(C)黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
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映画コラム

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2023年12月20日

【全力解説】『窓ぎわのトットちゃん』今すぐ映画館に駆け込んで観るべき理由

【全力解説】『窓ぎわのトットちゃん』今すぐ映画館に駆け込んで観るべき理由

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一生のお願いです。今すぐアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』の劇場情報を確認し、観に行ける時間を予約して、映画館に駆けつけてください。


なぜなら、この『トットちゃん』は2023年というこの年に限らず、すべてのアニメ映画、いやすべての映画の中でも頂点に位置する、大・大・大傑作だからだ。

現在映画.comで4.0点やFilmarksで4.1点を記録するなどレビューサイトでの評価ももちろん高く、公開から1週間をかけてX(Twitter)で絶賛の声がたくさん投稿され続け、幾度となくトレンド入りしている。これからずっと、名作として語られることも間違いない。

原作は1981年に出版された黒柳徹子による日本の自伝的物語で、世界35ヶ国で翻訳され、全世界累計発行部数が2500万部を突破している大ベストセラー。劇場にはご年配の方が多く訪れている印象だったが、その原作をまったく知らない世代に届くべきだ。

何も予備知識がなくても幅広い世代が楽しめる上に、後述する戦争の問題を伝える意義も大きいのだから。

ここでは、一生のお願いなので『トットちゃん』を観てほしい「4つ」の理由をまずはネタバレなしで(2ページ目まで)、目がもげるかと思うほど泣いた「6つ」の理由をネタバレあり(3ページ目以降)で、全力で解説するので覚悟してほしい。

何も知らずに観たい方は、もういいから、<劇場情報>を今すぐ確認して、できるだけ早く予約して観てください。一生のお願いなのですから。

1:予告編ではわからない「戦争の侵食」の恐ろしさ

まず、正直に言って本作は予告編の訴求力が低かったと思う。こちらの印象だけで「観なくてもいいかな」と思ってしまった方も多いのではないか。



特に「みんな化粧をしているような」キャラクターデザインに違和感を覚える人は多かった。だが、そのパッと見の印象だけで敬遠するのは、あまりにもったいない。実際に映画本編を観ればすぐに慣れるだけなく、後述する子どもらしい動きの細やかさも相まって、愛らしいと心から思えたのだから。

実は、これは昭和の「児童画」のしっかり朱が塗られた唇や頬紅の表現を参考にしているデザインで、船越圭の彫刻の影響もあり、立体的にキャラクターをとらえて動かす意図もあったという。キャラクターデザインを担当した金子志津枝は「誰もが愛せるトットちゃん」みたいなところを目指したそうで、それは映画本編を見れば見事に達成できていた。

参考記事:「窓ぎわのトットちゃん」八鍬新之介監督インタビュー 「本当に人の心に届くモノにするためには、妥協はできない」 | スタッフ | レポート | WebNewtype

そして、本作の本質は予告編では見えていなかったことにこそあると断言する。何より、今まで観たどの戦争映画よりも戦争のグロテスクさを感じた、戦争が「侵食」してくる描写が素晴らしいのだ。

もちろん、それは血が飛び散るとか、内臓が見えるとか、そういう直接的な残酷描写ではない。むしろ、幼いお子さんでも観られる、楽しい場面が多い作品だ。

しかし、いやだからこそ、戦争がいかに世界の姿を変えてしまうのか、それがわかる描写の数々がものすごく怖かった。その戦争の侵食を予告編では見せていないからこそ本編のショッキングさが際立つし、予告で見せるとむしろ観る人を遠ざけてしまう可能性もあるので、現状の予告編の方向性も間違ってはいなかったと思う。とにかく、本編であれほど身震いし、涙するとは思いもしなかった。それこそに本作の凄みがある。

2:アニメで描く意義がある表現の数々


この『トットちゃん』は「アニメをなぜ観るのか」「アニメで表現する理由は何か」という究極的な問いにも回答しているとさえ思える。実話を元にしているので、もちろん実写でも表現可能な、現実的なことが起こっているはずだ。そうであるはずなのに、いやだからこそ、アニメで描く意義があったと心から思えたのだ。

まず、子どもの動きに「実際もこうだよなあ」と思えることが素晴らしい。主人公のトットちゃんは、感情を身体全体で表現しているようなところがあり、とってもかわいらしいのだが、一方で序盤からあわや車に轢かれかけてしまうシーンもあり、他の場面でも落ち着きがなくて危なっかしい。

その一挙一動を細やかに描いていてこそ、例えば「木に登ろうとする」シーンだけでもハラハラするし、一方で子どものリアクションそれぞれを観ているだけで笑顔になるし、時にはそのコロコロと変わる表情(泣き顔を容赦なく「ぐしゃぐしゃ」にしているのもすごい!)のおかげで猛烈なまでの切なさや感動が観客へ訴えかけてくる。

当時の風習を余すことなくリサーチしたと思われる背景美術や、主な舞台である「トモエ学園」の作り込みも半端ではない。教室にいるたくさんの子どもたちが、それぞれ複雑な動きをしていていたりもする。もちろん、それらを実現するための労力は尋常ではないものだろうが、ここまでするからこそ、元々は絵にすぎないはずの子どもたちが、この時代に「生きている」と感じられる。それこそが作品に重要だったのだ。

さらに、劇中では3回、絵柄および表現をまったく変えたアニメが展開する。序盤でトットちゃんの空想(想像)を絵本タッチで見せる様も圧巻だが、その後の豊かで「そうする」必然性もある表現も楽しみにしてほしい。



なお、原作者である黒柳徹子は「本を読んでくれた皆さんの頭の中にある映像の方が良いものなんじゃないか」という理由で、これまで映像化を断ってきたものの、2016年に企画された今回のアニメ映画は、「世界情勢が変わってきた」ことに加えて、「今の若い人に観てもらえるなら」と許可をしたという。

3:説明がないのに伝わる、エピソードがリンクする物語


ごく一部だけ使われるナレーションを除けば、劇中に説明はほとんどない。そうであるのに、舞台であるトモエ学園がどんなところなのか、はたまた戦争が侵食してくる様は、子どもの視点からまったく説明的でなく語られている。「画で語る」映画的またはアニメならではの演出もふんだんで、「さりげないが確実に起こっている変化」に注目してみるといいだろう。

物語の完成度も凄まじい。原作からの取捨選択も見事だが、それぞれが独立する小さなエピソードの連なり、なんて事のない日常の出来事の連続のようでもありながら、それらの全てがトットちゃんだけでなく他の生徒や先生たちの成長にもリンクしている、無駄のない構成になっているのだ。

さらに、言葉遣いからして「子どもってこうだよなあ」と思える会話も素晴らしい。そのほとんどはもちろん原作にもあるものだが、前述した子どもらしい動きと入念に作り込まれたアニメがあってこそ、それらがより「本当にこうなんだ」と真に迫ってくるのだ。

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