「SCOOP!」吉田羊の振る舞いは、男たちの「叱られたい」願望を刺激してやまない。

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(C)2016「SCOOP!」製作委員会

「盗写 1/250秒」にぞっこん惚れ込んだ、大根(元)少年。

先輩 「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督の新作「SCOOP!」。もう見たかい?
(公開は10月1日より)

後輩 見ました。これってリメイクなんですね。

先輩 そうそう。原田眞人監督の「盗写 1/250秒」のね。1985年製作。もともとテレフィーチャーなんだよ、これ。当時の日テレはテレフィーチャーに力を入れていて、大森一樹監督の「法医学教室の午後」とか、けっこうクォリティ高い作品を「水曜ロードショー」枠でオンエアしてたんだよ、この時期。

後輩 先輩は、オンエアの時に見たんですか?「盗写 1/250秒」。

先輩 見た見た。ただ、あまり明確に覚えてないんだよなあ。原田芳雄と宇崎竜童が出ていて、カメラマンのアシスタントが斉藤慶子だったかな。当時は「フォーカス」「フライデー」が元気な時代で、そういう雑誌が市民権を得た時代だったのさ。

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(C)2016「SCOOP!」製作委員会

「主要登場人物5人すべてに、主役級の見せ場がある」。

後輩 で、その「盗写 1/250秒」にぞっこん惚れ込んだ大根仁監督が、念願かなってリメイクを実現というわけなんですが、大根監督ってうまいなあ!!と思ったのは、主要登場人物が5人いるんですが、その誰に対しても愛情を注いでいる。誰ひとり欠けても、このストーリーは成立しない。5人のすべてに見せ場があるんですよ。

先輩 そうそうそう!! このバランス感覚って凄いよね。例えば吉田羊と出世を争う滝藤賢一の副編集長がいるんだけど、彼は単なるイヤなヤツじゃなくて、実は若い頃、福山雅治扮するフリーカメラマン・静と無茶をした間柄・・ということが途中で分かるんだけど、そこからの滝藤の活躍ぶりが凄い!!

後輩 さすがは「テラフォーマーズ」で、口から火を吐いて火星にタンクを走らせた人なだけはあります(笑)。

先輩 かっこいいと言えば、吉田羊だよね。

後輩 そう!!!世間一般が「吉田羊って、こういうキャラだろう」という、誤解も含めて思っていることを、すべて表現して見せています。

先輩 仕事が出来て、強気で、美人なのに男っぽかったり、それでいて部下にさりげなく気を使ったりと。もう「ジス・イズ・吉田羊」。

後輩 知り合いが、秋からの東宝作品の予告編を見たら、そのすべてに吉田羊が出ていたそうです(笑)。

先輩 オレだって「シン・ゴジラ」の出演者のリストを見た時「吉田羊とリリー・フランキーが出ていない!! 今の日本映画でそんなことがあるのかっ!?」と思ったさ(笑)。

後輩 なんというか、吉田羊さんって、男の・・特に成人男性が持っている「叱られたい」願望を刺激しますよね。

先輩 あ、それ、気づいた?実はオレも・・・。

後輩 「SCOOP!」での羊さんは、いつも髪の毛をまとめたポニーテールで仕事バリバリやってるんですが、実はワンシーンだけ髪の毛を降ろすシーンがあって、それは福山のフリーカメラマンと・・・。

先輩 待てい。その先は言うでない。世のヒツジストたちの楽しみを奪うぞ。

後輩 いや、とにかくそのシーンの美しさが・・・♡♡

先輩 お前、本当に好きだな。年上で仕事ができそーで、ちょっと威圧的なおねいさんが。

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(C)2016「SCOOP!」製作委員会

「二階堂ふみは、今回エロさ封印」

後輩 「SCOOP!」には先輩ごひいきの、二階堂ふみちゃんが出ているじゃないですか。今回もメロメロなんでしょう(笑)?

先輩 いや、この映画のふみちゃんは違う(毅然と)。これまで、たぶん本人は無自覚だろうけどエロい台詞言ったり、谷間やら脚やら見せたりしていたけれど、今回はもうエロさ封印。劇中の衣裳も、ズボン姿が多いことに気づいたかな?

後輩 バンツ・ルックと言ってくださいよ、せめて(笑)。彼女は中年カメラマンやらベテラン編集者やらに囲まれて、写真雑誌の記者として成長していく役ですが、なんというか周囲にいるおじさん、おばさんたちは、何かにつけて「昔は良かった」と口走りますよね。

先輩 「あなたたちは、なんで何かにつけて野球に例えるんですか!?」と、ふみちゃんが福山に指摘するくだりは、確かにそうだな(笑)。

後輩 先輩みたいに高度経済成長とバブルを経験した人たちは、何かにつけて「昔は良かった」と言いますけれど、僕たちの世代はそうじゃないんですよ。

先輩 ・・・また始まりやがった・・・。

後輩 いいですか? 僕らはバブルが弾けてから生まれたんですよ。だから先輩たちが「昔は良かった」と言われても、何ら実感がない。

先輩 あのなあ、誰もがバブルの時代に豪遊したり、うはうは金が儲かったと思うなよ! かくいうオレだって、バブルの時代に良いことなんて、ひとつもなかったさ。

後輩 その頃、先輩は・・・。

先輩 ひたすら働いてたさ。会社員だったからな。だから「SCOOP!」の登場人物たちが、昔のことを回顧して悦に入るのは、その死ぬほど働いた忙しさの中で、わずかにあった良い記憶、楽しかった思い出にすぎないと思うよ、オレは。フリーカメラマンの静だって、吉田羊の定子副編集長やリリー・フランキー演じる謎の情報屋・チャラ源にしたって、そのわずかな楽しかった記憶で今を支えている。人を支えているのは、いつだって過去なんだよ。過去の成功体験や楽しかった記憶に違いない。未来のことなんて、誰も分からないわけだしな。

後輩 でも「SCOOP!」に出てくる人たちは、過去を懐かしむばかりじゃないですか!? おじさん、おばさんの懐古趣味につき合わされるのは、迷惑ってもんですよ。

先輩 「SCOOP!」の静や定子は、決して過去の成功に溺れているだけじゃなくて、現在雑誌の発行部数が減少するという問題に直面している。そしてそれに対抗するためにあらゆる手段を高じて、見事成功するじゃないか。その成功を見ていた二階堂ふみの新人記者は、何か大切なものを学んでいく。例え世間がバブルで浮き足立っていても、ひたすら芸能人のスキャンダルや政治家の汚職、有名人の不倫の写真を撮り、それを1週間しか売られることのない雑誌に掲載すべく、日夜頑張った人たちの話だという解釈も出来るぞ、この映画は。

後輩 「モテキ」にナタリーを登場させたり、「バクマン。」は少年ジャンプの話ですし、大根監督の作品はメディアの世界で生きる人たちに注目し、肯定する姿勢で描いていますね。

先輩 それは、監督自身がテレビ出身だからということもあるかもしれないな。人の目に触れる価値があるものを創作する。でもウェブ・メディアも漫画週刊誌も、写真週刊誌もテレビ番組も、時が来たらなくなってしまうし、人の記憶からも消去されてしまう。だからこそ、ちゃんとしたモノを作らなくちゃいけない。人は記憶によって支えられているんだからな。

後輩 映画もそうなんでしょうか?

先輩 今みたいにたくさんの映画が毎週公開されて、それらが消費されるように市場から消えていく。でも、例え1週間で上映が打ち切られた作品であっても、それを見た人の記憶に残るんだったら、作り手としてそれは幸福なんじゃないかな。

(文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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