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2024年02月02日

賛否両論渦巻く『“それ”がいる森』を「子供たち」に観てほしいワケ

賛否両論渦巻く『“それ”がいる森』を「子供たち」に観てほしいワケ


中田秀夫監督──その名を聞いて思い浮かべるのはどの作品だろう。やはり一番手はJホラーの金字塔『リング』か。あるいは『女優霊』や『仄暗い水の底から』といった、いまも根強い人気を誇るホラー映画を挙げる人も多いかもしれない。

また中田監督はホラーにとどまらず、『デスノート』のスピンオフ『L change the WorLd』やミステリ小説を原作にした『スマホを落としただけなのに』といった作品もヒットに導いている。

そんな中田監督作品の中で、2022年の公開時に賛否両論を巻き起こしたのが『“それ”がいる森』だ。ある意味「異色作」となった本作について、賛否を呼んだ点も踏まえつつその魅力をじっくり語っていきたい。

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【関連コラム】中田秀夫監督・先駆者としての変化と挑戦。『“それ”がいる森』インタビュー

“それ”を徹底的に隠した宣伝手法


タイトルが示す“それ”とは一体なんなのか。おそらく多くの映画ファンが中田秀夫流ホラーを期待していたかもしれない。公開前の宣伝でも一切その正体を明かすことはなく、いざ蓋を開けてみれば実は“それ”の正体は── というある意味で「衝撃的」な展開が観客を待ち受けていた。

制作側にとって、“それ”の正体を事前に明かさなかったことはひとつの賭けだっただろう。たとえば予告編にチラリとでもその姿が映れば、たとえば幽霊であれモンスターであれ、それだけでその手のジャンル好きを劇場に呼ぶことができる。反対に、そのジャンルに興味がなければ客を遠ざけることにもなりかねない。


その点、本作は主演に嵐の相葉雅紀を起用した時点で一定の集客を見込むことができる。「相葉くんが出るから」というだけで鑑賞理由になり、あえて“それ”を見せない宣伝手法も映画への興味を引くと同時に「おばけモノは怖くて観れない」というホラー映画集客あるあるを回避することもできる。

ただ、この機会にあえて声を大にして言いたい。本作は大人に限らず、心が知らずワクワクするような、それでいてハラハラドキドキもするエンターテインメントに飢えた少年少女たちに観てほしい、と。

過剰な化学反応は起こさない相葉雅紀&松本穂香コンビの良さ


さて──“それ”の正体についてネタバレをせずに本作を紹介するのは難しい。そのため核心部分は後半に回し、ざっとストーリーを紹介したい。主人公の淳一(相葉)は地方で農家を営んでおり、ある日突然、東京で元妻・爽子(江口のりこ)といるはずの息子・一也(上原剣心)の来訪を受ける。

一也はしばらく淳一のもとで暮らすことになり、近くの小学校に通うようになった。その矢先、一也と一緒に森の中の秘密基地で遊んでいたクラスメイトが失踪。淳一たちが暮らす町でも住民が不審死を遂げ、行方不明になる子供が相次いだ。


本作は「なぜ子供が狙われるのか」「子供たちはどこに消えたのか」といった謎を中心に物語を進めていく。その謎を探るのが淳一の役目であり、事件の解明に向けて淳一の協力者が一也の担任教師・絵里(松本穂香)だ。互いの関係上二人三脚のバディものにはならず、特別な才能に秀でたわけでもないふたりが地道に事件の謎を追うところが妙にリアルでもある。

一方で“それ”の正体が明らかになっていく過程の中で、現在と過去をつなぐ新たな疑惑が生まれるミステリアスな展開も。さらにクライマックスではそれまでの「怖さ」とは質の違う、もっと直接的な恐怖へと突入するため意外と(と言っては失礼だが)手数が多いことに驚かされる。


このあらすじに触れると、中田秀夫流ホラーの洗礼を受けている人なら違和感を覚えるはず。中田監督のホラーといえば、やはり『女優霊』の幽霊や貞子のような強い怨念を抱いたキャラクターのイメージが強い。ところが「森」という舞台や「失踪する子供たち」といったキーワードが、明らかにこれまでの作品とは異なる空気感を醸し出す。

それもそのはず、“それ”の正体は──。

※以降、ネタバレ注意!

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(C)2022「“それ”がいる森」製作委員会

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