いよいよ始まったEUフィルムデーズでの注目作をピックアップしてみる

今週6月18日から東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで始まったEUフィルムデーズ。14回目の開催となる今年は、26のEU加盟国から長編作品と短編集、計30プログラムが上映されます。

毎年初夏に開催され、日本未公開の作品から、各映画祭などで話題になった作品や、すでにロードショー公開されている作品まで、幅広く上映されているのですが、不思議なことにあまりその存在を知られていない映画祭であります。

入場料520円(一般料金)と普通の映画館よりも安価で観られるこの映画祭を知らないのは、非常に勿体ないということで、今年上映される作品の中で、注目作をいくつかピックアップしましょう。

 まずは今回のEUフィルムデーズで日本初公開となる作品から、2作品。

『日本からの贈り物』

3年前のカンヌ国際映画祭で学生映画を対象にしたシネフォンダシヨン部門で第三席を獲得した『In the Fishbowl』のクリスチャン・ジュルギウ監督の長編デビュー作。監督が29歳の時に製作した本作は、ルーマニアのアカデミー賞であるGOPO賞で最優秀主演男優賞を受賞するほか、作品賞を始め計8部門にノミネートされました。
最近はクリスチャン・ムンジウが国際的に高い評価を得て、上映の機会が増えたルーマニア映画ですが、やはりまだロードショーされる機会は少ないようです。

『ヴィクトリア』

現在公開中のドイツ映画や、今年のノーザンライツフィルムフェスティバルで上映された作品にも同名のタイトルがありますが、こちらはブルガリア映画ですのでお間違いなく。155分の大作ですがワンカットではありません。
マヤ・ヴィトコヴァ監督の長編デビュー作で、サンダンス映画祭をはじめ世界中の映画祭で高い評価を獲得しています。
一人の女性の人生と、変わりゆくヨーロッパの歴史を描き出した本作のようなタイプの作品は、まさにこの映画祭の趣旨にふさわしく、あまりイメージしづらいブルガリアという国の実情を見せてくれます。

 

続いて、各地の映画祭や特集上映などで話題になった作品からも2作品紹介します。

『家族の映画』

昨年の東京国際映画祭コンペティション部門で上映され、最優秀芸術貢献賞を受賞したチェコ映画。
タイトルだけを見ると、シンプルなヒューマンドラマが展開される予感がしますが、そんな予想を裏切る圧巻のストーリーテリング。あるブルジョワ階級の家族に訪れる危機を、家族の中の「不在」をテーマにして描き出している本作は、とても監督2作目とは思えないほどの密度を持った作品になっております。

『ロストックの長い夜』

昨年秋にドイツ文化センターで行われた特集上映「ドイツ映画:映像の新しい地平」で上映された本作は、1992年に旧東ドイツの町で起きた難民襲撃事件を描いた意欲作。
まだ35歳の若手監督ブルハン・クルバニが描き出す、現代ヨーロッパにも通じる難民問題への問題提起は、観る者すべてに強烈な印象を残す。しかもそれを白黒の端正な映像で描き出しているのだから、映像表現者としても将来楽しみな作家の一人であることは間違いないでしょう。必見です。

また、すでに日本で公開済みの作品からは、現在新作『神様メール』が公開中のベルギーの俊英ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の前作『ミスター・ノーバディ』や、今年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したケン・ローチ監督の前作『ジミー、野をかける伝説』などが上映されます。

EUフィルムデーズは7月10日まで東京国立近代美術館フィルムセンター(月曜日は休館)、そして6月25日から7月15日まで京都府京都文化博物館でも開催されます。
公式サイト:http://eufilmdays.jp

ところで、この映画祭でお披露目された後、日本でロードショー公開される作品も少なくありません。
ちょうどこの夏、昨年上映されたアイルランドの『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』がロードショーされます。

第82回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされた『ブレンダンとケルズの秘密』(日本未公開。EUフィルムデーズで上映されました)のトム・ムーア監督の長編2作目である本作は、第87回アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネートを始め、世界中の映画賞を席巻。地元アイルランド・アカデミー賞ではアニメ映画ながら最優秀作品賞を受賞しました。

アイルランド神話をベースに、妖精・セルキーの母親と人間の父親の間に生まれた幼い兄妹の冒険をとてつもなく美しい作画で描き出す、魅力あふれる一本。
ヨーロッパアニメ好きの大人はもちろん、クセの強い作品が多いヨーロッパアニメになかなか触れてこられなかった子供たちでも、安心して楽しめるファンタジーです。観ている最中から、もちろん観終わってからも、幸福な気分に包まれること間違いなし。

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』は8月からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショーとなります。
公式サイト:http://songofthesea.jp

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(文:久保田和馬

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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