『ザ・ウォーク』、圧巻の映像と、達成感と、ほろ苦さと
シネマズ編集長の柳下修平です。「編集長の新作映画レビュー」、今回は第4弾。ワールド・トレードセンターを綱渡りする偉業を成し遂げたフランス人、フィリップ・プティを描いた『ザ・ウォーク』をご紹介します。
綱渡り圧巻!
本作の主人公は実在するフランス人の綱渡り師フィリップ・プティという方。彼を描いた映画は実は今回は初めてではありません。『マン・オン・ワイヤー』という作品が既に公開されています。
しかし『ザ・ウォーク』と『マン・オン・ワイヤー』には大きな違いがあります。『マン・オン・ワイヤー』はドキュメンタリー映画なのです。なのでこの2つを見比べてみるのも面白かったりします。
『ザ・ウォーク』最大の見所は何と言っても綱渡りシーンです。ニューヨークのワールドトレードセンターの綱渡りシーンは圧巻の映像で私たちを魅了します。高所恐怖症の方だと相当怖いと感じるとの評も多いです。
高所が大丈夫な私でも落ちそうになるシーンで何度ドキッとしたことか。「もう止めなさいよ!笑」と笑い付きで何度スクリーンに突っ込んだことか。そう、ちょっと笑えもするのです。その理由は是非あなたの目で確かめてください!
そんな綱渡りのシーンを最大の見所としつつ、映画はフィリップ・プティの綱渡りと歩んだ人生そのものを描いていきます。そのドラマもまた見どころの一つなのです。
壮大なビジョンを持つ人間に魅了される人々
本作の主人公フィリップ・プティが行った一連の綱渡りは違法行為です。ワールドトレードセンターを綱渡りしようとするその行為も計画段階から違法行為であるとわかっています。しかし、そんなフィリップ・プティに多くの人が手を貸していきます。
なぜでしょう。
人は未知なるビジョン、壮大なビジョンを持っている人に魅了されるのでしょう。
「こういうことをしたい!」
「オレは必ず成し遂げる!」
「絶対にやり遂げる!」
そんな熱さを伴った面白い計画に人は魅了されるのです。完璧でなくても一種のリーダーシップなのかもしれません。
フィリップ・プティはどう考えても完璧な人間では無いですし、綱渡りに魅了されすぎて計画実行前夜はヒステリックになっていました。
それでも仲間たちは彼を見捨てず最後の最後まで付いていきます。
最終的に彼は必ず有言実行すると信じていたからでしょう。彼が成し遂げた綱渡り後の仲間たちの表情が全てを物語っています。
仲間たちの笑顔は「付いていって良かった」の笑顔でした。
しかし、映画はその後のほろ苦さも描きます。人生は全てが全てうまくいくわけではない。偉業を成し遂げても心からの幸せを享受できるわけではない。人生は難しくとも、それもまた人生なのかもしれないという余韻を残す映画でありました。
(文:柳下修平)
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