©2023「ミンナのウタ」製作委員会
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2023年08月11日

Jホラーブームの立役者・清水崇監督が生み出したおすすめホラー作品“5選”

Jホラーブームの立役者・清水崇監督が生み出したおすすめホラー作品“5選”


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日本での活躍のみならず、ハリウッド進出を果たして全米週末興収No.1の称号まで手に入れた監督をご存知だろうか。──そう。日本のキング・オブ・ホラー、清水崇監督だ。

呪怨』を皮切りに数々のホラータイトルを生み出し、今年は『忌怪島/きかいじま』からわずか2カ月のインターバルで『ミンナのウタ』を公開。また「日本ホラー映画大賞」の選考委員長を務め、ホラー映画界の「新たな才能」かつ「ライバル」の発掘に尽力している。

清水監督は『女優霊』や『リング』の中田秀夫監督と同じくJホラーブーム隆盛の立役者。今回はそんな清水監督のフィルモグラフィからおすすめのホラー作品5タイトルをご紹介したい。

『呪怨』世界に名を轟かせたホラーアイコン


清水監督作品を紹介する上で、この作品を外すことなど絶対にできないだろう。『呪怨』は「清水崇監督の代表作」というだけでなく、サム・ライミプロデュース、清水監督自身が手がけたハリウッド版が制作されるなどJホラーを代表する1作として燦然と──いや真っ黒に輝く作品といえる。

2000年のビデオ版に引き続いて清水監督の劇場版『呪怨』が世に放たれたのは2003年のこと。佐伯伽椰子が夫の佐伯剛雄に殺害・遺棄されたことで「呪い」と化し、“そちら側”へと連れ去った息子・俊雄とともに旧佐伯家へ足を踏み入れた者を次々と呪い殺していく。

ハリウッド版を含めシリーズは複数に及んでおり、その勢いと人気を支えているのが伽椰子という存在そのものにある。惨殺された時点の姿で呪いと化した伽椰子の白い服は血に塗れ、体は真っ白。奇怪な声を発しながら迫ってくる様子は対峙した登場人物のみならず観客にとっても恐怖でしかない

時には「力こそパワー」を地でゆく行動に出るため、同じくJホラーの一翼を担う『リング』シリーズの怪物・貞子をぶつけられたことも。とはいえ恐怖描写に加えて、シャッフルされた時系列や伽椰子の本性など謎めいたストーリーも『呪怨』の大きな魅力だ。

▶︎『呪怨』を観る

『こどもつかい』タッキーの「怪演」に注目!

(C)2017「こどもつかい」製作委員会

滝沢秀明・有岡大貴(Hey! Say! JUMP)・門脇麦が共演したこどもつかいは、一時的に行方不明となった子どもたちとその周囲で起きる連続不審死の元凶をたどる作品。事件の鍵を握る謎の男「こどもつかい」を滝沢が演じるというキャスティングが意表を突いており、劇中で暗示されるように「ハーメルンの笛吹き」をベースにしたこどもつかいの暗躍を描く。

予告編の段階で話題となったこの世の者ならぬ7人の子どもたちの雰囲気からは『呪怨』に通じるものを感じさせるが、本作のテーマには親や大人に虐げられる子どもたちというドラマが軸にある。そのため『呪怨』のような「恐怖一点集中」ではなく、各キャラクターの行動や心情を掘り下げていくためストーリーラインがより明確になっている点が大きな違いだろう。

(C)2017「こどもつかい」製作委員会

それにしても改めて本作における特異点のキャラクター・こどもつかいを滝沢が演じていることが興味深い。決して伽椰子のような怪物というわけではなく、ダークヒーローという立ち位置でもない。どこか滑稽であり、どこか寂しさを抱えているようであり。

NHK大河など数々のドラマで主演を務めながら、じつは数少ない映画作品(本作も『川の流れのように』以来17年ぶりの映画出演・映画初主演・ホラー映画初出演)として貴重な1作といえる。

なぜ「こどもつかい」が現れたのか、そして「事件の核心」とどのようにつながっているのかぜひ想像しながら鑑賞してほしい。

▶︎『こどもつかい』を観る

『犬鳴村』新たな恐怖の奔流「村シリーズ」第1弾

(C)2020「犬鳴村」製作委員会

『こどもつかい』から3年を経て公開された犬鳴村は、福岡県に実在する心霊スポット「旧犬鳴トンネル」を舞台にした作品。物語はただの心霊スポット譚には終わらず都市伝説「犬鳴村伝説」をも交えた展開になっている。

