実は長谷川博己版「課長島耕作」な「シン・ゴジラ」!矢口蘭堂に皆が燃えた理由とは?

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公開から2週間以上が過ぎても、未だにその熱狂が冷めそうにない、「シン・ゴジラ」!

賛否両論か、酷評だろうとの前評判を見事に覆し、大ヒットと賞賛の声が続く本作だけに、連日ネットに飛び交う絶賛の声を皆さん良くご存知かと思う。
しかし一方では、未だに不安がって観に行ってない方が多いのも事実。

そんな方たちのために、ここに断言しよう、「シン・ゴジラ」は、毎週いや毎日でも通いたいほどの傑作だった!

特撮マニア、エヴァンゲリオンに詳しい人でなくても、単体の映画として非常に良く出来ていて楽しめるし、それでいてちゃんと「ゴジラ映画」になっている!という、まさに「神対応」的映画になっているので、未見の方、ちょっとまだ観に行く決心がつかない方も、今すぐ観にいって大丈夫!

ちなみに、自分が鑑賞したのは公開二日目の朝8時半の回。劇場はやはりここしかない、TOHOシネマ新宿のIMAXスクリーン!劇場到着は朝の8時、にも関わらずその日の4DX上映チケットは、この時点で全上映回が完売!IMAXでの上映も、夕方までの回は完売という大ヒット状態にまず驚いた!満員の場内は、これからスクリーンに映し出される映像への期待と不安で、一種独特の連帯感が漂っていた。場内が暗くなり、予告編に続いて遂に我々の前に姿を現したゴジラ!果たしてその内容とは?

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ストーリー

ある日突然、東京湾で起きた巨大な水蒸気爆発。続出する被害への対応に追われる日本政府。その中に中内閣官房副長官を務める矢口蘭堂がいた。突如として東京湾から出現した巨大な生物「ゴジラ」は、遂に日本に上陸!目的も正体も分からないその生物ゴジラに翻弄される日本。そんな中、矢口を中心とする対策チームは、ゴジラに対抗するある方法を発見、最後の賭けとなる、ある作戦の実行に動き出す。しかし、友好国であるはずのアメリカは、核を使い日本の都市もろとも破壊しようと考えていた。果たして、矢口たち対策チームはゴジラを倒し、日本を核の危機から救うことが出来るのだろうか?

しかし、これほどまでに「シン・ゴジラ」が観客から支持される理由は何か?この映画は何故、これほどに観客の心を掴んで離さないのだろうか?
特撮部分の出来や各キャラクターの魅力は言うに及ばず、更には過去作の様に、正面から戦って倒すのではなく、日本人特有の「根回し」も駆使して、頭脳と作戦で勝つ!そのチーム感に燃えるとの声も多数上がっているように、観客によって微妙にその鑑賞ポイントは違っているようだ。

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本作が何故これほど我々を魅了するのか、冒頭部分を例に考えてみた。

映画が始まって圧倒されるのが、その会話スピードの速さと、余りに多い情報量だ。

まず冒頭で徹底して描かれるのは、日本政府首脳の俗物さと優柔不断さ!

中でも一番顕著なのは、政府側の初動の判断ミスや、決定時の優柔不断さが、結局後の事態を悪化させるという点だろう。

状況説明や報告のため、専門用語や難しい単語が早口で飛び交うのだが、意外とここはテンポに乗って理解し易く作られている。そこから後は、政府首脳や対策本部の面々と同様に、観客も乏しい情報の中で次第に明らかになるゴジラの全容に驚き、人間対ゴジラの頭脳戦に自分も参加する臨場感が存分に味わえる。

こうして序盤で政府閣僚の「役に立たない様子」を描き続けたあとで、長谷川博紀演じる矢口蘭堂が中心となる、「ゴジラ対策チーム」の有能さと抜群のチームワークを描くことで、もはや既存のシステムでは対応出来ない程、事態が深刻で急を要することを観客に理解させる。

この部分、説明ゼリフが多くて冗長になりがちなところを、登場人物のキャラが見事に立っているおかげで、「このキャラなら、こう行動するよな」、と観客に納得させてくれて、非常に上手い!と思った。観ているうちに、いつの間にかこのチームに感情移入出来ていて、自然と登場人物に興味が湧くからだ。

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細かい描写も手を抜かない「シン・ゴジラ」!決め手は「臭い」?

実は今回注目したのが、ゴジラの体液が頭から降り注ぐシーンでの異臭感に始まり、現場からの「腐敗臭」の報告など、ともすれば忘れられがちな「臭い」に対する描写がちゃんと入っている点だった。

特に重要なのは、矢口が何日も着替えずにいたワイシャツの臭いを部下から指摘されるシーン!通常の映画では、画面に映りにくいため意外と忘れられがちな、これらの「臭い」の描写が織り込まれていることで、一切その背景が説明されない矢口蘭堂に、人間的魅力と親しみを与えるからだ。と同時に、能力中心の寄せ集めチームだった彼らの関係性がより親密になっていることまでも、観客に理解させる効果もある。こうした細かい描写にも手を抜かずに作り上げた点が、観客への満足度として現れているのだろう。

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実は長谷川博己版の課長島耕作だった?矢口蘭堂、その出世物語!

