今や定番スタイル、「映画前後編連続公開」の良し悪し

最初に少しお断りを。これからいう前後編もの映画というのは基本的に撮影・制作が同時に行われたうえで、2部作として公開されたものを指している。
現在に至って、○部作、シリーズ、サーガなどとして括られているものは多いが、1作目のヒットを受けた結果2・3を同時撮影して、2部作・3部作として言われているものが多い。

「スター・ウォーズ」旧3部作も1作目のヒットがあったうえで2作が作られて3部作となった。仮に結果○部作と呼称するが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「マトリックス」「平成ガメラ」などがある。逆に実は事実上の2部作だったのが「スーパーマン」と「スーパーマンⅡ冒険編」で、1作目の冒頭にⅡの敵役テレンス・スタンプが登場している。

これは制作の過程で揉めてしまい監督が降板して別々のくくりになった。逆に海外市場に持って行った際に大きくカットされて一本の作品にされてしまう場合もある。日本では前後編で100億円の興行収入を挙げたジョン・ウー監督の「レッドクリフ」が近年の極端な例だろう。2作で300分ある作品だが、欧米では145分の作品として公開された。欧米でもヒット作の実績があるジョン・ウー監督作品ではあったものの、極端な限定公開となり630万ドル弱(2億円弱)の興行収入にとどまった。

RED CLIFF

「HERO」が約8500万ドル「グリーン・デスティニー」に至っては約1億3000万ドルを稼ぎ出しているので、もろもろ条件があったとはいえかなり冷遇されてしまった。後者2作がハリウッドメジャー配給なのに対し、「レッドクリフ」はインディペンデント配給であったことも大きいかもしれない。

近年の前後編代表作

まず近年の前後編邦画作品の代表的なものをご覧いただこう。結果○部作アニメ作品、日本においての分割上映(「セディック・パレ」「チェ」)などは省いている。見ていただければ一目瞭然だが、基本的に後編の興行収入は落ちている。

きっかけとなった「DEATH NOTE」以外は右肩下がりになってしまっている。
DEATH NOTE デスノート

平均すれば前編比9割弱となるが「進撃…」は半減に近い。ちなみに公開スパンは平均すると1月半(6~7週前後)で後編につながっている。「DEATH NOTE」は4か月以上空いていて後編直前に短縮カット版を公開直前にテレビ地上波放送をしてひと悶着あった。

※近年の前後編邦画とその興行収入(興行通信社調べ)

「DEATH NOTE/ラストネーム」(28.5億円/52億円)
「のだめカンタービレ最終楽章」(41億円/37.2億円)
「GANTZ/PERFECTANSWER」(34.5億円/28.2億円)
「僕等がいた」(25.2億円円/17.2億円)
「るろうに剣心京都大火編/伝説の最期編」(52.2億円/43.5億円)
「SP野望篇/革命篇」(36.3億円/33.3億円)
「劇場版SPEC~結~漸ノ篇/爻ノ篇」(27.5億円/20.6億円)
「進撃の巨人/エンドオブザワールド」(32.5億円/16.8億円)
「寄生獣/完結編」(20.2億円/15億円)
「ソロモンの偽証事件/裁判」(7.2億円/5.8億円)
「ちはやふる上の句/下の句」(公開中)
「64‐ロクヨン‐」(公開中)
「3月のライオン」(公開前)

参考・洋画編
「レッドクリフpart1/part2未来への最終決戦」(50.5億円/55.5億円)
「ハリー・ポッターと死の秘宝part1/part2」(68.6億円/96.7億円)

すべては「DEATH NOTE」から始まった

すべては06年の「DEATH NOTE/ラストネーム」から始まったといっていいだろう。

直前まで日本テレビ・東芝・ワーナー・ブラザーズの合資で設立された制作会社トワーニで映画製作のノウハウを学んだワーナー・ブラザーズが本格的に制作・配給した事実上の法が第一号作品である。トンデモ世界のプリンス藤原竜也が主演とはいえそれまでにない前後編というフォーマットもあり不安視する声もあったが、ふたを開ければ大ヒットを記録。

