続・朝ドライフ

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2024年04月23日

「虎に翼」石田ゆり子の犬の扮装に目が釘透け<第17回>

「虎に翼」石田ゆり子の犬の扮装に目が釘透け<第17回>


「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら

2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第17回を紐解いていく。

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早くも花岡の本性が

穂高(小林薫)の代わりに、梅子(平岩紙)の夫で弁護士の大庭徹男(飯田基祐)が民事訴訟の講義を行うことになりました。

穂高は腰痛を理由に講義を大庭に任せましたが、一歩教室を出るとスタスタ歩きだして、なんだか狸親父です。

大庭は一見、スマートなエリート。でも梅子を下げることで話を盛り上げるやり方をする人物でした。

例えば、民事訴訟の判例――犬に顔を傷つけられた女性の慰謝料が1500円のところ、梅子だったら300円だと言ったり、彼女を「こんなおばさん」と言ったり。

身内下げは謙虚という考え方もありますし、「愚妻」という言葉があります。そもそも女性を下に見ているから自然に態度や言葉に出てしまうということでしょう。
大庭が使った「家内」という言葉も、家の中にいる人という意味で、妻の可能性を狭めています。このへんのことは、かつて「マッサン」(2014年度後期)で異国人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)が問題視していました。

第一、妻の通っている学校に、頼まれたとしても、わざわざ教えに来て(しゃしゃり出て、という言葉を使いたい)、自分の能力をひけらかし、梅子がさも役に立たないような言い方をするのもおかしな話です。

梅子は最初「スンッ」と澄ましていなしていましたが、やがて「ムッ」となり、夫が帰ったあとは別人のような顔で、「うちの人、若い子と話し慣れてないから、私を使うのよ、話の潤滑油に」とうふふふふと笑いとばします。でも甘味処にいこうと誘ったり、そこで全員(男子の分も)奢ると言ったり、やけに豪気なのは、夫に抑制されてストレスが溜まっているのでしょう。

大学生の徹太(見津賢)はともかく、13歳、8歳の息子もいて、彼らはまだ手がかかるのではないかと思うのですが、おにぎり大量に握りながら学校に通っている梅子ってすごいと大庭は思わないのかなあ。家事は女中さん任せなのでしょうか。

妻を下げる大庭ですが、寅子(伊藤沙莉)たちのことはやけに持ち上げます。
寅子が大庭の「結婚前の女性にとって容姿というものがなにより大事」という言葉に「はて?」と疑問をもつと、「君たちのように利発でかつ容姿端麗なすばらしいご婦人たち」と寅子たち法科に入った女生徒たちを褒めることでその場をごまかしてしまいます。
良く言われてしまうと気が削がれるというか……。褒め殺しです。

花岡(岩田剛典)も「彼女たちは特別です」と賛同。
妙に持ち上げる態度が何かへん。この奇妙さは、のちにわかります。

男女でハイキングに行くことになって待ち合わせたところ、先についていた花岡たちの会話に本音が。じつは花岡は女性を軽んじているようで、「女ってのは優しくしているとつけあがるんだ」とのたまい、寅子たちのことも「five witches」と小馬鹿にしていました。

ただひとり、愚直なまでに、轟(戸塚純貴)は「撤回しろ」と意見を言います。彼は講義で大庭が梅子を笑いものにしたときも、ほかの男子生徒のように笑わず、はて?という顔をしていました。男子の価値観に染まっていない轟、すばらしい。

やっぱり人間とは奥深く、口当たりのいいことを言う人がいい人とは限りません。

でも女性を差別する男子たちにも格差に悩みを持っていました。甘味処に、梅子の息子で帝大生の徹太が現れると、たちまち「スンッ」となってしまいます。甘味処の主人がわざわざ「明律の皆さん」と言うのも意地が悪い。

あの優三(仲野太賀)まで寅子の話を聞くと、帝大生を前にしたら「嫉妬や羨望で普通ではいられないよ」と感情をあらわにします。

男たちは、てっぺんに立てない自分を鼓舞するために、女性下げをしている。
結局、誰もが自分より下を作って折り合いをつけようとしているのだとおもいます。でも寅子たちはそうではない。

最後になりましたが、判例を寅子の脳内で再生した映像で、石田ゆり子さんが犬の役を演じていて、着ぐるみを着てにっこり笑ってしゃがみ、体を左右にかすかに揺らしている姿が衝撃的でした。犬好きで有名な石田さんではありますが、犬を演じるとは、ずいぶん思いきられたなあと。

ただ、こういうお茶目なところをレビューの主題にもってくることができないほど(見出しにはしてしまいましたが)「虎に翼」は中身がぎっしり詰まっていて、毎朝、考えさせられてしまいます。

(文:木俣冬)

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