あなたに役立つ映画・ドラマのプラスαがあるメディア「シネマズプラス」

©cinemas PLUS Committee. All Right Reserved.

2020-08-24

コラム

『グランドファーザー 哀しき復讐』は韓国版『ランボー ラスト・ブラッド』!




第22回:『グランドファーザー 哀しき復讐

今回ご紹介するのは、最近Amazonプライム・ビデオの見放題タイトルに追加された韓国映画『グランドファーザー 哀しき復讐』です。

孤独に暮らしていたベトナム帰還兵の老人が、長年疎遠だった息子の自殺に隠された謎を追いながら、残された孫娘を守るために最後の死闘に挑む! という内容が、先日公開された『ランボー ラスト・ブラッド』を連想させる本作。

邦題やストーリーからは壮絶な復讐劇を期待してしまうのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー


かつてベトナム戦争に従軍した経歴を持ち、現在は工場の送迎バスの老運転手として雇われているパク・キグァン(パク・クニョン)は、帰還兵としての誇りと安酒だけを心の拠り所としながら、ひとり貧しく暮らしていた。ある日、キグァンの元に警察から電話が。長年距離を置いていた息子ソンドゥクが、酒に酔った上に自殺したのだという。突然の訃報に呆然としながらも、葬儀場へと駆けつけるキグァン。彼はそこで高校生に成長した孫娘のポラム(コ・ボギョル)と再会、しばらく生活を共にすることになる。ある日、ポラムの何気ないひと言からソンドゥクの死因に疑問を抱いたキグァンは、真相を求めて独力で調べ始める。息子の死の背後に隠された悲劇を突き止めた彼は、守るべき孫娘のために最後の戦いを挑んでいくのだが…。


孤独な老兵が最後に挑んだ闘いとは?



過去にベトナム戦争で祖国のために戦いながら、現在は家族とも離れ孤独に暮らしている主人公キグァン。

そんな彼が、長年疎遠だった息子ソンドゥクの自殺によって孫娘のポラムと再会し、残された孫娘のために命を賭けて復讐に立ち上がる本作。

ストーリーが進むにつれて、酒に酔って家族に暴力をふるっていたキグァンが、ついに自身の家庭を崩壊させてしまったことが観客にも分かってくるのですが、酔って暴力をふるう父親への反動から、生前のソンドゥクは酒が嫌いだったとポラムに聞かされたキグァンは、酒に酔っての飛び降り自殺と聞かされた息子の死因に疑惑を抱き、独自の調査を開始することになります。



実はキグァンが酒におぼれた原因は、戦場で浴びた枯れ葉剤の後遺症による頭痛を和らげるためだったなど、この複雑な内面と過去を持つ主人公を見事に演じるパク・クニョンの存在は、本作成功の大きな要因となっています。

ただ、パク・クニョンといえば、以前この連載でもご紹介した『チャンス商会~初恋を探して~』でのイメージが強かっただけに、鑑賞前はアクション映画の主人公を演じることへの不安があったのも事実。

しかし今回は全くイメージを変えて、復讐に燃える老いたベトナム帰還兵を演じてくれているのは見事!

加えて、孫娘のポラムを演じるコ・ボギョルの可愛さも、キグァンの心境の変化や復讐への動機に説得力を与えてくれているのです。

さらに、葬儀のためにポラムの家に泊まったキグァンが、慣れない手つきで孫娘のために作る朝食や、逆にポラムがキグァンのために作る目玉焼きなど、何気ない食事シーンに登場人物の心境や関係性を込めた演出が素晴らしい本作。

特に、映画の冒頭で描かれるキグァンの孤独な食事風景と見事な対比を見せるラストは、観る人によってさまざまな解釈ができる名シーンとなっていて必見!

その他にも、キグァンとポラムが訪れた社長宅での食事風景で覚える違和感や、社長宅での食事中に交わされた世間話が、終盤の犯人との死闘で重要な伏線となるなど、表面上は穏やかで普通の風景に不穏な空気を感じさせる演出も、実に上手いのです。

ついに突き止めた息子の死の真相が、皮肉にもキグァンを更なる絶望と後悔に突き落とすなど、単なる復讐アクションを超えて、善悪の境界線や格差社会の厳しい現実をも描こうとした、この『グランドファーザー 哀しき復讐』。

孫娘への愛情と復讐の哀しさが観客の胸を打つ作品なので、全力でオススメします!

最後に



元ベトナム戦争の勇士という主人公キグァンの設定に加えて、孫娘のポラムの置かれた境遇や敵の設定が、先日公開された『ランボー ラスト・ブラッド』を思わせる本作。

こう書くと、息子を死に追いやった悪人たちを老人が次々と殺していく! そんなエンタメ色の強い作品に思えるのですが、キグァンとポラムが次第に心を通わせていく過程が丁寧に描かれることで、終盤の復讐シーンに観客が充分共感できる点も、実に上手いのです。

加えて、2時間近い上映時間の作品が多い韓国映画にあって、本作の上映時間はイッキに観られる92分というのも、観客にとっては嬉しいところ。

ただその反面、犯人側の人間関係や背景をもう少し描きこんでくれれば、ラストの対決への展開が盛り上がったのでは? そう思えたのも正直な気持ちなのです。

とはいえ、過去への贖罪と孫娘の幸せのために、自分の命を賭けて事件の真相に迫るキグァンの姿は、復讐の空しさや秘めた怒りを見事に観客に伝えてくれるもの。

実際、本作で主人公を演じたパク・クニョンの演技は、第20回プチョン(富川)国際ファンタスティック映画祭のコリアン・ファンタスティック部門で最優秀男優賞を受賞しているのです。

事件を再捜査しない警察に見切りをつけ、独自の調査を開始したキグァンが辿り着いた、あまりに残酷で哀しい事件の真相は、ぜひご自分で目撃して頂ければと思います。

(文:滝口アキラ)