織田梨沙のヌードも辞さない熱演を見逃すな!『秘密 THE TOP SECRET』の魅力

秘密 THE TOP SECRET メインA

大友啓史監督『秘密 THE TOP SECRET』を鑑賞しました。149分という上映時間や『シン・ゴジラ』など夏の大作映画と公開時期が重なったため上映劇場、上映回数が少ないといったネックがありましたが、なるほどこれは鑑賞してみると随所に見どころがあって面白い作品でありました(筆者は原作未読ですが)。
今回の「映画音楽の世界」では、そんな『秘密 THE TOP SECRET』を紹介したいと思います。

大友啓史監督の描くSFサスペンス

監督はNHK大河ドラマの『龍馬伝』や佐藤健主演の『るろうに剣心』シリーズを手掛けてきた大友啓史監督。手堅い演出と画作りに定評のある監督ですが、本作でも「死者の脳の記憶を探る」というSF設定をサスペンス性とバランスよく両立させた演出で見せてくれています。

例えば捜査官と容疑者の顔を入れ替え潜入捜査を目論んだジョン・ウー監督の『フェイス/オフ』では原案にあったSFテイストをまるまる削り、現実感重視の映画に仕立て上げましたが、本作で脚本も担当した大友監督はあくまでも「死者の記憶」を起点に物語を巡らせ、「脳を介し死者の記憶を覗き見る」行為がもたらす狂気と破綻の世界をまざまざと見せつけます。この映画は常にSFとしての視点があるため、むかしのSF映画のようなガジェットを堂々と描いても違和感を感じません。

そして、そのガジェットが物語の転換点となる場面で、観客の誰もが「その手があったか!」と膝を叩きたくなるような「あるネタ」に活きてくるのだからなかなか練られた脚本に仕上がっているのではないでしょうか。本作は犯人当て要素はないのでミステリ度としては低いですが、それでもミステリ小説やどんでん返しが好きな人も楽しめる作品になっていると思います。いかにもエンタメ的な派手なドンパチや犯人との徒手格闘は排除し、メンタリティを追求した大友監督の演出手腕が映画を引き締めています。

秘密 THE TOP SECRET 岡田将生1

主演級に負けない存在感。新星、織田梨沙の女優力

本作には主演の生田斗真をはじめ岡田将生、栗山千明、松坂桃李、椎名桔平、吉川晃司、リリー・フランキーといった主演級の俳優がずらりと顔を揃えています。それぞれが要所要所で重要な役割を担い白熱の演技を見せる中、圧倒的な存在感を見せつけたのが、物語の鍵を握る一家惨殺事件の被害者家族、長女絹子を演じた織田梨沙です。

事件後行方不明となっていた状況から一転、物語は絹子を中心に進み、役柄としても、台詞としても非常に難しい役どころを文字通り体当たりで演じきっています。美しさとある種の異常性を孕んだ瞳。周囲の人間を惹きつける笑みが印象的な口元。ヌードも辞さない、二十歳とは思えない佇まいが多くの人間を翻弄していきます。しかも本作が劇場作品初出演というのだからとんでもなく度胸が据わった女優の誕生です。

ヒット作を連発する監督のもと、多くの俳優陣に混ざりながらその存在感は抜群。出来れば一家惨殺事件が発生する前の、絹子という人間に焦点を絞ったエピソードが観たいと思わせるほどでした。

秘密 THE TOP SECRET 絹子 織田梨沙

音楽で魅せる脳神経世界の表現

本作の音楽を担当したのは『ハゲタカ』『龍馬伝』『るろうに剣心』三部作で大友監督と組んでいる佐藤直紀。大友監督のフィルモグラフィーで多くの作品を担当していることからも二人の信頼関係は強い様子。

大友作品での佐藤直紀の音楽はどれもオーケストレーションを全面に出し、よりドラマチックに、よりアクション性を強調するような曲調のものが多かったのですが、今回は「脳」という複雑な神経回路を扱った作品であるためかデジタルサウンドをメインに構成されています。シナプスが繋がっていくように一音一音が電気的な結びつきを見せていく音楽は今までの佐藤直紀サウンドとはまた違った印象を与えていて、作曲家としての多才ぶりを発揮しています。

作曲家佐藤直紀の音楽の持ち味は『海猿』や『ウォーター・ボーイズ』など日本人離れした力強いメロディラインと耳に馴染みやすいフレーズがありますが、本作では猟奇性、サスペンス性に重点を置いているので作曲スタンスとしては山崎貴監督と組んだ『寄生獣』に近いものがありました。実際、ドラマパートでは女性コーラスの切なげな響きが本作でも印象的に流れ、映像をより引き立たせています。

秘密 THE TOP SECRET 松坂桃李

まとめ ※以下一部ネタバレを含みます

前述のように本作では大友アクションは一切封印しSFガジェットのサスペンス映画となっていますが、この映画の興味深いところはいくつかの謎が提示されたまま幕を閉じる部分にもあります。

絹子の足元にあった白骨死体が意味するものは。

岡田将生演じる青木が薪から手渡されたデータには何が記録されていたのか。それを見た青木はなぜ父親の手を握り締めたのか。
劇中、重要な役割を果たす「彼(もしくは彼女)」の記憶がもう一度再生されたラストの映像が伝えようとしたものとは。

あえて謎を残すことによって鑑賞後の観客に考察の余地を残し、改めて原作漫画を読み返すも良し、あるいは初めて原作漫画を手に取るのも良いかと思います。大友監督が仕掛けた謎の答えがそこにあるかも知れません。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

(文:葦見川和哉)

(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会

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    葦見川和哉 映画が好き。旅が好き。小説が好き。 映画開眼と同時に映画音楽の魅力にも取りつかれたサウンドトラック収集家。

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