前作より過激に『超高速!参勤交代リターンズ』、堂々完成!

無茶ぶり続編ウエルカム!

「ねえ、『超高速!参勤交代』ヒットしたからさ。続編作ろうよ」

「え、でも、あれはお話完結してますよ!?」

「何言ってんの? 行って帰ってくるまでが参勤交代でしょ。まだ参勤(行く)だけで交代(帰る)はしてないじゃん」

「えー、そんな⁉」

みたいな会話が松竹内部で取り交わされていたかどうかは定かではありませんが……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.157

『超高速!参勤交代リターンズ』、堂々完成してしまいました!しかも前作より過激に!

超高速!参勤交代リターンズ メイン2

(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会

行きよりも帰りのほうが大変だった参勤交代
クライマックスは7対1000の一大チャンバラ!

前作『超高速!参勤交代』で徳川幕府から突如実質4日間での参勤交代を言い渡されるも、知恵と工夫でさまざまな難関を乗り越え、無事に江戸へ到着した城主・内藤政醇をはじめとする湯長谷藩(現在の福島県いわき市)の面々。

黒幕の松平信祝の悪だくみまで明かすことができ、ほっと一息。おまけに正醇は、道中知り合った飯盛女のお咲と恋に落ち、彼女を城に迎え入れることも叶って、何もかもめでたしめでたし……のはずだったのが⁉

のんびりと江戸を出立し、帰国の途に就いた一行でしたが、そこに湯長谷藩で一揆が起きたとの知らせ! 2日以内に城に戻らねば、藩のお取りつぶしは免れない。かくして行きの2倍の速度で走らねばならなくなった一行。

呑まず!

食わず!

眠らず!

休まず!

止まらず!

(おまけに行きで持ち金を使い果たしていたので、一文無し!)

しかし、ようやく藩にたどり着いたとき……。

と、ここまではまだ序の口で、今回は前作よりも過激な設定が多々用意されており、演じる側も前作でそれぞれのキャラクターの個性を使見えているので、実にハイ・テンションな言動の数々で湯長谷藩お取りつぶしの危機に対処していきます。

正直、今回の企画を聞いたときは「そんな無茶な⁉」と思ったものですが、よくぞ考え着いたり、さまざまなアイデアが前作以上の躍動感を伴い、前作以上に疾走していきます。

また、前作は奇抜な設定ながらも意外と真面目なテイストが全体を覆っていたのですが、今回はスラップスティックな笑いもふんだん、ゾンビもどきも登場⁉ さらには時代劇ならではの殺陣の見せ場も、何とクライマックスでは湯長谷藩7人VS幕府軍1000人という壮絶なシーンが用意されています。

つまり前作以上の奇想天外な設定の下、笑いもスピードもアクションもパワーアップ、これぞ続編映画の誉れたる快作に仕上がっているのです!

おそらくは無茶ぶりであったろう続編企画、しかしながらそれは湯長谷藩の面々にふりかかる数々の困難とも巧みにシンクロしながら、結果として映画全体の活気を得ることにも成功しているような気がしてなりません。

そもそもカツドウヤとは、こういった逆境(?)に強く、どんな題材でも自分たちの色をつけながら果敢に作品を発表し続けるという、技術と伝統と心意気を持った映画人のことをいうのです。

超高速!参勤交代 リターンズ

(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会

松竹伝統の大船調を受け継ぎ、
担い続ける俊英監督たち

本作の本木克英監督についてもご紹介しておきましょう。

1963年生まれの彼は、87年に助監督として松竹に入社。木下惠介、森﨑東、勅使河原宏ら名匠たちの作品に就いて演出を学んでいます。

98年に喜劇『てなもんや商社』で監督デビューし、第18回藤本賞新人賞を受賞。その後も、松竹のお家芸ともいえる『釣りバカ日誌』シリーズ11~13(00~02)で松竹大船調の伝統演出を披露。

さらに、師・木下惠介監督の実験精神を受け継いだ彼は、CGを駆使した『ゲゲゲの鬼太郎』2部作(07・08)や、京都の“鬼”たちを駒に展開される大学生たちのバトルゲームを描いたスラップスティック・コメディ『鴨川ホルモー』(09)、人工衛星はやぶさの帰還をモチーフにした3D映画『おかえり、はやぶさ』(12)など実験精神あふれる作品に挑戦し続けています。

もともと松竹は初のトーキー映画、初のカラー映画を製作してきた実績のある、実験精神旺盛な映画会社であり、実は彼のスタンスそのものが松竹の伝統を巧みに受け継いでいるといえるでしょう。

『超高速!参勤交代』も『超高速!参勤交代リターンズ』も、スラップスティックなアイデアを最大限に活用しながら、笑いと躍動感に満ちた松竹映画ならではの老若男女が楽しめるエンタテインメント二部作として屹立しています。

もうひとり、本木監督と同じ87年に松竹に入社して助監督として山田洋次監督作品に多く就き、監督昇進後は『釣りバカ日誌』シリーズ14~20(03~09)や『武士の献立』(13)『愛を積むひと』(15)、そして今年11月3日からは『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』が公開される朝原雄三監督がいます。

本木監督と朝原監督の両者は、今はなき松竹大船撮影所で育ち、巣立った最後の世代の監督たちでもあり、その伝統を受け継ぎながら現代に見合った作品を送り出している貴重な人材でもあります。

両者の作風ですが、どちらかというと本木監督作品はドタバタも含めた快活なタッチのものが多く、朝原監督作品はしっとりとした仕上がりのものが多いといった特徴もあります。その互いのバランスの良さも、見る側としては実に気持ちいいものがあります。

今や映画会社の社風の別が見えづらくなってきている日本映画の中、松竹は大ベテラン山田洋次監督や、このふたりの俊英によって今なお松竹カラーを堅持しているといっても過言ではないでしょう。

そんな得難い才能のふたりを、これからも応援していっていただけると幸いです。

まずは『超高速!参勤交代リターンズ』と『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』を、映画館で見ましょう!

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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