『珍遊記』山口雄大監督インタビュー 「映画の最初のセリフがちん◯に決まった時、全体像が見えた。」
──主役の松山さんのキャスティングの経緯を教えて下さい。
山口:元々この企画って、ブサイク芸人さんたちをいっぱい集めて、ワッてやろうみたいな。悪く言えばバラエティの延長線上みたいな企画から始まっているんですよ。
ただ、それをやってしまうと今までやってた『地獄甲子園』とかミニシアターでやってそこそこヒットしたものと変わらないなぁと思ったので、もうちょっとメジャーで見れるものしたいなと思いました。
そこでちゃんと役者でいこうと。ビジュアル優先で、子供無しでいこうと。子供のビジュアルイメージを一度捨てようと。
じゃあ誰が内面からこの山田太郎をやれるのは誰だろうと、それを考えました。
以前、松山くんとは短編の『ユメ十夜』で一緒にやっていて、画太郎さんが脚色を担当してたんですよ。松山くんはその時から「画太郎さんの漫画大好きなんですよ。」みたいな話もしてたし理解があったんですね。
「いつか長編一緒にやりたいよね」とか言いながらも、7、8年経ってました。そこで、松山くんにどうって聞いてみたんですよ。
正直松山くんがやれるビジュアルとも全然違うし、まだ僕もどうやってやってくかうまく掴めていなかったんだけど、二人で作っていかないかという話をしたら、興味ありますって話だったんで。じゃあやってこうって話になったんですよ。
撮影に入った時もまだ僕らの中で、松山ケンイチが演じる山田太郎像がまだかっちり定まってなかったんですよ。不安を抱えながらこうじゃないか、ああじゃないかとやり取りしながら、進めていったんですよ。最終的に決まったのが、撮影の最後の方だったんですよ。
撮影の最後が韓国の撮影だったんですよね。韓国のオープンセットで、その時にはようやくこれが実写版の山田太郎かなってのがお互いに決まってきたので、韓国のシーンは自信を持って撮れたんですよ。全体を通して、韓国のシーンは編集でちょいちょい入ってるんですよ。なので全体を通して違和感は感じないと思います。
今回の作品でやっと松山ケンイチの山田太郎が完成したなと思っています。これでパート2が作れれば全開の山田太郎が作れるなって思いますね。
──倉科カナさんはいかがでしたか?
山口:脚本ができて、松山くんが主演と決まって。そうすると業界内の注目度も若干上がって、興味ありますみたいな話が色々出てきました。「え?この人もこの人も!?」みたいなのもありました。
でも、玄奘役は慎重にやらなきゃいけなくて。清楚でありながらも、下ネタが泥臭くならず、サラッとやれる人、それがまず一つ。そしてもう一つはハゲ頭が似合う人。
松山くんと一緒に旅するんで、一緒にいるシーンが多い。その二人のシルエットがハマる人。松山くんと並んでうまくいく人ってのを、基本に選んでいきました。
倉科さんの頭にアイコラ的にハゲ頭を合成して、松山くんに並べてみたりとか、色々やって。もうこの人しか居ないなってなりました。倉科さんは当時連ドラの後で一ヶ月近く休みたいという話があったんですけど、脚本を読んで是非やってみたいって言ってくださったんで、倉科さんに決めさせて頂きました。
倉科さんの役は松山くんの役ほど悩んではいなかったです。倉科さんは、非常に役を掴んでいたので、ほぼ現場でも倉科さんには言うことがなくて。下ネタもわざとらしくなくサラッと言ってくれたりとか。すごく掴んでる人だなと思いましたね。だからベストだと思いましたね。あと、超可愛くて!こんな可愛いんだと思いましたね。いつも見てる倉科カナとくらべてすごく可愛く見えましたね。
──下ネタをサラっという事でこちらもサラッと笑えるというのはありました。
山口:あの辺ってね、難しいですよ。ああいうこと言うからちょっといきんでみたりとか、その辺のさじ加減て役者の感覚に任せるとこがあるので。お笑いでもやっぱり、面白いこと言ってもわざとらしく言ったりとか、言い方でだいぶ違うじゃないですか。
その辺で僕らが望んでる、「ちん◯」って言い方のバランスが、すごく倉科さんは良かったんです。
だからベストだと思います。可愛いし。
──笹野高史さんのばばあ役が衝撃的でしたけど、当初は違ったとか。
山口:あの役にはちゃんと女優さんをと思ってたんですけど、なかなか女優さんがやると生々しくなりすぎるかなと。ブラを外すとかですね。そういうのもあって決めかねてたんですよ。
笹野さんにはもともとじじい役でオファーしたんですけど、ばばあをやりたいって笹野さんの方から言ってくださって。そこでピーンときて。笹野さんがやるんだったら、気にしてた生々しさもないし、キャスティングとしては絶妙じゃないかと思って。
笹野さんがそう言っていただけるなら即決で決めさせてもらって。
──ピエール瀧さんの特殊メイクがなかなか衝撃的でした。
山口:「ここまでメイクするなら俺じゃなくていいじゃん」とか言ってましたけど、しっかり瀧さんらしい感じを残していてわざと顔を動かす芝居をしてたりとかして。瀧さんは画太郎作品なら出なきゃいけない人なので。誰よりも先に瀧さんが決まったんですよ。
瀧さんは『ハデー・ヘンドリックス物語』という短編に出てもらってて。温水さんが18歳のロック歌手って言う役をやっているんですけど。その時の瀧さんの刑事役が若干おいしくなかったんですよ。瀧さんが試写を観た時に「俺ももっと変な役やりたかった」って言うんで、変な役あげますっていう僕からの回答が今回のやつですね。
今は瀧さんすごい役者ですけど、本来は変な役好きなんでね。楽しんでやってましたよ。
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