映画コラム

REGULAR

2016年09月10日

『超高速!参勤交代 リターンズ』は色んな意味でリターンズ!

『超高速!参勤交代 リターンズ』は色んな意味でリターンズ!

超高速!参勤交代 リターンズ


(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会



『超高速!参勤交代 リターンズ』、“金なし”、“人なし”、“時間なし”の中、幕府の悪徳老中の陰謀に巻き込まれた弱小貧乏藩・湯長谷藩が実質4日で参勤を成し遂げて一ヶ月。のんびり交代(帰藩)しようとしていたら、なんと湯長谷で一揆が勃発。今度は2日で戻らなければ幕府の滅の観察が入り、“帰る故郷”も“帰る城”も失う大ピンチに。

実は本格時代劇


知恵と人間性で勝負した湯長谷藩の藩主内藤政醇(佐々木蔵之介)にやり込められた老中松平信祝(陣内孝則)が蟄居の身から復活。将軍徳川吉宗(市川猿之助)の日光参拝のすきをついて一気に尾張柳生を使い湯長谷藩乗っ取りをたくらむ。すべてを知り、愛する国と民を荒らされた内藤はついに信祝との7人VS1000人の決戦に打って出る。

時代劇のタイトルに“超高速”なんて言葉が付くものだから、いったいどれだけキワモノな映画なんだと思いきや、なかなかどうして本格派時代劇。

豪華キャストたち


しかも、最近の時代劇の流れで侍だから町人だからという型にはまったキャラクターは一人も出てこず、みんなそれぞれ色々思いをもち、身分は偉くても弱みも持った人間だっているという、考えてみれば当たり前のことを当たり前に描いて、大ヒットした前作から約2年。

佐々木蔵之介、深田恭子、西村雅彦、知念侑李、伊原剛志、石橋蓮司、上地雄輔、寺脇康文、陣内孝則らのオリジナルキャストに加えて、今作からは古田新太、渡辺裕之、中尾明慶らが新たに参加、交代の道中、そしてクライマックスのアクションシーンも大増量。交代のスピードと同じように倍になって還ってきた。

クライマックスの大決闘はもちろん、今回は晴れて両想いとなった佐々木蔵之介と深田恭子のイチャイチャぶり・ラブラブモード全開の様子も劇中の登場人物が軽くあきれるほど展開される。

メインの道中や湯長谷藩の様子と並行して描かれるのが、江戸での情報戦。将軍吉宗が江戸の留守を託した大岡忠相が登場、この名奉行大岡越前を古田新太が演じるという意外なキャスティングがぴたりとはまる。この古田新太や主演の佐々木蔵之介を筆頭に舞台出身の役者が大活躍しているので、それを探してみるのも楽しみ方の一つといっていい。

伊原剛志、寺脇康文、渡辺裕之、ジャニーズの知念侑李など殺陣に定評のあるメンバーもそろっているうえに、敵役を尾張柳生の忍者のような手練れ集団にしたこともあって、アクションのバリエーションも多く見応えもたっぷり。

2年越しに還ってきた「超高速!参勤交代リターンズ」はこの秋必見のエンターテインメント作品。期待値を目いっぱい引き上げて映画館に行こう。

“現代”にフィットした新感覚時代劇が連続ヒット!


前作「超高速!参勤交代」、10月5日DVD&ブルーレイが発売される「殿、利息でござる!」「駆け込み女と駆出し男」「武士の献立」「一命」「許されざる者」「武士の家計簿」などなど、新感覚の時代劇がヒットするようになってきた。

日本オリジナルの映画ジャンル“時代劇”は勧善懲悪、チャンバラ劇、仇討ち劇というようなイメージ強くなってしまい(実際にそうでなかったとしても)、特に若者・女性からはすっかり敬遠されてしまうようになってしまった。

そんな、流れを変えたのは、日本映画界の老舗で時代劇を作り続けてきた松竹だった。
その松竹で長年「男はつらいよ」シリーズを作り続けてきた山田洋二監督による“藤沢周平三部作”(「たそがれ清兵衛」「隠し剣、鬼の爪」「武士の一分」)が登場。
剣の道を行き、使える藩への忠義も持ちながらも、最も大切にすべきものは極々身近の愛する家族・妻・想い人という当時の侍の姿に、“現代”若い観客は自分たちを重ね強く共感した。

時代劇は侍の“時代”に生きる人間のドラマ=“劇”として新しく生まれ変わった。

侍といえども色恋沙汰に四苦八苦はするし。なんでも侍がやっていたのだから、包丁も握れば算盤も弾く。つまりは、時代の違いこそあれ人はいつも一生懸命自分の立場で生きる。そういう当たり前といえばごく当たり前の姿を描くようになってきた。

登場人物はちょんまげを結っていたり、着物姿であったりするし、スマホも持ってない。ただ思い・悩む事柄は現代の我々とそう変わらない。そう思ってみれば、そこにいるのは自分たちと同じ人々がそこにいることがよくわかる。

作り手・演じ手も感覚を変えて時代劇というものに取り組む流れができ始めている。
当然、我々のように紹介する側も、そして皆さんのような見る側も。

昔からの時代劇ファンには多少の違和感があるかもしれないが、それでもこの新しい形の時代劇は着々と数を増やし、映画館で我々を待っている。

(文:村松健太郎)

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