映画コラム
アリスの続編だけじゃない!時間を旅するタイムリープ映画オススメ5選!
アリスの続編だけじゃない!時間を旅するタイムリープ映画オススメ5選!
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ルイス・キャロルが創作した『不思議の国のアリス』でおなじみのヒロイン、アリスが成長して再びアンダーランドに赴いた『アリス・イン・ワンダーランド』(09)から3年後、またもアリスがかの地へ入り込んでいく最新作『アリス・イン・ワンダーランド~時間の旅~』を見て、びっくり!
ここでは帽子屋マッドハッター(ジョニー・デップ)の命を救うため、アリスが時を遡っていくというタイムリープ(=時間跳躍)仕立ての内容になっているのでした……。
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.140》
では、今までどのようなタイムリープ映画が作られてきたか、ちょっとおさらいしてみましょう!
やはり最初はこの大ヒット作から!
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』トリロジー
タイムリープ映画のスタンダードかつもっとも映画ファンに愛されている作品といえば、やはりロバート・ゼメキス監督の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』トリロジーでしょう。
変わり者の科学者ドクがタイムマシンに改造した乗用車“デロリアンDNC-12”を駆って、PART1(85)では過去へ飛んでしまったがために若き日の両親の恋愛を阻害&サポートするはめになり、PART2(89)では我が子をトラブルから救うために2015年の未来へ飛んだことがきっかけとなって歴史の流れが変わってしまう惨劇(⁉)を描き、そしてPART3(90)では過去に飛ばされたドクを探しに1885年の大西部時代へ向かう高校生マーティ・マクフライのドタバタ&スリリングな活躍を描いていく大ヒットシリーズで、マイケル・J・フォックスの出世作ともなりました。
PART1は50年代ならではのファッションやオールディズ・ナンバーと80年代ロックの競演が楽しく、、PART2は劇中の未来と実際の2015年を比較するお楽しみもあります(ここでは『ジョーズ19』が製作されているようですが、実際は87年の『ジョーズ87復讐篇(DVDでは『ジョーズ4復讐篇』)』以降は作られていません。ただし、サメ映画に関しては、それこそ19本どころか、おびただしい数のものが作られています)。
個人的にはウェスタン・タッチのPART3が一番好きです。本作が製作された時期は、西部劇人気がすっかり廃れていたのですが、往年の西部劇に倣った描写やハリー・ケリー・Jrなど西部劇名優たちの出演など、西部劇へのオマージュに満ちた本作の人気が引き金になったのか、90年代前半に西部劇ブームが巻き起こり、本作でも大いにリスペクトを捧げられているクリント・イースドウッド監督・主演の西部劇『許されざる者』(92)がアカデミー賞を受賞することになりました。
そう、本シリーズは西部劇まで“バック・トゥ・ザ・フューチャー”させてくれたのでした!(……って、日本語になってるのかな?)
また、ここでドクが出会う美しいレディ、クララ・クレイトンに扮するメアリー・スティンバージェンは、作家H・G・ウェルズが開発したタイムマシンを使って1893年のロンドンから1979年に逃亡した殺人鬼・切り裂きジャックを追いかけるウェルズの活躍を描いた『タイム・アフター・タイム』(79)のヒロインでもあり、本作によって彼女は“時をかける女優”のイメージを定着させることにもなりました。
古典もきちんとチェックしておこう!
