映画館の魔法
私は不思議な体験をした。
『天籟』を聴いたのだ。
この映画には音楽の天才が5人登場する。
1人目は
「音だけの夢」を見るヴァイオリンの貴公子、香坂(松坂桃李)
2人目は
己の音楽を実現するためにすべてを犠牲にすることも厭わない邪悪なサタンなのか、
それとも人々に悦びを与えるためにこの世に生まれた音楽の神アポロンの遣いなのか、
マエストロ、天道(西田敏行)。
3人目は
天から舞い降りた天使のようなフルーティスト、あまね(miwa)
4人目は
ヴァイオリニストとして才能がありながら、若くして亡くなった香坂の父親。
ストーリーは、
香坂の「音だけの夢」を軸に動き出す。
若いながらも、コンサートマスターとして人望もあり、一癖も二癖もあるメンバーをなんとかまとめている彼は、天道に反発し、あまねに刺激されながら、
父親の影を追い始める。
その中で、
5人目の天才、音楽を聴く才能に恵まれた天道の妻に出会う。
これをきっかけに記憶の扉が開き、彼の「音だけの夢」は変貌していく。
私も一気に映画の世界に引き込まれた。
聴覚や視覚だけではなく、あらゆる感覚が研ぎ澄まされて、匂いや温度まで伝わって来るような錯覚さえ覚えた。
クライマックスのコンサートのシーンで
天道のエネルギーを受け止めたオーケストラのメンバーが今までで最高の演奏を成し遂げていく。
香坂は、躊躇いながらも渾身の弓を弾く。
スクリーンの前にいる私を呑みこむ圧倒的な音楽。
そして、恍惚の静寂
これが、この世で一番美しいもの「天籟」・・・・?
音楽とは、これほどまでに官能的なものなのか・・・
映画館の大スクリーンと音響効果が
私を不思議な感覚の世界に連れ出してくれた映画だった。
松坂桃李の洗練された雰囲気と所作が美しく、miwaの天真爛漫さとの対比が印象的で、西田敏行からにじみ出るエネルギーと存在感は、まさにマエストロそのものだった。
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