角川映画“映像”のレジェンド!仙元誠三キャメラマン トークショー

7月30日より角川シネマ新宿ほか全国順次公開中の、角川映画40年の歴史の中から昭和の時代に放たれた48本の作品を上映する角川映画祭では、各作品の関係者などによるトークショーも催され、盛況を博しています……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.153

その中から、角川映画の多数の撮影を担当された伝説的キャメラマン仙元誠三氏のトークショーの模様をお届けしたいと思います!

仙元誠三氏

映像のレジェンド
その経歴

仙元誠三氏は1938年7月23日、京都府の生まれ。58年に松竹に入社し、松竹京都撮影所で撮影助手を務め、67年よりフリー。69年に大島渚監督『新宿泥棒日記』で撮影監督としてデビューを果たしました。

彼の名を一躍知らしめたのは、村川透監督&松田優作主演のアクション映画『最も危険な遊戯』(78)に始まる遊戯シリーズで、ここで独自のブルートーンの長廻し撮影を披露。

これが認められ、角川春樹プロデュースの村川監督『白昼の死角』(79)の撮影を担当し、これを機に村川&松田コンビの角川映画『蘇える金狼』(79)『野獣死すべし』(80)で映画ファンの支持を不動のものにし、その後も「セーラー服と機関銃」(81)『汚れた英雄』(82)『探偵物語』(83)『里見八犬伝』(83)『愛情物語』(84)『Wの悲劇』(84)『早春物語』(85)『キャバレー』(86)『恋人たちの時刻』(87)と、昭和の角川映画を代表する名作群の撮影を多数担当しました。

その他の作品群では『ヨコハマBJブルース』(81)『野獣刑事(デカ)』(82)『ア・ホーマンス』(86)『キッチン』(89)『福沢諭吉』(91)『あぶない刑事(デカ)リターンズ』(96)『共犯者』(99)『まだまだあぶない刑事(デカ)』(05)『笑う警官』(09)など多数。

今年も『さらばあぶない刑事(デカ)』の撮影を担当されています。

野獣死すべし (C)KADOKAWA1980
『野獣死すべし』©KADOKAWA1980

レース・シーンで
400000フィート回した『汚れた英雄』

8月6日午後、『汚れた英雄』上映前に、元キネマ旬報編集長・植草信和氏の司会で仙元誠三氏のトークショーが開催されました。

多くの観客を前にして、さすがのレジェンドも最初は緊張気味。ハンカチで汗をふきふき、また照明がまぶしすぎたようで、光量を落としてもらい、ようやく一息つかれてのトークのはじまりです。

『汚れた英雄』の見せ場は、何といっても全体の3分の1以上を占める日本映画史上類を見ないバイク・レース・シーンです。

「40万フィートくらいは回したでしょうか。そこから編集で4万フィートまで切って、さらに縮めています。レース・シーンに関してはキャメラを10台同時に回していますが、今は北野武監督作品の撮影監督でおなじみ柳島克己君がそのセッティングやチェックを担当し、自身も回しています。実は昨日彼と飲んで、当時は大変だったと彼が言うので『大変なことやってきたから、今、武さんのキャメラやれてんだろ!』と(笑)。

確かに撮影は危険ではありましたけど、ある程度はプロのレーサーから、どこのポイントが危ないとかいろいろ話を聞きながら作戦を練りましたし、特に工夫もしていない(笑)。ただ単に映画が好きで、こういう映画を俺が撮ってやる! という意気込みのある若いキャメラマンを集めてくれといっただけで、その通り情熱のある連中がいっぱい集まってくれた。ただそれだけのことです。そして今、柳島君も含めて、そのときの連中の多くが日本映画界の撮影を担っています」

主演・草刈正雄も非常にスタイリッシュに美しく捉えられています。

「私が美しく撮ったのではなく、もともと草刈正雄が日本人離れしていて、シャイで美しいのです(笑)。また角川春樹監督も表向きは照れ屋で、SEXシーンを撮るのも恥ずかしそうでしたので、窓越しに撮ったりしています。お客さんによってはもっとはっきり見せろという人もいらっしゃるかもしれませんが、それは勘弁してください(笑)」

現場での草刈正雄は監督からNGを出されまくっていたという伝説もありますが?

