー”や、文字通り平成最後に誕生したライダーの姿もあるなど、正に平成ライダーの総決算的内容となっているのは、ある意味奇跡と言って良いだろう。

詳しくは書けないが、「これこそ正に、日本版スパイダーバース!」と観客の誰もが思う描写も含め、ここから年末の劇場版に、どうやって繋がっていくのか? 今から楽しみで仕方が無い。

劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©2019 テレビ朝日・東映 AG・東映

平成という時代が終わりを告げた今、改めて平成ライダーたちの意味と存在意義、そして昭和世代が何を言おうとも、「我々は平成ライダーに夢をもらった! 確かに平成ライダーはそれぞれ世界観もデザインもバラバラだが、統一が取れていないからこそ素晴らしいのだ!」という製作スタッフの心の声を、大きなスクリーンと大勢の観客で共有し合える喜びに溢れた、この『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』。

本当に『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』を超える劇場版最高傑作なので、まだ観ていない方は今すぐ劇場に駆けつけて頂ければと思う。

最後に

シリーズ終盤を迎えて最高の盛り上がりを見せている「仮面ライダージオウ」の物語が、果たしてこの劇場版でどう展開し完結するのか?

仮面ライダーディケイドやタイムジャッカーといったテレビ版の要素を排した、劇場版独自の展開となるその見事な結末は是非劇場でご確認頂くとして、実は鑑賞に当たって本作には、いくつかの不安材料があった。

劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©2019 テレビ朝日・東映 AG・東映

まず、近年の平成ライダー作品で数々の傑作を世に送り出してきた上堀内佳寿也監督が、今回は併映作品の『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』の監督に回ったこと。

そしてもう一つは、過去のスーパーヒーロータイム作品の劇場版で繰り返されてきた時代劇設定と、お笑い芸人やミュージシャンを悪役に起用するという定番のキャスティングが、今回も行われていたことだった。

過去に何度となくガッカリさせられてきたこの設定とキャスティングだけに、冗談抜きで「どうか期待通りの作品でありますように!」と、半ば祈る様な気持ちで鑑賞に臨んだ本作。

結果的に『運命のガイアメモリ』以来、久々に大満足の劇場版を観た! そんな想いで劇場を後にすることができたのだが、何より「仮面ライダージオウ」の物語に見事な結末が付く上に、前述した平成ライダーに対する総括と令和の時代に向けてのバトンタッチが行われる瞬間に立ち会えたことは、本当に幸運だったと言うしかない。

特に、過去に散々言われてきた平成ライダーに対する厳しい意見や批判に対して、真っ向から反論するその姿勢と主張には、本当に平成ライダーを応援してきて良かった! そう思われた観客も多かったのではないだろうか。

劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©2019 テレビ朝日・東映 AG・東映

本編中では明確には描かれていないのだが、今回の悪役が昭和ライダー至上主義の象徴であることは明らかであり、彼らの思うとおりの平成時代をもう一度作り直すという目的に対して、ソウゴに勇気を与え自身の使命と目的を思い起こさせるのが、あのバラエティ番組出身の某ライダーという展開が実に泣ける本作!

ただ、今回悪役として登場する3人のライダーの設定が、残念ながら本編中ではっきりと説明されていないので、余裕がある方は是非劇場パンフを購入して鑑賞後に確認された方が、本作をより深く楽しむことができるかもしれない。

我々観客の心を熱くした『平成ジェネレーションズ』シリーズを、世代を超えた全ライダーファンに向けて発信された作品とすれば、本作こそは平成ライダー製作陣の心の声と、平成ライダーたちに寄せられた批判・不評への問題定義・反論を含んだ、『平成ライダー劇場版』最大の問題作にして最高傑作に他ならない。

そう、正に本作の裏テーマは、平成仮面ライダーの長い歴史の中で不幸にしてその本道から外れ、不当な評価を得ていた存在による反逆のドラマ! と言えるだろう。

ただ一つだけ本作鑑賞後に心配になったのは、劇場版でここまで見事な結末を付けてしまった今、果たしてテレビシリーズの最終回はこれを超えられるのだろうか? という点だった。

だが、今回の劇場版の内容こそは製作スタッフの自信の表れであり、きっとこの劇場版を超えた見事な結末がテレビシリーズには用意されているはず! そう信じて最終回の放送を待つことも、ファンにとってはまた大きな楽しみと言えるのだ。

同傾向の作品だった「仮面ライダーディケイド」の二転三転した結末や、過去に公開された夏の劇場版の出来に裏切られ続けたファンにこそ、胸を張ってオススメできる内容となっている本作。

文字通り平成ライダーに対するリスペクトが満載の作品となっているので、劇場での鑑賞をスルーしようと考えている方は、何も心配せず是非劇場に足を運んで頂ければと思う。

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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