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2023年08月03日

「こっち向いてよ向井くん」第4話:赤楚衛二の誠実さが教えてくれる、大人の恋愛に必要なこと

「こっち向いてよ向井くん」第4話:赤楚衛二の誠実さが教えてくれる、大人の恋愛に必要なこと


ねむようこの同名漫画を原作とした赤楚衛二主演のドラマ「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系)が2023年7月12日よりスタート。本作はGP帯連続ドラマ初主演となる赤楚が、雰囲気も性格も良く、仕事もできるのに10年間彼女がいない30代の男性を演じるラブコメディだ。共演には、波瑠、生田絵梨花、藤原さくら、岡山天音らが名を連ねる。

本記事では、第4話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「こっち向いてよ向井くん」第4話レビュー

「ドレス、ステキでした。プリンセスみたいだった!」

向井くん(赤楚衛二)がチカ(藤間爽子)にそう言い放つ時の表情で、「赤楚衛二は、やっぱり誠実な役者だ」と思わされた。

大人の恋愛において、最も重要とされる誠実さ。だけど、大人の恋愛って何だろう?誠実であるってどういうことだろう?と改めて考えさせられた「こっち向いてよ向井くん」第4話。

「女の子ってこういうもの」と鼻から決めつけて後輩女子のナイトを気取ったり、10歳年下の女の子が全力でぶつけてくる恋心に必死で応えようとしたり、これまでの向井くんは誠実であろうとするあまりに誠実から次第に遠ざかっていったように思う。だけど、最終的にチカとの別れを呑み込んだ今回の向井くんは相手に対しても、そして自分に対しても本当の意味で誠実だった。

3年ぶりに再会したチカと、結婚を見据えた交際をスタートさせた向井くん。久しぶりに彼女ができたことにすっかり舞い上がる向井くんだったが、チカの方はそうじゃなかった。

いつから同棲を開始するか、どの式場で、どんな結婚式を挙げたいか。チカはいつも“未来”の話をする。二人は結婚を目標に歩き始めたのだから、当然といえば当然だ。だけど、向井くんが向き合おうとしていたのは二人で過ごす“現在”。手を繋いでデートして、互いをもっと好きになり、自然と結婚へと向かっていく。それが向井くんの理想であって、結婚という目標は同じでも、向井くんとチカでは熱量もスピードも全く違うことが少しずつ明らかになっていく。

そんな中、向井くんはチカに「向井さんとは年相応な大人のお付き合いができそうですね」と言われ、さらに違和感を募らせていくことに。年相応のお付き合いとは一体何なのか。モヤモヤする向井くんに気づきを与えたのは、またしても洸稀(波瑠)だった。

バツイチで再婚の意思がない同僚の環田(市原隼人)と、名前のない関係を楽しんでいる洸稀。側から見れば、環田は責任を一切負わずに女性を弄んでいる不誠実な奴と捉えかねず、向井くんもあくまで洸稀の友人として二人の関係には難色を示す。だが、冷静に考えれば環田が不誠実になるのは、洸稀が交際や結婚を望んでいる場合だけだ。彼女がそれを求めていない今、恋愛のドキドキを一緒に楽しむことが、どうして不誠実と言えるだろうか。

「大人の恋愛が何かなんて、他人が定義することじゃないけど、強いて言えば、ちゃんと自分の足で生きてきた人たちが誰かに依存したりされたりとか、そういうことじゃなくて自分の責任で相手と向き合うことじゃない?」(洸稀)

誠実であるとは、自分の責任で相手と向き合うこと。難しいけれど、それはつまり、自分にも相手にも「嘘をつかない」ということじゃないだろうか。例えば、本当は結婚したくないのに、それを隠して結婚を望む相手と交際を続けるのはあまり誠実とは言えない。逆に、本当は結婚したいのに、無理をして結婚を望まない相手と交際を続けるのも、心情としては前者よりも理解できるが、誠実ではないと言えるのではないだろうか。相手に対しても、自分に対してもだ。麻美(藤原さくら)が元気(岡山天音)にイライラするのも、彼が「自分たちがどうしたいか」ではなく、「世間が自分たちに何を望んでいるか」に目を向けるようになってしまったからだろう。

向井くんの場合、結婚したいという気持ちに嘘があるわけじゃない。だけど、彼はきっと結婚よりもまず、恋愛がしたかったのだと思う。今回向井くんが大きく成長したと思ったのは、彼がそのことに気づいて目を背けなかったことだ。自分を偽ってチカのペースに流されていくのではなく、違和感とちゃんと向き合えた。その結果、チカが結婚を焦っているのは、出産や子育てまでのタイムリミットが迫っているからだということを知る。

35歳以上で子供を産むのは高齢出産と言われ、それ以前の年齢よりもリスクが高まることは多くの人が知っているだろう。無事に生まれたとしても、二児の母である向井くんの友人が言うように子育てバスにはたくさんの“停車駅”があって、その度に体力を消耗する。だから、チカの早く結婚して、子供を産まなきゃという焦りは同性からするとよく分かるのだ。

一方で、チカには恋人と海ではしゃぐような恋愛に憧れている部分もある。頑張り続けたい仕事もある。だからこそ、妊娠や出産を未来に託す卵子凍結が選択肢に入っていたのだろう。「過去に経験できなかったことも叶わなかった夢もこれからやればいいじゃないですか」という向井くんの言葉は決して、無責任じゃない。結婚したいし、子供も産みたい。だけど……という女性なら誰もが抱える矛盾を肯定してくれる言葉だ。

チカがやりたいことを心から一緒に、と思える相手は向井くんではなかった。切ないけれど、二人の再会と別れは双方が今後を考える上で必要なステップだったように思う。印象的なのは、向井くんの以前とは異なる態度や表情だ。一見すると何も変わっていないように思うが、今はその一つひとつに真心がこもっている。微々たる変化かもしれないが、向井くんにとっては重要な変化だ。赤楚衛二はそれをちゃんと実感させてくれる。向井くんに共感した上で演じているからだろう、嘘偽りが一切ない。だから、彼は誠実な役者なのである。


(文:苫とり子)

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