『タイム・マシン 80万年後の世界へ』
その『タイム・アフター・タイム』の主人公でもあるH・G・ウェルズが1895年に発表したSF小説を“ファンタスティック映画の父”ジョージ・パル監督のメガホンで映画化したのが『タイム・マシン 80万年後の世界へ』(60)です。
時をかける映画の古典として、やはりこの作品を見過ごすことはできないでしょう。
ここではタイムマシンを開発した1900年のロンドンの発明家ジョージが、16年、40年、66年と小刻みに未来へ飛びますが、やがて一気に80万年後の未来へと到達し、そこでの冒険を描いていくものですが、ファンタジー設定の中に当時の階級社会批判を巧みに盛り込んだ原作小説と異なり、本作は製作された時期が東西冷戦時代だったこともあって、核戦争というモチーフが新たに導入され、原作とは一味違った感触を持つものともなっています。
2002年にはH・G・ウェルズの曾孫サイモン・ウェルズとゴア・ヴァービンスキー両監督(後者のクレジットはなし)によってリメイクされましたが、こちらも死んでしまった最愛の恋人を取り戻すために主人公がタイムマシンを開発するなど、かなりアレンジが加えられた独自のものとなっています。
時間跳躍を描いたロマンティシズムの究極!
『ある日どこかで』(80)
ここらで、時間跳躍をここまでロマンティックに描いた映画はないと断言してもいいほどに、カルト的人気を博し続けている『ある日どこかで』(80)も、含めておきましょう。
これは、かつて『スーパーマン』(79)でご禁制たる時間逆転の技を用いて死んだ恋人ロイス・レインを甦らせたスーパーマンことクラーク・ケントに扮したクリストファー・リーヴが、その後80年に主演した作品です。
原作は『激突!』(72)や『ヘルハウス』(73)、『アイ・アム・レジェンド』(07)などの原作者としても知られるファンタ作家の名匠リチャード・マシスン。これを『燃える昆虫軍団』(75)『ジョーズ2』(78)『スーパーガール』(84)など良くも悪くも一筋縄ではいかない作品ばかりを作ることに定評のあるヤノット・シュワルツが監督しました。
内容をかいつまんで記すと、1980年の脚本家が1912年の女優の写真に魅せられ、「彼女に会いたい」という想いを募らせていくあまり、時間旅行の理論を研究し、何とついに彼女のいた時代へタイムリープしていくというもので、これだけだと「何じゃ、そりゃ?」の世界に思われるかもしれませんが、そこは映画のマジック、現実にはあり得ないことも映画の中ならばすべて実現できてしまうという究極のロマンティシズムを、007シリーズなど映画音楽界の名匠ジョン・バリー作曲の甘美なサウンドトラックの数々に乗せながら見事に具現化し得ている奇跡の映画でもあるのです。
二枚目クリストファー・リーヴと、『007死ぬのは奴らだ』(73)のボンドガールで一世を風靡したヒロイン、ジェーン・シーモアの気品高い美しさも特筆すべきものがあり、初公開時こそ話題にならなかったものの、その後徐々にカルト的な人気を得るようになり、日本でも2010年の「第1回午前十時の映画祭」のラインナップに加えられたほど、熱烈なファンを多く抱き続けて久しい名作なのです。
みんな大好き、大人も泣ける
『STAND BY ME ドラえもん』
日本のマンガ&アニメーション映画から“時かけ映画”を選ぶとしたら、やはり何といっても藤子・F・不二雄が創作した『ドラえもん』シリーズに尽きるでしょう。
タイムマシンに乗って未来からやってきた猫型ロボットのドラえもんと、何をやってもダメダメな少年のび太の、時にドタバタ、時に感動的な交流の数々は、今や日本で生まれたほとんどの子どもたちが洗礼を受けて久しいものがあるかと思われますが、原作漫画やTVアニメ・シリーズ、そして毎年春に御目見えする長編映画シリーズなど多々ある中で、山崎貴監督と八木竜一監督が『friends もののけ島のナキ』(11)に続いて共同で手掛けた3DCG映画『STAND BY ME ドラえもん』(14)は、のび太としずかちゃんが結婚する未来のエピソードを中心に描いた大ヒット作で、「大人も泣けるドラえもん」として高い評価を受け、第38回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞しています。
藤子・F・不二雄の生誕80周年を記念して作られた本作、まさにシリーズ集大成的な内容で、原作漫画を最初から読んでいた大人から、現在の小さな子どもまで等しく楽しめる、ファミリー映画の至高ともいうべきもので、公開中の場内は老若男女を問わずクライマックスからラストにかけてすすり泣きが響き渡っていました。
ひとつ残念なのは、本作は立体視(=3D)作品として製作されていながら、現在発売されているブルーレイが2D版しか存在していないことで、特に八木監督によるこだわりの立体視演出の数々をソフトで堪能できないのは悔しい限り。今からでもリリースしていただくか、もしくはいっそ4DXにして劇場上映を定例化させるという手もあるように思いますが、いかがなものでしょう?