藤原竜也のライバルを演じた松山ケンイチは本作で大ブレイクを果たし、その後「L change the World」が製作され今年にも「デスノート Light up the NEW world」が控えている。本シリーズの成功でワーナー・ブラザーズジャパンは今やヒット作連発の邦画制作会社になりつつある。上記の中でも「るろうに剣心」シリーズは1作目を経た完結編2部作で120億円以上をたたき出している。

前後編の良し悪し

最近一気に増えてきたこともあり、テレビドラマの映画化、ベストセラー作品の映画化などなどと同様にある種のヒットの公式になるにつれ、その在り方は賛否が大きく論じられるようになってきている。

まぁ端的に言えば、“お金の儲けの匂い”を感じ取ってしまうのだろう。日本映画人口、有料で映画館に訪れる人は1億6000万人前後で推移している。計算でいえば1人が年に1回映画館に行けばそれでノルマを達成してしまっているなか、“直後にすぐ続きがありまっせ”と言われれば、ノルマ以上の2回目の映画館来場が見込める。

また、制作においてはキャスト・スタッフをその都度に集合をかけなくても、やや長期にはなるものの拘束時間を一回にまとめてしまうことができるので、これは結果的に省略できるものが多い。前後編の公開スパンをタイトにすれば前編の公開に合わせて、宣伝・イベントを大量投下しておけば、その勢いのままに後編公開になだれ込めて結果的にコストパフォーマンスが良い。制作・配給・宣伝でコストパフォーマンスが良く、さらに2作連続公開となると大掛かりなプロジェクト感もあって、大きなイベント感もアピールできる。

と、ことほど左様に提供する側としてはお得感があるフォーマットなのだが、その内側の事情が表の観客の皆さんのところまで届いてしまっていることもあってネガティブなイメージが付きつつある。

しかし、何も悪いことばかりではない。

洋画の話になるが○部作というと近年の最大の成功例は「ロード・オブ・ザ・リング」3部作といっていいだろう。
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ほぼ1年キャストをニュージーランドに集めて一気に撮りきった本作はビジネス面でも批評面でも大成功をおさめた。これは、原作の長大さに対して、最初から映画を分けて語らなければいけないという覚悟を決めたうえで撮影された。

このように、元となる物語の情報量を考えれば駆け足で深みのない1本にするよりは、たっぷりと時間をかけて語り切った方が正解だという判断は正しいといっていいだろう。もちろん、タイトに内容をまとめて語りきるというのも映画の在り方の一つだろうが、必ずしもそれが成功しているとは言い切れないし、もともと物語・テーマがコンパクトなものにまとまってしまいかねない。

そういう意味で言えば、前後編という形で物語を語るという選択肢も正しいといっていいだろう。現在大ヒット公開中尚且つ批評面でも高評価を得ている「ちはやふる」も最初の時点では1作でまとめる案もあったものの、物語の性質上これは2部作で描くべきだと脚本も担当した小泉徳宏監督がプロデューサーに掛け合って成立した。こちらも話題の「64-ロクヨン―」も同じことが言えるだろう。

64-ロクヨン-前編/後編

(C)2016 映画「64」製作委員会

文庫では上下巻になっている原作なのでこれを中途半端にまとめるよりはきっちりと描くにはこのフォーマットが必要だろう。先行して放送されたNHKドラマ版では全5回の放送枠で構えて放送されている。

昨今、SNS等の急すぎる拡大もあってか、ネガティブな意見がまるで総意のように語られてしまい、上記のお金の(オトナの)事情がすぐに目がつくようになってしまって、映画本編を見る前にすでにその映画の成否が決まっているかのようなこともある。

もちろん、そこの部分を指しい引いてもなぜこれを前後編にしたのか?した意味がまるで見いだせないという映画もあった。しかしそういう外野の声にはあまり気にせず、1本の映画を選ぶ時のように語られる物語・テーマに目を向けて、見たい映画かどうかを判断してほしい。ぜひ前編を見たときは後編まで作品にお付き合いをお願いしたい。その物語は後編まででひとつの物語となっていることを忘れないでほしい。

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(文:村松健太郎

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    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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