「撮影中、連絡用にスクーターを4台借りていて、監督がそれに乗って助監督の菅原比呂志(現・浩志)と遊びながら競走してたら転倒してしまい、あわや大事故になるところだったのですが、そのことに草刈はまったく気づいてなかったもので、その後現場でえらく監督から駄目出しされるようになってましたね(笑)」

早春物語 (C)KADOKAWA1985

『早春物語』©KADOKAWA1985

60年間、自分の感性だけを頼りに
映画をやってきた

『セーラー服と機関銃』『探偵物語』『Wの悲劇』と、薬師丸ひろ子主演映画も多く手掛けています。

「『セーラー服と機関銃』のときは、現場で相米慎二監督から薬師丸ひろ子が何度も怒られてはいましたが、実は最初から人間的に理解し合えていたように私たちには思えて、むしろ嫉妬してしまうくらいでした。

『Wの悲劇』は三田佳子さんの演技の力と、彼女の力を介して薬師丸ひろ子を演出された澤井信一郎監督の力ですね。

ひろ子で覚えているのは、朝でも夜でも『おはようございます』というのが映画業界の挨拶ですが、彼女はそういうのは嫌で、一般の人と同じように、朝は『おはようございます』、昼は『こんにちは』、そして夜は『こんばんは』と、普通に言いたいと。芯が強い子だなと思いましたし、これには私らも見習わなければいけないなと思いましたね。

対して原田知世の『早春物語』は、短編小説を読んでいるかのような澤井監督の傑作であったと思います。鎌倉ロケも有名な場所ではなく、ひっそりした場所を探し当てられたのも作品的に成功であったのではないかと」

松田優作に関してはいかがでしょう。

「優作に関しては、話し始めると本当に長くなってしまいますが、彼は日本の俳優さんの中でも素晴らしい、突出した野性人間でした。人間的に頭も切れるのですが、とにかく行動が敏感で、まるで野生動物みたいでしたね」

トークショーの間中、幾度も「私は何もやっていません」を繰り返すレジェンドではあります。

「60年間、私はただただ楽に映画をやってきました。本当に情けない話ですが、撮影設計などは何も考えず、ただ自分の感性だけを頼りにやってきましたので、監督さんは違うと思っているのでしょうけど、私はすぐにカッカと怒り狂ってばかりいるので、まあ仕方ないかと収まってきたのではないでしょうか」

今まで映画をやってきて、大変だと思ったことは一度もないと断言。

「仕事が大きければ大きいほどやりがいはありますが、私は自分が参加させていただいた作品はすべて世界で一番だと自負しております。私をキャメラマンに選んでくれたみなさん、『まあ、仙元でもいいや』と我慢して選んでくださったのだと思いますが、本当に感謝しております」

現在、78歳で、普段は山形に在住とのこと。

「今日はいつでもここから飛び出して、すぐに山形に帰れるように、リュック持参でやってきました(笑)。でも、撮影の仕事のお声がかかれば、いつ、どこでも馳せ参じる所存です。ただ、大ちゃん(木村大作)のように自分で監督しようという意志は毛頭ございません。監督業がいかに大変であるかはよく知っていますし、私がやったら3日も現場は持たないでしょうね。大ちゃんは積極的ですから。それに比べて私は消極的で、ダメ男で、そのくせ助手さんたちを怒り飛ばす。でも、それでもみんな私についてきて、助けてくれるから、この業界が大好きです(笑)」

角川映画祭は東京では9月2日まで上映。地方も順次公開予定です。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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