実は今回の「シン・ゴジラ」、個人的に長谷川博己演じる矢口蘭堂の出世物語として、楽しみながら鑑賞させてもらった。

最初は自分よりも偉い官僚や、上司たちへの不満を抱えていた彼が、深刻化する事態の打開のために対策チームの責任者となり、遂には殉職した政府首脳陣の変わりに日本国家の存亡を賭けた戦いの先頭に立つことになる。

ちなみに、内閣官房副長官→巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)事務局長→巨大不明生物統合災害対策本部副本部長を経て、特命担当大臣へと短期間で大出世を遂げるその有能さと強運っぷり!これこそ、まさにサラリーマンにとっての理想の出世物語であり、「課長矢口蘭堂」とでもいったところだろうか(これはあくまでも、個人の見解です。念のため)。

映画の後半、遂に矢口蘭堂が夜の町に上陸したゴジラを自分の眼で目撃し、「あれがゴジラか」とつぶやくシーンがあるが、ここで彼は自ら最前線に立つことを選ぶ。
今まで、被害の現場から遠く離れた安全圏で、限られた伝聞の情報を元に行動していた彼は、その絶対的な破壊力を目撃し、遂に自分の身辺にリアルな被害が及んだ時、自分の今よりもこの国の未来を守るべく、ヒロイックな行動を取り始める。

本来実質上の責任者である矢口蘭堂が、あれほど作戦の最前線に赴く必要はなく、(過去作のように自身が科学者だったりGフォース隊員であるなら話は別だが)、放射能の危機にさらされながら、それでも対ゴジラ作戦の最後を見届けるに至った、彼の心境の変化とは何だろう?

我々が眼にした実際の災害でも、名もなき一般の人々が最前線で作業に当たられていたことを考えれば、防護服を着て周りの皆と同化した矢口蘭堂が、現場を目視出来る距離で最後まで指揮を執り続ける姿、その意味がきっと見えてくるはずだ。

「3.11」の様に実際の震災や災害を経験した今、矢口蘭堂のような政治家がいてくれたら、あるいは実際に災害時にも彼の様に現場で不眠不休で事態の収拾に当たっていた人々がいたのだということを、このシーンは我々に思い起こさせてくれる。

誰もがその場から逃げ出したい、そう思わずにはいられない危機的状況の中でも、なお自分のためでなく国の未来や他人のために行動する彼らを見ることで、われわれ観客の感情は激しく揺さぶられることになる。今回多くの観客がこの映画に熱狂している理由とは、実はそこにこそあるのではないか?

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最後に

今回のゴジラは、善か悪かという単純な存在や、単なる破壊者ではなく、「絶対に越えねばならない人類共通の巨大な壁」=一種の門番として登場するが、これは実際の自然災害や原発事故に置き換えることも可能だ。

だから今回人類が達成するのも、ゴジラを殺す・退治するのではなく、あくまでも一時的な活動停止でしかない。これは「3.11」以降の体験を考えれば無理もない話であり、今回の「シン・ゴジラ」こそ、未だに危険な存在であり続ける原発汚染のメタファーだと言える。

ただ、ゴジラの移動跡に残された放射能は早く消え去るとの描写もあるため、今回のゴジラの登場と被害から、現在日本が抱える原発の放射能汚染問題に光明が見えるのでは?との可能性を残しているのは印象的だった。本作中、全く理解不可能で異質な存在でしかなかったゴジラに、大自然の大いなる意思、あるいは地球環境の自浄作用などの意味が見出せるようにもなっていたからだ。

もう一つ、現実の「3.11」を想像させるような危機的状況の中、自分の今を未来の日本のために捧げようとする矢口と、彼と一緒に最前線で危険な任務に当たる名も無き作業員たち。そこに我々観客が強く共感・感情移入出来る点も、今回の絶賛の理由だと考える。

過去作のように、逃げ惑う一般市民・被害者の視点からの描写がないとの批判もあるが、ゴジラに立ち向かう人々の姿を描く今回の設定のお陰で、観客も最後の作戦に参加したような気分で感情移入出来るのも確かだ。

このように、観客それぞれが自分の見たいゴジラ映画を見た!と感じられるように出来ている点が、本作が幅広い層に受け入れられた理由だと言えるだろう。
言わば、究極の観客参加型映画とも言える、「シン・ゴジラ」。

まだ観ていない方は、是非劇場で観客一体となって楽しんで頂きたい。

(文:滝口アキラ)

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    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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