映画「エヴォリューション」少年達と母親だけが棲む島の秘密とは?

エヴォリューション 日本版ポスター

(C)LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

そのポスタービジュアルから受ける、美しい絵画のようだがどこか奇妙で不穏な印象により、既に公開前から映画ファンの間で話題になっていた作品。それがこの11月26日より公開中の映画「エヴォリューション」だ。

予告編でも印象的なその映像美の中で、いったいどのような物語が展開するのか?
それを確認すべく、今回は品川の原美術館で行われた特別先行上映で鑑賞してきた。美術館の中での上映という、正に理想的な環境での鑑賞となった「エヴォリューション」。果たして、その出来はどうだったのか?

ストーリー

何故か少年と女性しかいない人里離れた島に、母親と二人で暮らしている10歳の少年ニコラ。
その島では全ての少年たちが、奇妙な医療行為の対象となっていた。「何かがおかしい」と異変に気付き始めたニコラは、夜中に外出する母親の後をつける。
そこで目撃したのは、母親が他の女性たちと海辺でする「ある行為」だった。島に隠された秘密を探ろうとするニコラの前に、出現する様々な悪夢の様な出来事。いったい、「エヴォリューション(進化)」とは何なのか?

美しく、どこか不穏な映像美が、セリフ以上に全てを語る!

最近には珍しく、本作の上映時間は81分という短さ。しかもセリフは少なく、状況や心情の説明などは、殆どセリフで語られない。
その代わりに全てを物語るのが、全編に渡って展開する美しいがどこか違和感と不穏な感じを伴う、その独特な映像世界だ。
これらの映像をヒントに、観客が自分なりの理解を見つけ積み上げていく。これこそが本作をより理解し楽しむための方法だと言えるだろう。

前作「エコール」では、その圧倒的な映像美で少女たちの世界を描いたルシール・アザリロヴィック監督が、10年の歳月を経て今度は少年たちの世界を描いた本作。是非劇場で自分なりの答えを見つけていただければと思う。

一見平和な日常に見える中、次第に明らかになって行く異常と恐怖!

大人の男が存在しない奇妙な島。そこでは少年と母親だけの社会が成立していた。一見平和で穏やかな日常が続いて行く中、ふとしたきっかけで少年の心に疑惑と違和感が芽生え始める。そこから展開するのは、文字通り「悪夢」の様な世界であり、視点を帰れば母親からの過剰な愛情に対する少年期の恐怖と、少年から大人への成長に伴う心境の変化とも考えることが出来るだろう。

少年たちのコミュニティで残酷な物語が展開する点は、「蝿の王」を思わせるし、全体の雰囲気や世界観は、SF映画の古典である「光る眼」や「ドクターモローの島」を連想させる。

お時間があれば、本作鑑賞後にこれらの作品をご覧になると、より理解を深める手助けになる筈だ。

エヴォリューション サブ2

(C)LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

最後に

映画全体の印象としては、不気味な島で行われる秘密の人体実験と、そこからの脱出を描いている様でありながら、実は全ては少年期特有の空想と妄想が描いた世界なのでは?そう考えることも出来るなど、見る人によって様々な解釈が出来るところが、本作の魅力だと言えるだろう。

主人公の少年ニコラと次第に心を通わせる様になり、最終的に彼を助けた看護婦に芽生えた感情。
果たしてそれは少年への母性なのか、それとも恋愛感情なのか?その一点だけでも、鑑賞後に友人同士の話題に出来るに違いない。

離婚で母と暮らすようになった少年が、母親からの過度の庇護と愛情に耐え切れず、ついにその生活からの自立と脱出を果たした、そうとも考えられるラストシーン。

果たしてあなたなら、どの様に解釈するだろうか?
ちなみに、自分が本作に分かりやすいサブタイトルを付けるなら、「そして父になる」がピッタリだと思うのだが、その意味は是非劇場で!

(文:滝口アキラ)

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    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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