要所要所に盛り込まれた清水監督印の恐怖描写は健在で、ネタ的に作られた公式動画から発展して公開に至った『犬鳴村』の「恐怖回避ばーじょん」も注目を集めた。



「犬鳴村伝説」とは行政記録や地図上から抹消された犬鳴村にまつわる内容で、日本国憲法が及ばない「その場所」には外部との接触を絶った「住人」たちがいるという。本作では旧犬鳴トンネルのホラー要素に加えて犬鳴村伝説をアレンジしたストーリーも後半の核となる。

恐怖の先に待ち構える真相は本作のテーマ性すら変えるものであり、賛否両論分かれるところかもしれない。

心霊スポットと都市伝説を主題にしていることや背景が人の顔に見える不気味なポスターなど、公開前から関心度の高かった本作。その後『樹海村』と『牛首村』が公開されており、各作品に繋がりはないながらも「村シリーズ」として扱われている。物語のテイストもそれぞれ違うので、未見の方は3作品を見比べてみてはいかがだろう。

▶︎『犬鳴村』を観る

『忌怪島/きかいじま』これぞJホラーの手ざわり……

(C)2023「忌怪島 きかいじま」製作委員会

『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』の村シリーズから舞台は「島」へ。今年6月16日に公開されたばかりの『忌怪島/きかいじま』は現実の世界に加えてメタバース(仮想世界)も舞台のひとつで、普遍的な「怨念」と最新の科学技術が邂逅するというある種の野心的なホラー作品といえる。

なにわ男子の西畑大吾を主演に迎え、山本美月・生駒里奈・平岡祐太・水石亜飛夢・川添野愛・當真あみらが共演。シャーマン(霊媒師)の風習が残る島で進むVR研究施設のメンバーが不審死を遂げ、天才脳学者・片岡(西畑)らにメタバースで発生した“赤いバグ”の脅威が迫る。

本作における恐怖の根源は島に伝わる禁忌「イマジョ」と呼ばれ、それはメタバースから現実の世界へと侵食していく。特殊な設定ながら、しかしそこは清水監督。むしろぼんやりと「そこ」に視える存在やイマジョの怨念など、恐怖描写については近年の清水作品の中で最もJホラーらしい作りといえるのではないか。

──『ミンナのウタ』が登場するまでは。

『ミンナのウタ』GENERATIONSとのタッグで原点回帰!

©2023「ミンナのウタ」製作委員会

人気アーティストやアイドルグループが出演する映画は数あれど、「本人役」で登場する作品は珍しい。『HiGH&LOW』シリーズでも活躍したLDHのGENERATIONSメンバーと清水監督がタッグを組んだ『ミンナのウタ』は、30年前にラジオ番組へ届いたカセットテープから巻き起こる恐怖の連鎖を描いた作品だ。

ライブを数日後に控えた状況でGENERATIONSメンバーの小森隼が行方不明になり、その発端として浮上するのがカセットテープに録音された曲「ミンナノウタ」。

©2023「ミンナのウタ」製作委員会

さらにメンバーの間で少女の霊を目撃したという証言が相次ぎ、元刑事の雇われ探偵・権田(マキタスポーツ)、グループのマネージャー・凛(早見あかり)、そしてリーダーの白濱亜嵐はカセットテープの送り主・高谷さなの存在にたどり着く。しかし「ミンナノウタ」のメロディは呪いのように伝播し、ひとりまたひとりとメンバーが姿を消すことに──。

本作はまだキャストが発表されていなかった段階で劇場用特別映像を出しており、駆け寄ってきた子どもがカメラアングルから消えた次の瞬間バケモノのような姿になって抱きついてくる恐怖映像を劇場で目にした人も多いはず。もちろん本編にも使用されているカットだが、ぞくりと鳥肌の立つこのシーンもじつは「恐怖演出のひとつ」に過ぎない。



GENERATIONSメンバーそれぞれが怪異に触れるため、本作はとにかくホラー映画の名手・清水崇監督の面目躍如となる恐怖演出が目白押し。しかもキャラクターだけに向けられたものではなく、観客にも襲いかかってくるような作り手の悪意をひしひしと感じさせる。途中から物語の鍵を握る少女・高谷さなの「家」そのものが舞台になることからも、清水監督が観る者を恐怖のどん底に叩き落とした『呪怨』に回帰したといっても過言ではない。

そのため本作を「GENERATIONSが本人役で出ている企画映画」くらいの感覚で捉えているなら考えを改めた方がいい。「いつまでも『呪怨』の清水崇と呼ばれたくない」と語る清水監督の恐怖演出は全方位からあの手この手で襲いかかってくる。「本人役」だからこそ感じるGENERATIONSメンバーの切迫感と清水監督の手腕を、ぜひ劇場で体感してほしい。

(文:葦見川和哉)

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