「らんまん」田邊もジョン万次郎にお世話になっていた<第35回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第35回を紐解いていく。
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絵がうまい万太郎
本日、5月19日は神木隆之介さんのお誕生日。30歳になられました。
神木きゅんと呼ばれていた少年俳優ももう30歳。
少年時代から大人まで演じていく「らんまん」は神木隆之介さんの大人俳優としての代表作になることでしょう。
東大への出入りを許された万太郎(神木隆之介)は、植物標本の検定をはじめます。その手際の良さに、研究生たちは感嘆。「便利な人」が現れたと大喜び。
田邊教授(要潤)は万太郎の植物図のうまさを褒めます。
絵を描く万太郎の表情の真剣さ。その集中力は、天才的な頭脳を感じさせます。
田邊教授は土佐には逸材がいるのだと感じます。というのは、万太郎のほかにも能力の高い人物にかつて出会っていたからで、その人とはーー
ジョン万次郎(宇崎竜童)でした。
万太郎は、万次郎の思いを田邊が引き継いだと感じます。
万太郎は坂本龍馬(ディーン・フジオカ)、田邊はジョン万次郎。思いの継承は「らんまん」のテーマのひとつでしょう。
「君と私はつながるべくしてつながったのかもしれないな」
(田邊)
バトンを受け取って走る次世代、万太郎と田邊。万太郎は、田邊が授業をしているところを廊下からそっと見つめます。その眼差しは恋する人のようでもありました。
でも万太郎が恋しているのは、寿恵子(浜辺美波)。
彼女に牡丹の花が好きと聞いて、万太郎は牡丹の花の絵を描きます。ちょうど、田邊の部屋に牡丹が飾ってあったのです。
それをもらった寿恵子は大感激。
牡丹の花を授けられた者は見知らぬ旅に出るのだと、物語世界に没入します。
彼女は、叔母みえ(宮澤エマ)の推薦でダンスを習いに行こうと決意します。見たことのない世界に飛び込んでみたいという気持ちが、万太郎の絵の力で呼び起こされたのです。
みえがそのダンスの話を聞いたひとが、田邊ーー。
まるで絵物語のように数奇の運命がつながっていきます。
ともすればご都合主義のようになりそうな展開を「数奇な運命」に昇華できることこそ作家の力です。
モデルの実話をベースにしながら、空想物語ふうなところも盛り込んであって、ワクワクが広がります。長田育恵さんはきっと物語愛の深い作家なのだと思います。
長田さんは巨匠・井上ひさしさんに師事されたそうです。井上さんはNHKで「ひょっこりひょうたん島」という伝説の人形劇の脚本を書いた作家です(「ひよっこ」では「ひょっこりひょうたん島」の主題歌が使用されていました)。演劇では、実在の人物(夏目漱石や樋口一葉、宮沢賢治、小林多喜二等々)を主人公に、徹底的に資料を調べたうえで豊かな物語化することに定評のある作家でした。井上さんの書いた朝ドラや大河を見てみたかった気がしますが、こうしてまわりまわって弟子筋の長田さんが今、朝ドラを書いている。それも実在の人物を主人公にして。これもまた、継承のひとつではないかと思うのです。
(文:木俣冬)
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