築地市場には魚への愛と尊敬がある!『築地ワンダーランド』舞台挨拶

10月1日、『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』築地・東劇での先行上映がスタート。初日舞台挨拶に、山本益博さん(料理評論家)、奥田透さん(料理人・銀座小十)、亀谷直秀さん(仲卸)、島津修さん(仲卸)、遠藤尚太郎監督が登壇しました。

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「こんなにもお魚に尊敬をこめている国は他にない」

『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』は、築地市場を記録したドキュメンタリー。撮影期間1年4カ月、築地で働く人たち、料理人、文化人など総勢150人へのインタビューを敢行、長年日本の食文化を支えてきた世界で唯一無二の“ワンダーランド”の知られざる舞台裏にせまっています。

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単に市場を映した記録ではな、くほかに類のないマーケット“築地”を生み出し、働いている人たちの姿を伝えたかったという遠藤監督。“旬”や季節感など、日本の文化の根本にある概念を築地を通して描くため、企画の段階から最低でも1年は撮影をと想定していたそうです。前例のない壮大なプロジェクトで、交渉を進めて撮り始めた当初は手探り状態。「人と話しながら、お邪魔させていただき、カメラを向けるというよりは、その人が働く風景を見させていただく」ところからだったと当時を振り返りました。

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この初日の朝も築地へ行ってきたという山本さんは、映画について、「お魚図鑑みたいなものが見られるかなと思うと、ちょっとはずされます。働く人たちのお魚に対するリスペクトがなんとも素晴らしい。こんなにもお魚に尊敬をこめている国はほかにない」とコメント。料理人の奥田さんも「魚を大事にする根本的な考え方は、我々が受け継いでいる文化、風習で、まず漁師さんがていねいに釣り上げる、もしくは網でとってもきちんと魚を処理してくれる。車で運んでくる方たちも、氷の詰め方、運び方から、まったくもってすきがなく、そして、築地に入ってくるわけですが、ここからいろいろな方たちの一匹一匹の魚に対する敬意、愛情で、商売としての商品ではなく、大事なものを譲り受けて渡す感じですね」と話しました。

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1年以上の撮影を通して「築地の一員に」遠藤監督

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魚を大切に扱うプロフェッショナルたちが働く築地市場。そこに映画の撮影が1年間入るというのはどうだったのか?という質問に、仲卸として働く島津さんは「思いは伝わってきたんですが、まあ最初は邪魔で(笑)」と冗談交じりに話し、同じく仲卸の亀谷さんは、「最初に話があったとき、1年間もカメラが入ることにかなり議論があったけれど、監督の人柄で、途中からは仲卸の一員みたいになっていましたね。撮りに行っても、みなさん快く協力してくれたと思う」と振り返りました。

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これに対し、遠藤監督も「『お邪魔させていただいている』というのは今も変わらないんですが、ただ、撮影にずっと通っているうちにその意識はなくなっていき、自分も築地の一部になれたような不思議な高揚感があった」と語り、年末くらいになると、市場の警備員さんからも「今日もご苦労様です」と声をかけてもらっていたことを明かしました。島津さんいわく、それは本来「ありえないし、今後もたぶんないこと」なのだそう。「気を許した僕らがいっぱい映っている」(島津さん)「見ていただくとわかると思うけれど、本当にいい絵が撮れていると思う」(亀谷さん)とも語っていた仲卸のお二人。監督と市場で働く方々の間にきちんと関係が築かれていったことが伺えました。

パリでも“築地”スタイルを実践!活け締めの講習会を開催

先だってスペインのサン・セバスチャン国際映画祭に招待されるなど、海外へも続々出品されている本作。遠藤監督は「どこまで伝わるか不安もあったけれど、文化や思い、未来は本当にノンバーバルな要素で、言語を超越できる。映像だけでも伝わるものがあり、みなさん『僕らの食文化と根底にあるものは一緒だね』とおっしゃってくださった」と手ごたえを語りました。

海外の話題が出たところで、フランスのパリで魚屋さんをやっているとという奥田さんにもお話を聞くことに。

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月に1週間はパリにいくという奥田さんですが、フランスの魚屋事情について「港まで行くとあがっている魚はそんなに悪くはないし、日本と同じ魚もたくさんある。ただ、肉食文化で歴史が動いているので、魚に対しての価値観がついていない。なので、扱いが少しぞんざいになってしまっている。これがもったいないと思った」ことから、活きた魚をパリまで運び、水槽をたくさん設けてお客さんが来る目の前で活き締めをする、築地ではごく当たり前のスタイルを実践しているのだそうです。

さらに、現地でシェフやジャーナリストたちに向けて活け締めの講習会も開いているという奥田さん。日本人はただ生の魚を食べているわけではなく、「生の魚にも段階がある」ということを伝えるべく、締めた時間が異なる魚を食べ比べたり、お寿司にするとどうなるのか、焼くとどうなるのか…といったことを教え、それに現地の人たちも夢中になっているとか。「日本的なやり方、考え方が一歩は進んでいるんじゃないかなと思っています」と手ごたえを感じていることを話してくれました。

短い時間で、築地市場、魚、食文化にまつわる話が盛りだくさんだったトークイベント。最後、上映を前に登壇者の思い思いのメッセージで締めくくられました。

「とにかく映像がきれいなので、それだけでも楽しめると思います」(島津さん)

「いろいろな料理人さんが築地に対する思いを熱く語っているので、それをずっと聞いていることで、心地いい時間かなと思います。(奥田さん)

「外国の方をたくさん築地にご案内していますが、日本の方、東京の方が一番行っていない。行かれたことのない方はぜひ築地に行くのと口コミで『映画を見ましょう』とお薦めください」(山本さん)

「これを見て、毎食毎食、食事は楽しいんだということが思っていただけたら」(亀谷さん)

「この映画は、日本の食文化の豊かさを再確認し、そこで果たしてきた築地の役割を描いた作品。大きく時代が変わろうとしている中で、一番求められているのは、今の食文化をどう育んで次の世代に伝えていくか。それを考えるタイミグに来ていると感じるので、ぜひ見て広めていただけたらと思います」(遠藤監督)

すでにアジアで公開されている国もあり、タイでドキュメンタリー映画として興行収入歴代1位に輝いた映画『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』。10月1日(土)から東劇(築地)にて先行上映、10月15日(土)から全国ロードショー予定です。

(取材・文:田下愛)

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    田下愛

    フリーランス・ライター。雑誌、書籍、Webメディアで、幅広いジャンルの仕事をこなして活動中。ファンタジー映画が大好物で、『オズの魔法使い』『ナルニア国物語』『アリス・イン・ワンダーランド』など、魔法やおとぎの国を扱った作品にはすぐ飛びついてしまいますが、一方、『レインマン』のような人間をきっちり描いたドラマも好き。石ノ森章太郎先生をリスペクトする昭和特撮フリークでもあります。

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