映画『国宝』で話題沸騰!今こそ知りたい“歌舞伎の世界”を映す名作たち

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──坂東玉三郎から『残菊物語』『元禄忠臣蔵』まで、受け継がれる芸の魂

現在、大ヒット公開中の映画『国宝』。
主人公・喜久雄(吉沢亮)が、女形として唯一無二の芸を極めていく姿は、まさに“芸に生きるとは何か”を問いかける壮絶な物語です。

本作を観て、「もっと歌舞伎の世界を知りたい」「あの舞台の重みの背景を深く知りたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
今回は、映画『国宝』をきっかけに歌舞伎の世界に興味を持ったあなたに贈る、芸と人生の交錯を描いた映画5選を紹介します。
観終えたあと、心の奥に静かに火を灯してくれる“芸の物語”を、ぜひ堪能してください。

『国宝』(2025)

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

吉沢亮主演。李相日監督が挑んだ、壮絶なる芸道の軌跡。

主人公・喜久雄は任侠の家に生まれ、血塗られた過去を抱えながらも、歌舞伎名門に引き取られ女形の道を歩む。
その過程で出会う天才役者・俊介(横浜流星)との競演と対立、すれ違う恋、師匠との断絶など、
さまざまな葛藤と喪失を乗り越え、“国宝”と呼ばれる存在へと昇華していく。

主演の吉沢亮と横浜流星は、身体を削るような熱演で、舞台の緊張感と役者としての誇りを体現。
実際の歌舞伎俳優である中村鴈治郎の指導のもと、細部にまで息づく所作や衣装の美しさは圧巻です。

映像美と人間ドラマが交錯するこの作品は、芸に生きる者の孤独と覚悟を、観る者に真正面から突きつけてきます。

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

『国宝』

公式サイト:kokuhou-movie.com
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『書かれた顔』

Copyright © 2025 映画『書かれた顔 4Kレストア版』

坂東玉三郎——幻想と現実を往還する、女形という“夢”。

『アラビアン・ナイト』『ヘカテ』など幻想的作風で知られるスイスの鬼才ダニエル・シュミット監督が、坂東玉三郎に密着したドキュメンタリー。

本作で描かれるのは、舞台裏の素顔だけではありません。

女形という“幻”の存在を、詩的映像で浮かび上がらせる美の哲学です。

「鷺娘」「大蛇」「積恋雪関扉」などの舞台映像に加え、杉村春子や大野一雄など、昭和を代表する芸術家たちが語る“表現とは何か”という根源的な問いは、観客に深い余韻とともに、芸能の尊さを伝えてくれます。

Copyright © 2025 映画『書かれた顔 4Kレストア版』


『残菊物語』(1939)

(C)1939/2015松竹株式会社

芸を高めるために、愛を手放した人がいた——。

溝口健二監督が描いたのは、明治期の歌舞伎役者・尾上菊之助と、彼を陰で支え続けた女性・お徳の、切なくも静謐な愛の物語。

家庭内で冷遇される菊之助が、お徳の献身によって自信を取り戻し、芸に目覚め、地方を回りながら成長していく姿は、決してドラマティックではないが、だからこそ真に迫るものがあります。

ラスト、お徳がそっと姿を消すことで、菊之助を“本物の芸”へと導く展開は、“芸の道”に生きるとはどういうことかを、観る者に痛切に訴えかけます。

(C)1939/2015松竹株式会社


『元禄忠臣蔵・前篇/後篇』(1941・1942)

(C)1941松竹株式会社/(C)1942松竹株式会社

歌舞伎的精神を、映画という形で昇華した傑作。

赤穂浪士の討ち入りを描いた忠臣蔵ものの中でも、この作品は武士の倫理観、忍耐、忠義の極致を描いた異色の名作です。

監督は溝口健二。

彼はここで、テンポやカット割りを極限まで抑え、“舞台芸術”としての空間美・所作美を映画に導入。

セリフや表情ではなく、“構え”と“間”で感情を伝えるその演出は、まさに歌舞伎的美学の極みです。

豪華なセットや照明に頼ることなく、人物の佇まいとカメラワークだけで物語の芯に迫る――。

それは現代の映像作品にはない、濃密な“時間の美”を体験させてくれます。

(C)1941松竹株式会社


芸の道に、人生が宿る。

映画『国宝』は、華やかな舞台の裏側で生きる役者たちの孤独、葛藤、覚悟を描きました。
それは、単なる“芸の話”ではなく、“どう生きるか”という問いと直結する物語だったはずです。

そして今回ご紹介した4作品は、いずれも歌舞伎という世界の深層を、映画というフィルターを通して覗き込める名作たち。


それぞれに“芸に生きた者たち”の息づかいがあり、人生そのものが投影されています。

あなたが『国宝』に心を揺さぶられたなら、ぜひ次の一歩として、これらの作品を通じて“歌舞伎の世界”へ深く触れてみてください。

そこには、ただの伝統ではない、今も燃え続ける“生き様の美”があります。

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『書かれた顔』
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『残菊物語』(1939)
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『元禄忠臣蔵・前篇』(1941)
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