加藤泰監督、幻の遺作『ざ・鬼太鼓座』東京フィルメックスにて上映!

今年で17回目を迎える東京フィルメックス。アジア地域の新旧名作映画を集めて上映し、映画の未来を示唆し続けるシネマ・フェスティヴァルが11月19日から27日まで東京有楽町マリオンにて開催されます。

今回もコンペティションや特別招待作品、イスラエル映画の現在など必見の作品目白押しの中、“フィルメックス・クラシック”と冠して、イスラム革命の意味を問うた内容ゆえ長らく封印されていたモフセン・マフマルバフ監督の『ザーヤンデルードの夜』(16)、台湾ニューシネマの旗手エドワード・ヤン監督の『タイペイ・ストーリー』(85)、“香港のクロサワ”とも称された武侠映画の大巨匠キン・フー監督の『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(67)『侠女』(71)、そして我が国からは……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.175》

今年生誕100年を迎えた名匠・加藤泰監督の遺作であり、長年幻の名作と謳われてきた『ざ・鬼太鼓座』が上映されます!

ざ・鬼太鼓座

(C)1989「ざ・鬼太鼓座」製作委員会

日本の美意識と情念を
映画的に開花させた傑作『ざ・鬼太鼓座』

映画『ざ・鬼太鼓座』は1971年に創設されたプロの創作和太鼓集団“鬼太鼓座”の79年から80年までの活動の様子を追ったドキュメンタリー……と言い切ってしまうと語弊があるような、かといってフィクションでもない、研ぎ澄まされた美意識に裏打ちされた日本情緒のイリュージョンと、徹底的に鍛え上げられた演者の肉体美とともに奏でられる圧倒的迫力の演奏パフォーマンスのダイナミズムが融合しながら情念の世界を展開していくという、これぞ“映画”の醍醐味! としかいいようのない見事な作品です。

強靭な体力を必要とする演奏のため、ひたすら走り続ける演者たち。その日常の、ごく普通の若者として表情が、いざパフォーマーとして演奏するときにはまばゆいオーラの輝きが、この映画のために特設されたステージ美術と巧みに融合し、映画ならではの美を醸し出し、昂揚感を増幅させていきます。

それは加藤泰監督作品ならではの映画の美学でもあり、また彼独自のローアングルやクローズアップで演者たちを仰ぎ見る画がパフォーマーのヒロイズムを見事に醸し出していきます。

また、日本の美と演者の肉体美が合わさっての演奏シーンの数々は、秀逸な音楽映画としての醍醐味をもたらし(爆音上映で見たら、その興奮はさらに増すことでしょう!)、特に後半はもう言葉が交わされることがほとんどない音と人との結びつきの世界と化していき、大胆かつ繊細な太鼓の響きが観客をどこか不可思議な世界へとトリップさせてくれます。

これほどの映画的魅力を湛えた傑作として、本作は81年に完成しながら、製作サイド内でのトラブルによって(もっとも加藤監督は本作に関して「生まれて初めて思う通りのことをやれた作品」と語っています)、結果として劇場公開が見合わされたいわくつきの作品で、その後映画祭の特別上映など特殊な形態でしか上映されたことのない幻の作品とされてきましたが、このたび加藤泰監督生誕100年を記念してデジタルリマスター作業を施し、第73回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門でワールドプエミア上映され、第17回東京フィルメックスにて日本プレミア、そして2017年1月21日より渋谷ユーロスペースにて堂々ロードショーも決定しました。

完成から実に35年の月日を経ての奇跡!

これが遺作となった加藤監督も、ようやく本懐を遂げることができて本望でしょう。

生誕100年!
加藤泰監督の優れたキャリア

さて、その加藤泰監督のキャリアも振り返ってみますと、1916年8月24日、兵庫県神戸市生まれ。母方の叔父は『人情紙風船』などの戦前の名匠・山中貞雄監督で、彼を頼って上京し、37年に東宝に入社。その後八木保太郎に師事して満州へ赴き記録映画を製作。戦後46年に帰国して大映の助監督となり、伊藤大輔や黒澤明監督作品などにつきましたが、同社の組合書記長を務めたことでレッドパージでクビになり、独立プロの宝プロに転職し、51年に『剣難女難』2部作で映画監督デビューを果たしました。

56年、東映京都撮影所に移籍し、白塗りスターが主流の時代に、キャストにノーメイクで出演させた『風と女と旅鴉』(58)で注目され、その後も股旅映画の決定版『瞼の母』(62)やミュージカルにSFなんでもござれの異色作『真田風雲録』(63)、任侠映画『明治侠客伝 三代目襲名』(65)、渥美清の助演も印象深い『沓掛時次郎遊侠一匹』(66)など数々の名作を手掛けました。

この後、野村芳太郎監督らとの交流から松竹での活動が主となり、異様な雰囲気を湛えた現代復讐劇『皆殺しの霊歌』(68)や、『人生劇場』(72)『花と龍』(73)などの2部構成の大作、そして横溝ブームを受けて江戸川乱歩で対抗した『江戸川乱歩の陰獣』(77)などの異色作を手掛けました。

主に東映作品と松竹作品、ファンの嗜好はさまざまですが、私個人としては松竹時代の加藤映画のほうにより惹かれるものがあります。まるで日本刀とも相応しあった彼の鋭くも美しい美意識は、松竹時代の作品のほうに強く結実して表れている気がしてならないからです。
(東映作品では、やはり69年『緋牡丹博徒 花札勝負』と70年『同 お竜参上』あたりが好みです)

そんな松竹時代の加藤作品のブルーレイ&DVD化も決定しました。

2016年12月07日
『宮本武蔵』(73)
『江戸川乱歩の陰獣』(77)

2017年01月06日
『阿片大地 地獄部隊突撃せよ』(66)
『男の顔は履歴書』(66)

2017年02月08日
『ざ・鬼太鼓座』(81)

また東映ビデオからは『真田風雲録』『骨までしゃぶる』(66)『懲役十八年』(67)『昭和おんな博徒』(72)が初DVD化されて現在発売中です。

この機にぜひ、加藤泰監督作品を通して、日本の美意識と情念の世界に浸ってみてください。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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