映画コラム

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2023年04月07日

今夏公開の大作『リボルバー・リリー』に上がる期待値!“アクション女優・綾瀬はるか”の魅力を改めて見つめ直す

今夏公開の大作『リボルバー・リリー』に上がる期待値!“アクション女優・綾瀬はるか”の魅力を改めて見つめ直す


綾瀬はるかの代表作を挙げよ、と老若男女100人に聞いたとしよう。おそらく、選者の趣味嗜好や世代によって作品がバラけるだろうことは想像に難くない。たとえば、ブレイクスルーを果たした当時の彼女を知っている世代はドラマ版の『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系/04年)や『白夜行』(TBS系/06年)が印象深いだろうし、コメディエンヌとしての綾瀬が好きな人は『ホタルノヒカリ』シリーズ(日本テレビ系&劇場版/07~12年)や『ハッピーフライト』(08年)、『おっぱいバレー』(09年)などをセレクトすることだろう。2010年代以降も、是枝裕和監督の『海街diary』(15年)や『義母と娘のブルース』シリーズ(TBS系/18〜22年)、『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系/21年)などなど……選択肢は多岐に渡る。裏を返せば、それくらい振り幅が広いオールラウンダーな役者だとも言えよう(まあ、今さら言うのも野暮かもしれないが──)。

……と、代表作が多々ある中で、実はアクションも相当にこなせるポテンシャルの高さを改めて見つめ直し、本稿では躍動感あふれる綾瀬はるかを堪能できる作品をいくつかクローズアップ。今夏に公開を控える大作『リボルバー・リリー』へのブリッジとすべく、アクション的な見せ場に触れていく。

本格的な殺陣は初ながらも見事に演じきった『ICHI』

(C)2008「ICHI」製作委員会

言わずと知れた勝新太郎の代名詞的キャラクターであり、ビートたけしの大胆なリメイクも話題を呼んだ『座頭市』シリーズを、瞽女(※ごぜ=盲目の女性旅芸人のこと。市は三味線弾きという設定)にして女座頭・市を主人公に据えて新たに世界観を構築した、悲しくも見る者の胸を躍らせる活劇。孤高のダークヒロインに扮した綾瀬が、本格的な殺陣に挑んだエポックメイキング的な1作だ。

公開当時、同作のオフィシャルブックで曽利文彦監督にインタビューをしたのだが、何と顔合わせの日に殺陣師・久世浩氏立ち会いのもと、いきなり綾瀬に稽古をつけたと聞いて驚いたことをよく覚えている。しかも、未経験ながら持ち前の運動神経を遺憾なく発揮してみせ、当初はCGで描写することも視野に入れていた難易度の高い「納刀」の動作もあっさりとこなしてみせたという。そのエピソードには「さすが!」と唸らされたものだが、『ICHI』の殺陣は我々が想像していた以上に難しいがゆえのこと。視力を失っている目ではなく、聴力の発達した耳からアクションを起こしていくという動きに主眼を置いて観ると、綾瀬がいかに類いまれな女優かが分かる。

なお、本人は撮影を振り返り、「練習量的にも、手元を見ない弾き方をするというところでも、殺陣より三味線を弾くシーンの方が大変だった」(同オフィシャルブックのインタビューより抜粋)と、何とも“らしい”コメントを残している。何にしても、クライマックスで斬って斬って斬りまくる大立ち回りと、その後に待ち受ける哀しき運命を受け入れる市のたたずまいに、綾瀬の芝居の真髄を見ることになろう。

“幕末のジャンヌ・ダルク”を体現した『八重の桜』

明治という新時代への変わり目に起こった戊辰戦争。その中でも激戦の1つに数えられる会津戦争に参戦した女傑にして、夫の新島襄とともに同志社大学を設立した新島(山本)八重の半生を描いた大河ドラマで、綾瀬が堂々と主演を務めてから、ちょうど10年が経つ。

この作品の前半から中盤にかけて描かれるのが幕末〜明治維新パートで、男装して鶴ヶ城攻防戦に身を投じる八重の雄々しさと猛々しさは、この戦いを描く数話(第26〜29回)でピークを迎える。会津藩の砲術師範の家に生まれたことから新型銃の開発にも携わるなど、当時の武家社会では異質の存在だった山本八重だが、その出自もあって射撃の腕前は藩内でも群を抜いていた。

『ICHI』で見せた居合斬りから一転、幕末期の最新鋭だったスペンサー銃を構える綾瀬はひたすらに凛々しく、かつ敗れていく者の宿命を背負いし肩をもの悲しく見せる。“幕末のジャンヌ・ダルク”と謳われたフレーズに偽りはなく、薬莢を次々と飛ばしながら引き金を引いて会津兵たちを鼓舞する姿には、静かなる迫力を感じずにはいられない。

なお、のちに『奥様は、取り扱い注意』で夫婦役を演じる西島秀俊とは兄妹役、『はい、泳げません』(22年)と『リボルバー・リリー』で三度あいまみえる長谷川博己と夫婦役を演じるという、さまざまな縁を紡ぐ1作にもなった。

キャラクターの心情をアクションに落とし込んだ、
放送90年 大河ファンタジー『精霊の守り人』シリーズ

児童ファンタジー文学の大家・上橋菜穂子による『守り人』サーガを3シーズンに渡って実写化した一大プロジェクト。短槍の使い手・女用心棒バルサと皇子チャグムが住まう異世界におけるアドベンチャーを、壮大なスケールで描いている。

