AKB48″Green Flash”の「古いフランス映画」は『緑の光線』。角川シネマ有楽町「ロメールと女たち」開催中

現在角川シネマ有楽町で開催中の特集上映、「ロメールと女たち」。ヌーヴェルヴァーグの第一人者として知られ、2010年にこの世を去ったエリック・ロメールの作品群の中から、選りすぐりの8作品が、デジタル・リマスター版として鮮やかに蘇りました。

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1920年に生まれたエリック・ロメールは、文学の教師として働く傍らで映画批評を始める。その後、ジャン=リュック・ゴダールやジャック・リヴェット、フランソワ・トリュフォーらと出会い、「カイエ・ドゥ・シネマ」に寄稿するようになる。それからいくつかの短中編を制作し始め、39歳の時に『獅子座』で長編デビュー。

その後、《六つの教訓物語》《喜劇と格言劇》《四季の物語》といった三つの連作を中心に、コンスタントに作品を発表していく。その多くが、女性を主人公に、日常的な会話の応酬を淡々としたタッチで描き出すスタイルで、他のヌーヴェルヴァーグの作家たちとは一線を画した。

『モード家の一夜』でのアカデミー賞ノミネート(第42回の外国語映画賞と第43回のオリジナル脚本賞)を始め、ベルリン・カンヌ・ヴェネツィアの三大映画祭すべてで賞を受賞。国際的評価も非常に高い彼の作品群は、フランス人の生き方を最も的確に捉え、現代にも通じる部分がそこかしこに感じられるだけに、未だに人気が衰えない。

今回上映されている作品は、《六つの教訓物語》シリーズからは第3弾〜第5弾である『コレクションする女』、『モード家の一夜』、『クレールの膝』。《喜劇と格言劇》シリーズからは『海辺のポーリーヌ』、『満月の夜』、『緑の光線』、『友達の恋人』の4作品。そして『レネットとミラベル/四つの冒険』の計8作品。

ここ最近、これまで入手困難だった名匠の作品が相次いでレンタルDVD化されて、身近になってきておりますが、ロメールの作品ではまだ晩年の『三重スパイ』以外はレンタルDVD化されていないのが現状。多くの作品が、レンタルVHSにはなっていますが、それでも置いてある店舗も限られて、なかなか見ることができません。

今回上映される8作品も、販売用DVDとしては入手可能な作品ばかりですが、《六つの教訓物語》の3作は、いずれもプレミアがついていてなかなか手を出しづらい存在に。となると、こういった上映の機会は、なかなか観ることのできない作品を、しかも劇場で観られるという二重の幸福を得られる貴重な機会なのです。

上映される作品から1本ピックアップして紹介するとなると、やはり根強い人気を誇る『緑の光線』だろうか。ロメールの代表作とも言える、伝説的な一本です。

緑の光線 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]

ヴァカンスを過ごす約束をキャンセルされた主人公・デルフィーヌは、長いヴァカンスをどう過ごすか路頭に迷ってしまう。友人らは彼女を慰め、シェルブールに誘いだしてくれるのだが、そこで出会う男性にも興味が湧かないデルフィーヌ。一人旅をしてみようと、知人のいる山へ出向いても、どうにも気が乗らずにすぐに帰ってきてしまう。

今度はフランス南西部のリゾート地・ビアリッツに一人で向かった彼女は、そこで同じく一人旅をしているというスウェーデン人の女性と出会う。しかし、言い寄ってくる男性たちに嫌気がさした彼女は、再び一人になってしまう。そんな時、老人たちが話すジュール・ヴェルヌの「緑の光線」の話を耳にするのだ。

昨年、AKB48のシングル曲『Green Flash』でモチーフにされた、「太陽が沈んでく瞬間 最後まで残る緑の光」というのはまさにこの映画のこと。あの曲の中では「古いフランス映画」と言われているが、実際は85年の映画なので、それほど古くはありませんね。

この映画の要となるのは、何と言ってもクライマックスに登場する「緑の光線」です。これまで、「VHSでは確認できない」「映画館の、しかもフィルムではないと見ることができない」と伝説になっていた「緑の光線」は、今回のデジタル・リマスター版では果たしてどうなっているのか。これは自分の目で確認するに限ります。

東京・角川シネマ有楽町での上映は今週6月10日までとなっておりますが、このあと6月18日からは名古屋シネマテーク、7月からは横浜シネマ・ジャック&ベティなど、全国各地で今回の「ロメールと女たち」特集の上映が決定しています。

ただし、角川シネマ有楽町以外の劇場では<六つの教訓物語>の3作(『コレクションする女』『モード家の一夜』『クレールの膝』)の上映はありませんのでご注意ください。(有楽町でまだ1回ずつ上映の機会がありますので、決して見逃さないように)

「ロメールと女たち」公式ホームページ
http://mermaidfilms.co.jp/rohmer2016/

また、東京・飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京で開催中の特集上映「恋愛のディスクール 映画と愛をめぐる断章」でも、6月10日からエリック・ロメール作品の上映が始まります。こちらでは《喜劇と格言劇》の『美しき結婚』と、後期の作品である『木と市長と文化会館』『パリのランデブー』、遺作となった『我が至上の愛〜アストレとセラドン〜』の4作品に加え、ロメールにまつわる作品の上映もあります。こちらも注目してみてはいかがでしょうか。

「恋愛のディスクール 映画と愛をめぐる断章」公式ホームページ
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1604150709/

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(文:久保田和馬

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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