「おむすび」翔也、熱血スポ根魂復活【107回】

続・朝ドライフ

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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第107回を紐解いていく。

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結、コンビニとお弁当を共同開発

菜摘(田畑志真)結(橋本環奈)のアドバイスを受けてコンビニで売る高齢者用のお弁当を社内でプレゼンしたところ、病院の管理栄養士との共同開発にしてはどうかと部長にされました。そこで菜摘は結に相談。結は上司の塚本(濱田マリ)に相談すると「いいよ」「なんか楽しそうやん」とあっさりOK。

まずは顔合わせとミーティング。でも豊岡部長(隈本晃俊)はあからさまに結を無視して、塚原に任せたいムードを出します。こういうのお仕事あるあるですが、あまりにも極端です。「おむすび」って時々、極端にいやな人を出してきます。

部長は、社内の管理栄養士・土屋(森優作)も連れてきて、意見を言わせます。土屋は栄養学的にはいいが、見た目が地味と意見を言います。すると、部長はぐいっと身を乗り出してきます。つまり、この企画が若い子の提案だったら、やる気がしないが、あからさまに反対できないから、土屋を間にかませているのです。ストレートないやなやつよりさらにいやなやつ。演じているのが「ブギウギ」でやさしい大家さんだった隈本さんですが、今回は、なんかいやな役です。役者だから、善人も悪人もみごとに演じるのは仕事とはいえ、さみしい。からだが大きくて、結たちの前に立ちはだかる壁感がすごい。

いったん社内で揉むと、このまま終わりにさせられそうなのを感じ取った結は、わざと明るくふるまい、ご指摘の点をふまえて再度考えてみると言い、塚本も最終的に責任は私がもつとフォロー。さっそく菜摘と再度、お弁当を考えます。あとで、結が菜摘と語るのですが、ギャルだから偏見には慣れているそうで、そんなことにはへこたれないようです。

たくさん、コンビニ弁当を買ってきて、研究。そのあと、居酒屋きよしでまたご飯食べていたけれど、あのお弁当、どうしたのでしょう。食品ロス的には、研究で食べたあと、翔也(佐野勇斗)花(宮崎莉里沙)と4人で夕飯代わりにするのが妥当ではないかと思うのですが……。

そのあと、結と菜摘がまた深い話をするための場が必要で、現実だったら、お茶か何か、あるいは飲むだけみたいなことになるのでしょうけれど。まあ、きよしで飲んでるだけかもしれませんが。たぶん、これできよしの出番も終わりではないでしょうか。女将と調理人にセリフがあったので。なぜか、裏側ばかり脳内補完してしまう。なぜでしょう。

ただ、いいなと思うところもあります。花がサッカーの代表に決まったら、翔也は熱血スポーツ魂が復活して、花のフィジカルトレーナーのようになっています。翔也の栃木弁「だいじだ」(大丈夫)が花にも移っています。花は父母の方言のどちらにも影響されていなかったのに、父の栃木弁を使うようになるほど父と密接になっているのです。いい感じです。翔也の夢が子どもに託されたのです。

結と菜摘ははりきって、見た目もきれいなお弁当を試作します。でも、結果的にペンディング。

菜摘はきよしに土屋を呼び出し、本音を聞き出そうとします。ここで土屋が語った、作業工程を考えたら実現は難しいということは「あさイチ」で博多大吉さんが「正論」と言ってましたが、そのとおり。土屋さんはちゃんとした人でした。そして、お弁当には、あのなつかしきスイスチャードが入っていたことが土屋のセリフでわかります。スイスチャード、筆者の近所ではいっこうに見かけないです……。

土屋の話を聞いて、朝ドラもコンビニの高齢者用弁当を作っているようなものなのかもしれないと思った朝ドラファンも多いのではないでしょうか。手の込んだお弁当もたまにあるけれど、それはたくさんの人の工程が余分に入っていて、予算や時間を逼迫させてしまう。決められた予算や時間や働く人の数でなんとかするのがコンビニ弁当。じつに示唆的な話でありました。

