『トレジャー オトナタチの贈り物。』が“奇妙”で“おもしろい”5つの理由

トレジャー オトナタチの贈り物。

9月17日(土)より公開される映画『レッドタートル ある島の物語』は、フランス発のジブリ共同製作のアニメーションにして、第69回カンヌ国際映画祭の “ある視点部門 特別賞”を受賞しました。ある視点とは、独自の語り口や特異なアプローチがある映画が提供される部門。『レッドタートル』は全編にセリフがないという作風も含め、今までのジブリ作品とはかなり趣の異なる内容になっているといえるでしょう。

では、第68回カンヌ国際映画祭の“ある視点部門 ある才能賞”を受賞した作品が、『レッドタートル』と同日に公開されることをご存知でしょうか。ここでは、「確かに才能あるな!」と思わざるを得ない映画『トレジャー オトナタチの贈り物。』をご紹介します。

1.独特すぎる雰囲気を持つ映画だった!

本作のストーリーは、家族と慎ましく暮らしている男性が、失業中で借金がかさんでいる隣人と協力して、その曽祖父が埋めた宝を探そうとする、というもの。これだけだとシンプルでわかりやすい映画と思うかもしれませんが、この映画はとても“独特”なのです。

その理由のひとつが、“いたたまれない空気”、“会話のイヤな間”という登場人物の掛け合いを描いているから。しかも、ラストを除いて、全編にまったく音楽がなかったりするのです。

この映画は、なるべく多くの人が劇場にいるときに観るのがよいでしょう。キャラクターのやり取りははっきりコメディであり、笑えるのだけど、本当に居心地が悪くなるときや“引く”ときもある。そんな独特すぎる雰囲気こそが魅力であるため、他の観客との“一体感”があってこそ楽しく観られると思うのです。

2.お父さんがヒーローとなる物語?

雰囲気は独特ですが、その一方で主人公にとても感情移入しやすいことが映画の魅力となっています。

主人公は息子に『ロビン・フッド』の話を読み聞かせていたり、妻から息子がいじめられていることを知らされたりなどで、“(息子にとっての)ヒーローになりたい”という願望を持っていることが示されているようでした。

しかし、現実の主人公は、上司に不倫を問われると、本当はやっていないのに、受け答えが面倒臭くて認めてしまうという気の弱い男。ダメダメなのです。

そうであれば、この主人公の成長が描かれる、本当にヒーローになっていくと思うところですが……そう簡単にはいかないところがおもしろいところ。宝探しをするときは警察に見つからないかとビクビクしないといけない(古い硬貨は国有財産になってしまうから)とか、金属探知機があらゆる金属に反応してしまうのでまったく宝探しが進まないとか、いい意味でグダグダ(笑)なのが笑いを誘うのです。

ちなみに、この映画が製作されたきっかけは、隣人を演じていた役者が、本当に埋められた曽祖父の宝を探していたことなのだとか。実際には宝は見つからなかったのですが、監督はこの実話をコメディにしてしまうことで、残念な現実の結果に報いようとしたのです。

3.“金額”に注目して観てみよう!

本作は日本で公開されること自体が珍しいルーマニアの映画であり、作中で使われているお金はユーロです。1ユーロは約115円(9月上旬現在)で、作中で隣人が貸してくれと頼み込んでくる800ユーロは約92000円、これはルーマニアの首都ブカレストの平均賃金とほぼ同等なのだとか。

作中で金額が提示されたとき、このように1ユーロ≒115円という換算をしながら観ると、さらにおもしろく観られるでしょう。主人公(たち)の行動が、とんでもないことがよりわかるはずです。

4.似ている作品は『ジョジョの奇妙な冒険』?

直感的に「この映画と似ている!」と思った作品があります。それは日本の超有名マンガ作品『ジョジョの奇妙な冒険』のエピソードのひとつ“「重ちー」の収穫(ハーヴェスト)”でした(『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』というタイトルで、アニメ化もされています)。

この『ジョジョ』のエピソードでは、3人の少年が特殊な能力を駆使して、小さなお金を集めて、やがて大金までを手にしようとする私利私欲にまみれた(笑)ドラマとコメディが展開するのですが、これがけっこう本作『トレジャー』に似ているのです。ネタバレになるので詳しくは書けないのですが、終盤の“笑うしかない”展開は特にそっくりでした。

『ジョジョ』と大きく異なるのは、本作『トレジャー』の登場人物がいい年をしたオトナであるということですね。このオトナであることこそが、物語に重要になっています。

トレジャー オトナタチの贈り物。

5.「そうきたか!」な衝撃のラスト、そしてエンディングの楽曲がすごすぎる!

爆笑モノ、もしくは呆れる、もしくは“これしかない”と思わせるラストは圧巻でした。「そうきたか!」と人によってはニコニコできるでしょう。副題の『オトナタチの贈り物。』の意味、句読点(。)がついている理由もわかるようになっています。

そして、ラストシーンで流れる音楽のインパクトがすごすぎる!これだけ映画の楽曲が耳から離れなくなるのは、『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』というカルト映画以来でした。

その楽曲のタイトルは秘密にしておきますが、手がけたのはスロベニアで結成された“ライバッハ”です。ライバッハは“制服”を着用するなどしてファシズム体制をパロディにしてしまうような、政治的かつ国粋主義的で、前衛的なスタイルを続けているバンド。この映画にはいろいろな意味でハマッていました。

9月17日(土)より『トレジャー』が公開される劇場は、ヒューマントラストシネマ有楽町とシネ・リーブル梅田の2館のみですが、こんなにヘンテコ(褒めています)な作品を観られる機会はなかなかないので、ぜひ映画ファンにこそ観て欲しいです。万人受けはしないでしょうが、奇妙で独特な作品を求める方にオススメします。

(文:ヒナタカ)

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