映画コラム

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2016年07月13日

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』、物語を読み解く「10」の盲点

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』、物語を読み解く「10」の盲点

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』スマホムービーネタバレ

(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.


上映中の『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』はご覧になりましたか?本作は、ただ楽しく奇想天外なファンタジー映画というだけではなく、奥深いメッセージも持っています。ここでは、作品をより楽しむための10の“盲点”を紹介します。

なお、1ページ目にはネタバレはありませんが、2ページ目は大きなネタバレに触れています。映画をまだ観ていない方は、1ページ目だけを読むことをおすすめします。

1.時間をテーマとした意味とは?


本作のテーマとなっているのは“時間”。主人公アリスは、親友のマッドハッターを救うため、時間を遡る冒険に出ることになります。

この時間という概念は、原作『不思議の国のアリス』でも重要です。なにせ、「遅刻だ!」と騒ぎ立てる白ウサギを追いかけたことで、アリスはワンダーランドへと足を踏み入れることになったのですから。

また、『不思議の国のアリス』の作者であるルイス・キャロルは、幼い少女の写真を撮っていたことでも有名で、それは少女の“今だけの”美しさを残していたかったという願望によるものであるという説があります。

本作には“時間は残酷だ”というセリフがあり、それは“やがて大人になってしまう”少女に対する、ルイス・キャロルの想いそのもののようでもありました。
いわば、時間をテーマにしたことで、作者の“時間への想い”を汲み取っているとも言えるのです。

そして、時間はアリスの成長とも密接に絡んできます。なにせ、物語の序盤においてアリスは時を“泥棒”と、ひいては“敵”とみなしていたのですから。そんな彼女が、どのように時間と戦い、向き合っていくかが、本作の大きな魅力なのです。

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 タイム1


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2.“鏡”の意味とは?


本作の原題は『Alice Through the Looking Glass』で、『不思議の国のアリス』の続編である『鏡の国のアリス』のタイトルそのままです。
しかし、タイムトラベルの要素があったり、大人になったアリスのさらなる成長が描かれるなど、原作の『鏡の国のアリス』とはまったくの別物になっています。
(ただし、『鏡の国のアリス』で重要となるチェスの駒や、有名なキャラのハンプティ・ダンプティが少しだけ登場したりします)

本作の鏡が示しているのは“アリス自分自身”と言ってもいいでしょう。鏡は自分を映し出す存在であるので、その中に入って冒険し、そしてある“答え”を導き出すということは、自分自身と向き合うことと同義なのです。

なお、鏡の中のワンダーランドの登場人物も、それぞれアリスの性格の一面を表しているとも取れます。頑固なのは赤の女王、純粋なのは白の女王、悩みが深いのはマッドハッター、といったように。

この映画は、アリスという女性の成長を、“時間との向きあいかた”と、“自分自身を見つめ直す”というふたつの軸で描いていると言っていいでしょう。
さらに、本作では女性が自分らしく生きる、普遍的に通じる物語が紡がれていきます。

3.昨今のディズニー映画らしく、女性が自分らしく生きる物語だった


昨今のディズニー映画は、“お姫様が王子様と結婚してハッピーエンド”という、スタンダードなおとぎ話を皮肉るのがトレンドのようです。
『プリンセスと魔法のキス』では王子様なんか待たずにお金を貯めつつ努力する主人公が描かれ、『アナと雪の女王』では王子様とお姫様のものとは違う“姉妹愛”が描かれています。

いわば、女性が男性を頼らずに、努力を重ねて自立していく作品が多くなっているんですね。
『ズートピア』はその最たるもので、主人公(女性)が“ウサギ初の警官”を目指すために、どんなことにもチャレンジをする物語になっていました。主人公が出会ったキツネが結婚相手というよりも、あくまで“相性抜群の相棒”のような関係であったのも素敵でしたね(個人的にはこのふたりには結婚してほしいですが)。

こうしてディズニーが、“結婚”や“恋愛の成就”といった画一的な幸せばかりでなく、多様な生き方を提示してくれたことは、とても素晴らしいことだと思います。
目の前の問題に立ち向かおうとする主人公の姿が描かれるのは、夢見るばかりではいられない現代の風潮を反映したものなのかもしれません。

では、本作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』はどうなったかと言うと……主人公のアリスは“船長”へと出世し、男たちにテキパキと指示をしていました。これはもう女性の社会進出を全肯定していますね。

しかし、やはり女性が偉くなることが快く思われない場合もあります。アリスが直面する“仕事を捨てなければいけなくなる問題”や、アリスの母が言う「女のわがままは通らない。受け入れるしかないの」というセリフなどに、女性への差別が垣間見えるのです。

最後に、アリスはどう問題と立ち向かっていくのか、どう女性として成長していくのか……? それは、ぜひ観ていただいて確認していただきたいです。

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 ネタバレ


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4.アラン・リックマンの“最後の声”を堪能しよう


本作は『ハリー・ポッター』シリーズのスネイプ先生でおなじみの名優、アラン・リックマンの遺作です。本作では青い芋虫から蝶々になった“アブソレム”の声で出演し、全米公開の4カ月前の2016年1月14日に亡くなりました。

アラン・リックマンの低く甘く、厚みのある声は“ベルベット・ヴォイス”と呼ばれ賞賛されてきました。ぜひ、最後にその巧みな声の演技を堪能してください。

吹き替え版の声優が、アラン・リックマンの声をほぼ専属で務めていた土師孝也さんというのもうれしいですね。声を聞けばすぐに「スネイプ先生だ!」と気付くでしょう。

5.主題歌の「Just Like Fire」の歌詞にも注目!


本作の主題歌を手がけるのは、女性歌手のP!nk(ピンク)。社会の問題や自身の経験を反映した楽曲により、絶大な支持を得ています。

今回の「Just Like Fire」の歌詞には、強い自由意志と多様性を訴えるメッセージが多分に込められているだけでなく、歌い出しが「時間がなくなってきているのを知っているわ」となっているなど、本作の時間というテーマにもとても合致しているのです。



次ページでは大いにネタバレに触れています!

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