インタビュー

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2023年07月02日

入江甚儀×市川知宏『これだけはわかってる』は観に来てくれた人に損をさせない舞台と言い切れる

入江甚儀×市川知宏『これだけはわかってる』は観に来てくれた人に損をさせない舞台と言い切れる

アンドリュー・ボヴェルの傑作戯曲『これだけはわかっている ~Things I know to be true~』が、7月9日(日)まで東京芸術劇場シアターウエストで上演される。

どこにでもいるようでありながら、それぞれが内に秘めた思いや葛藤、苦しみを抱えながらも成長していく家族を南果歩、栗原英雄、山下リオ、市川知宏、入江甚儀、山口まゆが演じる。演出は荒井遼。

今回は、本番前の大変な時期に長男・マークを演じる市川知宏と、次男・ベンを演じる入江甚儀にインタビュー。本番直前の意気込みをじっくり伺った。

違う役者が演じると聞いたら嫉妬するくらいの役に出会えた(入江)

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――まずは今作へ出演が決まった際の気持ちをお聞かせください。

市川知宏さん(以下、市川):もともと面白い作品だとは聞いていましたが、実際に台本を手にして読んでみると、本当に興味深く素晴らしい作品でした。家族という存在を季節の移り変わりとともに丁寧に描いています。そして、ストーリーが進むにつれて、その家族の関係性が変わっていく過程にも無駄がありません。僕は長男・マーク役を演じるのですが、この脚本以上のものを体現しないといけないというプレッシャーといま戦っています。

入江甚儀さん(以下、入江):僕も脚本を読んで作品の力強さを感じました。そして、僕が演じる次男・ベン役を違う役者さんが演じると聞いたら嫉妬するくらいの作品に出会えたなと感じています。ベン役は自分以外、右に出るものはいないと思ってもらえるよう、100%の状態に仕上げてお客様をお迎えしたいと思います。また、今回の作品は自分の家族にも観てもらいたいと思える作品です。

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――お2人はデビューも近く、これまで何度も共演されているそうですね。

市川:そうですね。甚儀とはデビューも近く、付き合いも本当に長いですね。共演も今回の作品で5作目かな。

入江:兄弟役もやったことがあります。プライベートでも川やカラオケにも行ったよね。

市川:だから、家族とまでは言わないですが、似たような関係ですね。

――入江さんも市川さんも今年芸能生活15周年とのことで本当に長いお付き合いですよね。普段はお互いのことをどのように呼び合っているのですか?

市川:僕は「甚儀」と名前で呼んでいます。

入江:僕は出会ったころは「市川くん」と呼んでいましたが、最近は「イッチー」と呼んでいます。
 

稽古とディスカッションを重ね、ひとつの家族の形を作っていく

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――市川さんに伺います。今回の長男・マーク役ですが、どんなところが難しかったでしょうか? また、どんな部分に共感できますか?

市川:僕が演じるマークは親からの期待を背負いつつも人には言えない秘密を抱え、葛藤している人物です。一家の長男として、また一人の人間として家族とどう向き合っていくのかというところが課題にある人物だったので、そこの部分が難しかったですね。共感できる点としては、マークは自分の家族を俯瞰して見ている部分があるんですが、僕自身も家族に対して同じような感覚なので、その部分が共感できます。

――本番まであと2週間(取材日は6月16日)ですが、南果歩さんはじめ、共演者のみなさんとの雰囲気はいかがですか?

市川:雰囲気はすごくいいですね。今回の作品の出演者はプライス家の人々6名だけなので南果歩さんはじめ、栗原英雄さんたちとお芝居の稽古時間と同じくらいディスカッションも重ね、丁寧に人物像を話し合いながら稽古をしている日々です。家族として気を遣いすぎず、でも適度な距離感を保ちながら、みんなで同じ方向を向いて稽古に励んでいます。最近は、稽古場で南さんがストレッチと筋トレをされているので、一緒にウォーミングアップすることもあります。
 

作品に出会ったおかげで、家族は当たり前の存在ではないことを知った

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――次に入江さんに伺います。舞台のホームページに「この作品に参加出来て嬉しいと思いました。なぜなら僕自身の物語でもあり、救いがあったからです」とありましたが、どんなところに救われたのでしょうか?

入江:これまでは家族は当たり前に存在しているものだと思っていましたが、30歳を迎え、自分が家族を持ってもおかしくない年齢になってみると、いや当たり前ではないかもしれない……と思うようになりました。そんなときに今回この作品の脚本をいただき、普段から家族には言葉やハグで感謝の気持ちを伝えていかなければならない、と教えてもらえたことが救いでしたね。

――本番に向けて稽古の状況はいかがですか?

入江:台本を1人で読んでいる段階ではわからなかったところが、他の役者さんとみんなでお芝居をしていくことで、そこに家族が生まれ、徐々に理解できるようになっていきました。今回の作品は、ひとつの問題に家族みんなで向き合っていくという形ではなく、ブロックごとでストーリーが展開し、その都度、問題を解決していくという形です。いまは皆さんと一つひとつを整理している段階ですね。だいぶ輪郭が見えてきたので、ここから一気に繋げていく作業に入るところです。とにかく一筋縄ではいかない作品です。

役所広司さんの圧倒的な存在感に魅せられています(市川)

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――お2人にお伺いします。舞台出演のために注意していることや、意識していることはありますか?

市川:普段からジムに通っているので体力作りは常に意識していますが、舞台の前はとくに食事に気を遣っています。夜はセーブしていますが、日中はとにかくしっかり食事をとることに注力しています。

入江:稽古に入る前に山崎努さんが書いた「俳優のノート」という自伝を読んだのですが、そこにも「舞台は体力勝負」というようなことが書いてありました。食と舞台は密接なんだと思い、僕も食事はすごく意識しています。

――稽古中に痩せてしまうこともあるのですね。

入江:ありますね。稽古に入ると作品のことで頭がいっぱいで食事がとれなくなってしまって痩せてしまった経験があります。だからそこからは栄養のバランスを考えた食事を意識してとるようにしています。

――目標にしている役者さんはいますか? また、今後どんな役者さんを目指していきたいですか?

入江:そうですね。これまでは目指している方がいたのですが、最近は「自分なりの役者になる」ということを目標にしています。いい作品に出会い、いい演技をしたとしても、観る人によって受け止め方は違います。ですから、僕は僕なりのやり方で役者という仕事を突き詰めていきたいです。

市川:僕は先日カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した役所広司さんを目標にしています。戦国武将から清掃員と、どの作品を拝見してもあらゆる役をこなしてしまう幅の広さとキャラクターの演じ方が絶妙だなと感じています。また、圧倒的な存在感も魅力です。僕もいつか役所さんのような役者になれたらいいなと思っています。

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――では最後に舞台にかける意気込みと、メッセージを聞かせてください。

市川:今回の作品は、これまで舞台を観たことがない人にとってもわかりやすく、感情移入しやすい作品になっています。お一人でももちろんのこと、大切な方や家族と観に来ていただけたらきっと何かしら得るものや、感じるものがあると思います。ぜひ、足を運んでいただけたら嬉しく思います。

入江:映像は観ようと思えばすぐに観られるコンテンツですが、舞台はお客様がお金を払い、足を運んでいただかないと成立しません。そして、演じる側はその価値に見合った作品を提供しなければいけないという責任があります。今回の作品はその価値を超える作品だと思っています。必ず皆さんの背中を押してくれる作品だと思うので、劇場に来ていただき共有してもらえたら嬉しいです。

(撮影=Marco Perboni/取材・文=駒子)

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