カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のグランプリ有力5作品

今年も7月に入ったということで、下半期最初の映画イベントである、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭が1日から9日まで開催しております。

Karlovy Vary

このカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、国際映画製作者連盟の公認映画祭のひとつ。その中でも国際的に注目が集まるコンペティティブ映画祭で長編・短編両方を扱う7つの内のひとつとして認められています。いわば、三大映画祭に次ぐ映画祭は、ロカルノとモントリオール、ワルシャワと、このカルロヴィ・ヴァリというわけです。

多くの日本人にとって海外の映画祭といえば、三大映画祭のイメージが圧倒的で、そうでなければ日本人が関わる作品が受賞した際に少しだけマスコミで取り上げられる程度。

昨年はロカルノ国際映画祭で濱口竜介監督の『ハッピーアワー』が女優賞を受賞したり、モントリオール国際映画祭では2008年に『おくりびと』がグランプリに輝くなど、他の映画祭は知名度が徐々に上がりつつありますが、カルロヴィ・ヴァリに関しては、まだまだ知られていないのも事実。それでも、1958年には家城巳代治監督の『異母兄弟』がグランプリを獲得するなど、これまで数多くの日本映画が出品されています。

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そもそもカルロヴィ・ヴァリとはどこなのか説明する必要がありそうなので簡単に言うと、東欧に位置するチェコ共和国の西部にある都市です。首都プラハからはおよそ80マイルほど離れた温泉地で、日本の温泉地の代表である群馬県草津町とは姉妹都市を結んでいるのです。

そんな観光地で始まったカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、1946年に第1回を行いますが、政治的な影響も相まって、開催ペースは変則的。1993年にチェコ・スロバキアが解体し、その翌年から毎年開催されるようになったのです。

安定開催されるようになった94年以降にグランプリを獲得した作品を挙げると、セルゲイ・ボドロフの『コーカサスの虜』、ジャン=ピエール・ジュネの『アメリ』、クシシュトフ・クラウゼの『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』、そしてヤーノシュ・サースの『悪童日記』と、日本で公開されれば人気になるものばかり。また、一昨年のグランプリ受賞作であるギオルギ・オバシュビリ監督『とうもろこしの島』も9月から日本での公開が決まっており、こちらも見逃せないところです。

さて、現在開催中のカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のコンペティション部門に、もしかしたら日本でブームを巻き起すような作品があるかもしれません。今年のコンペティション部門12作品から有力作品を5本チェックしてみましょう。

The Teacher

まずはこの映画祭の常連で、現代チェコ映画界の重鎮でもあるヤン・フジェベイクの最新作『The Teacher』。日本でも公開された『この素晴らしき世界』で映画賞を席巻し、アカデミー賞外国語映画賞候補にも上がった彼だが、これまで4度コンペティションに挑み、最高でも3年前の監督賞まで。80年のチェコ・スロバキア時代を舞台に、小学校教師が引き起こす問題をめぐる騒動を、軽やかな台詞の応酬で描き出した本作で、初のグランプリを狙う。

By the rails

また、6年前のベルリン国際映画祭でアルフレード・バウアー賞と審査員特別賞に輝いたルーマニア映画『俺の笛を聞け』の脚本家カタリン・ミツレスクの5年ぶりの監督作『By the rails』も気になるところ。すでに公開されている本国ルーマニアではまずまずの評価を集めている本作。前2作をいずれもカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品していたミツレスクだが、今回は初めてカルロヴィ・ヴァリに挑む。

The Confessions

さらに、昨年日本でも公開された『ローマで消えた男』のロベルト・アンドー監督とトニ・セルヴィッロが再タッグを組んだ『The Confessions』も有力作の一本。同じくカルロヴィ・ヴァリのコンペ部門に出品された前作は、惜しくも受賞こそ至らなかったが、ダヴィッド・ディ・ドナテッロで大量ノミネートを果たすなど高評価を得た。今作で雪辱を晴らせるだろうか。

The Next Skin

本国スペインで行われたマラガ映画祭で、6部門を受賞する圧巻のパフォーマンスを見せたイサキ・ラクエスタとイサ・カンポの『The Next Skin』は今回のコンペ最大の伏兵。これまでサン・セバスチャン映画祭での作品賞を始め、充実したキャリアを持つラクエスタは、意外にも日本でも監督作が上映されております。2011年3月11日の震災を受け、河瀬直美の呼びかけで制作された短編オムニバス映画『3.11 A Sense of Home Films』で、ポン・ジュノやジョナス・メカス、アピチャッポン・ウィーラセタクンら錚々たる顔ぶれの21名の中に選ばれた、将来性抜群の作家なのです。

Zoology

将来性といえば、『Zoology』で受賞を狙うイワン・トワルドフスキーも楽しみな逸材。88年生まれの彼は、グザヴィエ・ドランと同世代。監督デビュー作となった『Corrections Class』ではカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭イースト・オブ・ウエスト賞に輝くなど、世界中の映画祭で数多くの受賞を果たしました。本作もすでにソチで行われた映画祭で好評を博しており、先のカンヌ国際映画祭での若手作家に対する低評価の反動が起こらなくとも、何らかの賞を受賞する可能性が充分にあるのです。

その他

その他の部門を見渡してみても、今年は日本からの出品作はありません。ただ、Another view部門にはフィリピンのラヴ・ディアスの最新作(今回は480分とのこと)や、『消えた画 クメール・ルージュの真実』が日本でも公開されたカンボジアのリティー・パニュの最新作が上映。さらに、ホライズン部門には『ヴィクとフロ、熊に会う』のドゥニ・コテや、『オーバー・ザ・ブルースカイ』のフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のタイカ・ワイチチらの新作、さらには今年のベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞を獲得したジャンフランコ・ロージの『fuocoammare』が上映。

いずれも日本でのロードショー公開や、秋に行われる各映画祭での上映の可能性がある作品ばかりですので、この機会に積極的に情報を取り入れてみるのはいかがでしょうか。

(文:久保田和馬

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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