タイムリープは日本映画の救世主⁉
『時をかける少女』はこんなにいっぱい!
今回のトリを努めるのは、やはり筒井康隆のSFジュヴナイル小説を原作とする、大林宣彦監督の『時をかける少女』(83)しかないでしょう。
原田知世の実写映画デビュー作で、『転校生』(82)『さびしんぼう』(85)の中間に位置する大林監督の尾道シリーズ第2作でもある本作は、未来からやってきた少年を、それとは知らずに出会ってしまったことから、やがて時を跳躍する力を身につけてしまい、時に翻弄され、縛られていくていく少女の思春期をノスタルジックに、そして繊細に描いていきますが、その人気は今もまったくすたれることなく、様々な場で上映され、メディアが新しくなるたびにソフトがリリースされています。
本作で特筆すべきは、同じ次元に同じ人間は存在しなくなるという設定で、意外にタイムリープを描いた作品で、こういった事細かい設定に気を配っているものは少ないのです。
(その意味でも今回の『アリス・イン・ワンダーランド~時間の旅~』は、よくぞ考えたり!といった設定が顕れ、それによるカタルシスも与えてくれています)
なお『時をかける少女』の映像化は、70年代に人気を博したNHK少年ドラマシリーズ第1作『タイムトラベラー』(72)およびその続編『続タイムトラベラー』(72)としてドラマ化されたのが最初で、本作のあと、南野陽子主演(85)や内田有紀主演(94)、安倍なつみ主演(02)のTVムービーが存在します。
また、本作のプロデューサー角川春樹が、原作が発表された1967年を舞台に、「リメイクではなく、こちらがオリジナルなのだ」といった気概のもとに監督した97年のモノクロ映画『時をかける少女』、そして細田守監督の出世作となった2006年の長編アニメーション映画『時をかける少女』と、2010年の谷口正晃監督による実写版『時をかける少女』は、それぞれ本作の続編的資質を湛えた内容になっています。
(2015年のキャラメルボックスによる舞台版も続編スタイルの内容でした)
そして今年は、黒島結菜主演のテレビドラマ『時をかける少女』がオンエアされます。
SFというとどうしても製作費がかかってしまうことで、日本映画界ではなかなか企画が通らないものですが、ことタイムリープを扱ったものに関しては、現代劇とさほど変わることなく製作できるメリットがあり、その中から『タイム・リープ』(97)『青天の霹靂』(14)などアイデアを駆使したものが作られ続けています。
一方では自衛隊が戦国時代にタイムスリップして転嫁を狙う『戦国自衛隊』(79)や、売れないお笑い芸人がタイムスリップして戦時下の特攻隊隊員になってしまう『WINDS OF GOD』(95)のようなものまで多彩に作られているのでした。
未来人を乗せたスクールバスが戦国時代まで織田信長の本能寺の変の時代まで遡っていく眉村卓の『とらえられたスクールバス』を原作とする真崎守監督の長編アニメーション映画『時空(とき)の旅人』(86)なんて、今なら実写映画化できそう。
そうこう考えていくと、やはりタイムリープものは、今後の日本のエンタメ映画の救世主となるかもしれませんね。
さて、ざっと駆け足で紹介してきましたが、『アリス・イン・ワンダーランド』を堪能した後、ぜひこれらの作品もご覧になってみてください。
(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
タイムリープひとつとっても、さまざまなアプローチがあることを実感しながら、より作品を楽しんでいただけることと思います。
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(文:増當竜也)
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