抜群の面白さ!『砂上の法廷』、94分間騙され続け衝撃を受けよ!!

砂上の法廷 ポスター
(C)Whole Truth Productions, LLC

現在、都内では単館ロードショー中でありながら、その抜群の面白さが口コミで広がり、未だに集客を伸ばし続けている映画。それがこの、キアヌ・リーブス主演のミステリー「砂上の法廷」だ。

本作で裁かれるのは、資産家である大物弁護士が息子に殺害された、という事件。

検察側と弁護側の攻防戦は被告人が一切黙秘を続けたままで進行し、遂には弁護側が絶対不利な状況で、裁判は最終局面を迎えてしまう。しかしその時、突然自身による証言を希望した被告人が語った、ある驚愕の事実とは?

事件に対する一切の説明や前情報抜きに物語は始まり、映画の中の裁判を通じて提示される証言や情報によって、事件の全貌も徐々に明らかになって行くため、本作では実際に観客が裁判を傍聴している様な臨場感が十分に味わえる。。

本作の内容は、いわゆる「法廷物ミステリー」。人間関係の説明や専門用語など、ただでさえ情報量が多くなるジャンルだけに、通常であれば2時間近い上映時間になっても、何ら不思議は無い。それなのに、なんと本作の上映時間は94分という短さ!そのため、会話中心の映画にも関わらず、全てがスピーディーにテンポ良く進み、観客を決して飽きさせる事が無いのは見事としか言いようがない。

映画の冒頭、キアヌ・リーブスが車でなくバイクで裁判所に通うという描写だけで、この弁護士の経済状態や職業的ランクを我々に理解させるなど、監督であるコートニー・ハントの巧みな省略と、抑制の効いた演出は最大限の効果を上げているし、更に弁護側の女性助手が、相手の表情やしぐさから嘘をついているかどうかが判るという、「人間嘘発見器」的能力の持ち主なのも、本作の上映時間短縮に役立っていると言えるだろう。

実は今回非常に意外だったのが、既に陪審員選定の段階から検察側と弁護側の駆け引きが始まっているという点だった。陪審員の特徴と個別の攻略法などを主人公に伝える、情報収集担当のスタッフがいるという事を、実際この映画で観て初めて知ったという方も多いのではないだろうか。

この様に、日本人にはあまり馴染みの無いアメリカの裁判制度だが、短い上映時間内でも判るように描かれていているので、「法廷物は専門用語が難しそうでちょっと苦手・・・」という人にも十分楽しめるはずだ。そして、宣伝文句の通り「94分間騙され続け」、全ての真相を知った上で最初から観直すと、登場人物の演技が初回と全く違って見えてくるのは間違いない。

特に、タバコの吸い方一つでその人間の本性を表現したレニー・セルヴィガーの演技力と、そこにいるだけで、もはや「キアヌ・リーブス力」としか表現できない「抜群の違和感と無言の説得力」を漂わせる、キアヌ・リーブスの存在感は特筆に価する。

更に、殺される弁護士を演じたジム・ベルーシの演技と、年齢を重ねた男の渋さ!個人的にはコメディ俳優としての印象が強かった彼だが、複雑な内面を持つこの役は、まさにハマリ役と言えるだろう。

この映画においての重要なテーマ、それはズバリ「嘘」。

そう、本作中では、とにかく登場人物全員が何かしらの嘘をついているのだ。「人は自分の面目を保つために嘘をつく」とは、作品中に出て来るセリフだが、映画の中では、法廷で真実を証言しますと宣誓した証人でさえ、実は自分の恥を隠すために嘘をついているという描写が続く。
繰り返される嘘まみれの自白、証拠、証言。

やがてその中で、我々観客は気付かされる事になる。実は嘘にも二種類あるという事を。一つは自分の利益を守るためにつく嘘、そしてもう一つは他人を守るためにつく嘘。

果たして、キアヌ・リーブス扮する主人公の弁護士が選択するのは、己の良心に従う「真実の追究」か、それとも弁護士として「依頼人の利益」を守る事なのか?ぜひ、劇場に足を運んで頂いて、「騙され続ける快感」を味わって頂くと共に、そのラストシーンにご自分なりの「評決」を下して頂きたいと思う。

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(文:滝口アキラ

    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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