寅さんシリーズ最多4回マドンナを演じ続けた浅丘ルリ子

写真家『早田雄二』が撮影した銀幕のスターたちvol.22

現在、昭和を代表する名カメラマン早田雄二氏(16~95)が撮り続けてきた銀幕スターたちの写真の数々が、本サイトに『特集 写真家・早田雄二』として掲載されています。
日々、国内外のスターなどを撮影し、特に女優陣から絶大な信頼を得ていた早田氏の素晴らしきフォト・ワールドとリンクしながら、ここでは彼が撮り続けたスターたちの経歴や魅力などを振り返ってみたいと思います。

浅丘 ルリ子さん

日本映画全盛期の1950年代に日活でデビューし、数々の名作に出演しつけている浅丘ルリ子ですが、やはり松竹としましては、『男はつらいよ』シリーズにマドンナとして最多4回登場したことを特筆しないわけにはいかないでしょう。
彼女が演じたリリーは、今も寅さんとどこかで喧嘩しながら仲良くやっているのでしょうか……。

男性映画の刺身のツマではない
女優としてのステップアップを目指して

浅丘ルリ子は1940年7月2日、満州国新京市(現・長春)生まれ。3歳のときに父は満州国経済学部大臣秘書官で、3歳のときにタイのバンコクに転勤。終戦後の46年7月に日本に引き揚げ、茨城県から東京・神田へ移りました。

中学在学中の54年、日活が少年少女小説『緑はるかに』映画化に寄せての出演者一般公募を受けたところ3000人の中から選ばれ、女優デビュー。55年に日活初のカラー映画として完成しました。

その後しばらくは娘役などが続きますが、56年『愛情』では初のキスシーン披露(当時故、かなり悩んだそうですが、父親の励ましで一念発起したとのこと)。また『鷲と鷹』(57)『夜の牙』(58)などで石原裕次郎と、『絶唱』(58)『南国土佐を後にして』()などで小林旭と共演。特に小林旭とは“渡り鳥”シリーズや“流れ者”シリーズをはじめ、数多く共演し続けました。

彼女の転機は63年、親友でもある佐久間良子が主演した東映映画『五番町夕霧楼』が公開され、なぜこのような女性映画が日活でできないのかという不満を抱くようになり「私は男性映画の刺身のツマ」などとマスコミに語り、64年にはデビューして初めて会社から持ち込まれた役を断るなどの自己主張を始めていきます。

こうした意欲が実って出演100本記念作品『執炎』(64)に主演した彼女は多大な評価を受け、同作の蔵原惟繕監督とはその後も名コンビとして組んでいきますが、こうした女優としてのステップアップは、裕次郎や旭共演のムード映画などでも、単なるお飾りではない存在感のあるヒロイン像を構築していくことになりました。

テレビや舞台への移行から
また再び映画の世界へ

67年には東宝『日本一の男の中の男』で念願の他社出演を果たし、68年から72年までは石原プロに所属して『栄光への5000キロ』、NHK大河ドラマ『竜馬がゆく』、69年には『愛の化石』『私が棄てた女』などに出演。この時期になると、日本中に浅丘ルリ子ブームが巻き起こっていました。
71年、テレビ『二丁目三番地』で共演した石坂浩二と結婚(2000年に離婚)。また同年末、日活がロマンポルノへ路線変更したことを機に、活動の場をテレビに移していきますが、73年、山田洋次監督の『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』で11代目マドンナ、ドサ周りの歌手リリーを演じ、これが大評判となり、『寅次郎相合傘』(75)で再登場し、キネマ旬報やブルーリボン賞などの主演女優賞を受賞。その後も『寅次郎ハイビスカスの花』(80)、そしてシリーズ最終作『寅次郎紅の花』(95)にも出演し、寅さんの永遠のマドンナとしての地位を築き上げました。

もっとも、寅さんシリーズ以外、彼女の映画出演はかなり少なくなり、80年代以降は舞台中心の活動となっていきます。

86年には市川崑監督の『鹿鳴館』では芸者上がりの伯爵夫人を貫録で演じるも、作品が権利元の関係で現在はほぼ上映もソフト化もできない状況が続いています。市川監督とは『四十七人の刺客』(94)でも組んでいます。

そんな浅丘ルリ子ですが、21世紀に入ると『木曜組曲』(02)『博士の愛した数式』(06)『早咲きの花』(06)『ジーン・ワルツ』(10)と再び映画出演に意欲的になっていきます。中でも2011年の主演作『デンデラ』は、姥捨て山伝説をもとに、山に捨てられた老婆たちが武装して共同体を築き上げ、村への復讐を目論みつつ、ヒグマの襲来でそれが叶わず、壮絶な死闘を繰り広げるという異色バイオレンス映画で、ここでも映画女優としての貫録を銀幕いっぱいにたたきつけました。

もっとも、これ以来また映画出演が途絶えているのは残念な限り。『八月の鯨』のような作品を浅丘ルリ子主演で見てみたいものです。

※「東京スポーツ」「中京スポーツ」「大阪スポーツ」は毎週月曜、「九州スポーツ」は毎週火曜発行紙面で、「生誕100年 写真家・早田雄二が撮った銀幕の名女優」を好評連載中。

(文:増當竜也

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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