綾瀬は言わずもがな、主人公のバルサとして随所で見応えのあるアクションを披露。仕込み杖からライフル銃を経て、槍をダイナミックに振りまわす殺陣に挑んだ。シチュエーションによっては短剣での応戦や、殴打と蹴りによる肉弾戦も。野山を駆けて谷間を飛び、土埃にまみれながら奮戦するバルサが自らの身に宿ったかのごとく、ふだんよりも低いトーンで不敵に話す声色も印象深い。

全シーズンを通じて26話あるだけにアクション的な見せ場は数あれど、シーズン3のエピソード5で回想とともに繰り広げられる、育ての親にして槍の師・ジグロ(吉川晃司)との決闘を挙げぬわけにはいかないだろう(※正確には、ヒョウル=山の王を守る死霊となったジグロ)。

親友の娘である自分を守るため、国を捨て反逆者の汚名を着せられた養父は、死してもなおバルサの心の中に霧を立ちこめさせ続けてきた。いわば“超えねばねらない壁”として現れたジグロと槍のみならず、心をぶつけ合うことで過去を乗り越えていくさまは、シリーズ屈指の名シーンにしてハイライトと言って差し支えない(実に18分近い尺を割いている)。見せるためのアクションではなく、キャラクター同士の心情が投影された芝居との融合によって、真の見せ場となっている。

非日常との境界線としてアクションを置いた
『奥様は、取り扱い注意』

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

生後間もなく親に捨てられ、特殊工作員として育った主人公の伊佐山菜美(綾瀬)。高い格闘能力を備えつつ複数の言語を操るスパイとして暗躍するも、温かい家庭に憧れて新婚の主婦に。ところが、夫の伊佐山勇輝(西島秀俊)は菜美を監視してきた公安警察の人間だった──。

ワケありどころか、国家機密レベルの人に言えない過去を持つからこそ、ただただ「穏やかな日常を過ごしたい」と切に願う、というギャップを生かした設定は絶妙というほかない。しかも、一番近くで安らぎを与える存在であるはずの夫が、自分のことを常に見張っている関係に置いたのもまた見事。言うならば、微笑み合いながら胸元でお互いに銃を突きつけ合っているような2人が、日常と地続きの非日常を行き来するさまに、心をグイとつかまれる1作であった。

アクションも、アジアの武術として名高い「カリ」や「シラット」を使って(綾瀬はアクション練習を積んで両武術を心得ている)、菜美が小気味よく敵対する相手を制していくシーンが爽快に描かれた。“宣戦布告”の合図である手招きのポーズ(右手の指をクイックイッと動かして、挑発する)をする時の綾瀬の不敵な笑みは、さしづめ非日常との境界線を超える際のスイッチのよう。

なお、劇場版ではガンアクションもふんだんに取り入れられ、よりスケールの大きな立ち回りを堪能できる。

そして、綾瀬はるかは『リボルバー・リリー』で
新たなる境地へと向かう


1月に公開された東映創立70周年記念作品『THE LEGEND & BUTTERFLY』(23年)でも、木村拓哉演じる信長と綾瀬扮する濃姫が迷い込んだ集落で襲撃してきた住民たちと戦うシーンがあったが、8月11日に公開予定の『リボルバー・リリー』は、さらなるアクションが期待できそうだ。

原作は、元官僚の証券マンが中国返還前夜の香港で世界の諜報機関を相手に国家機密の奪取を試みる──という規格外の発想で綴られた『アンダードッグス』が直木賞候補になった長浦京による、大正期を舞台にしたエンターテインメント・ノベル。「自分が見てみたい日本映画をつくろうと思って書いたのが、『リボルバー・リリー』の原作だった」と長浦が語る渾身の一篇を、初のアクション巨編となる行定勲監督が“活劇化”する。映像との親和性に長けた設定とストーリーを、名手・行定監督がどう仕上げるのか──完成が今から待ち遠しい。



当の綾瀬は発表会見で、「アクションシーンも多かったので体作りが⼤変だなぁと。あと、この役のために髪も切ったので、新たな役に挑戦できることにもワクワクしました」と、素の彼女らしさ全開でフワッと明るく語っていたが、特報で見る限り“映画史上最強のダークヒロイン”という謳い文句が、まさしく言い得て妙という印象だ。リボルバー=回転式拳銃の使い手としての動きもさることながら、これまでに経験を重ねてきたアクション作品の要素がすべて詰まったかのような集大成感には、期待値を上げずにはいられない。

また、大正という浪漫と混沌(カオス)の時代背景と設定が醸し出すノワール感ただよう世界観のもと、配されたキャスト陣の顔ぶれにもテンションが高まるばかり。

前述のとおり、綾瀬と3度目の共演となる長谷川博己とは、芝居面での相性の良さを考えれば不安要素は皆無。橋爪功に石橋蓮司、阿部サダヲ……野村萬斎に豊川悦司といった百戦錬磨の名優たちと、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也という若き手練れたちの中で、大抜擢と言っても過言ではない羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)がどのような立ち回りを見せるのか? また、ゴールデンウィーク公開の劇場版『TOKYO MER』での研修医役の前評判が上々のジェシー(SixTONES)がどんな爪痕を残しているのかも、見どころのひとつと言える。

大正期の帝都の街並みと空気を完全に再現したセットのスケール感ともども、新時代の“東映アクション”とも言える『リボルバー・リリー』が映し出す新しい景色へと思いを馳せつつ、続報を待つことにしよう。

(文:平田真人)

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