さて、今日は、菜摘役の田畑志真さんのコメントをご紹介しましょう。


演じる役・佐久間菜摘について

最初は商店街チームの掛け合いがどうなるんだろうという不安があったんですが、撮影に入ってみると本当に昔からいた仲間のように感じました。商店街のシーンはアドリブが多いんですが、どんなことを言っても、キムラ緑子さんや内場勝則さんが、必ず拾ってくださいます。商店街のシーンは和気あいあいとしていて楽しいです。

菜摘は東日本大震災の時に真っ先にボランティアに行っていましたし、すごく正義感が強くて、困った人がいると助けてあげたいという性格だと思います。その根底にあるのは、6 歳のときに見た、阪神・淡路大震災でのみんなの姿ではないでしょうか。苦しい中でも助け合ってきたところを、菜摘は見ているんですよね。

私自身は震災を経験していないので、想像しにくい部分もあったんです。菜摘を演じることになり、阪神・淡路大震災のことをいろいろ調べましたが、演じる前に舞台の場所にとにかく行ってみようと神戸まで行ったんです。

実際に被災されたという商店街の喫茶店に入らせていただき、そこで出会ったおばあさんから1~2 時間くらいお話を聞かせていただくことができました。当時のことを教えていただいて、被災地でどれだけの被害があったのかなどを想像しやすくなりました。


第22週の菜摘と結がお弁当開発をすることについて

これまで菜摘は、どちらかというと結ちゃんの相談ごとを聞く側でした。お母さんの美佐江(キムラ緑子)さんが人助けをしたり、相談にのることが多い人なので、そんなお母さんを見ているからなのかもしれません。

なので、第 22 週の台本を読んで、「菜摘が結に相談している!」と驚き、それだけ社会の厳しさに直面しているんだなと思いました。就職して 7 年、ずっとスイーツ開発をやってきたのに、それがうまくいかずにお弁当開発部に異動することになった、その悔しさがあると思うんです。そのうえ、お弁当でも自分が思っているようにはいかず……。菜摘の愚痴を言いながらもがんばって、それ以上のものを出そうとする姿勢は、私自身もそうなりたいなと思いました。

結を演じる橋本さんとは今回が初共演なんですが、すごくタフな方で、共演者みんながお芝居しやすいようにとても周りを見ている方だなと感じました。「これ大丈夫?」「やりにくくない?」とか、気遣ってくださって、見ていて勉強になります。はじめは緊張しましたが、私が待機場所で座っていると話しかけてくださって、二人とも野球が好きなので、野球の話で盛り上がりました。

「今までの菜摘は、明るく元気なイメージがあったと思いますが、第22週で社会人として悩み、壁にぶつかります。それでもめげずに進んでいく菜摘は、すごく強くて格好いいなと思うので、ぜひ見てほしいです。視聴者の皆さんにも、菜摘を見て、『自分もがんばろう』とか、『あとひと踏ん張りしてみよう』と思ってもらえたらうれしいなと思います」と語る田村さん。阪神・淡路大震災のことを知るために神戸に行って、体験した人のお話を聞いたという熱意のあるかたです。

田畑さんのコメントを読むと、菜摘がボランティアに行ったときの表情の真剣さは、田畑さんの積み重ねがあったからだろうと思えます。

いま、菜摘は部長と相性が悪く仕事がうまくいってないけれど、いい流れがきっと来ると思いたい。

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第22週あらすじ}–

「おむすび」第22週あらすじ

第22週「理想と現実って何なん?」 3 /3-3 /7


結(橋本環奈)は、友達でコンビニの商品開発部に勤めている菜摘(田畑志真)から高齢者向けの弁当を開発したいと相談され、栄養士なりの意見を言う。

それがきっかけで、菜摘の上司から管理栄養士との共同開発の提案があり、結は栄養科長の塚本(濱田マリ)が見守る中、その開発に関わっていく。

一方、歩(仲里依紗)は新ブランドを立ち上げるべく事務所を構え、ギャル仲間たちや佐々木佑馬(一ノ瀬ワタル)とともに始動し知名度アップの策を練る。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

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