![](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/main_9ab7a6b00343170d2c698e6032de9ac1600b8b5e.jpg?w=1200)
![](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/main_9ab7a6b00343170d2c698e6032de9ac1600b8b5e.jpg?w=1200)
映画コラム
『築地ワンダーランド』築地市場がここまで注目されるワケ
『築地ワンダーランド』築地市場がここまで注目されるワケ
![1TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/c8ec364778369cb6932506b19a4be9ab3af8e0ed.jpg?w=760)
2016年9月29日、『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』の完成披露試写会が開催となりました。本作は築地市場で働く人、築地に魚を求めにやってくる人、築地の魚を食べる人など、人にフォーカスを当てながら築地市場の真の姿に迫ったドキュメンタリー映画です。
築地に位置する東劇で行われた試写会にはゲストに服部栄養専門学校理事長の服部幸應さん、築地市場の仲卸業を営む島津修さん、遠藤尚太郎監督の3名が登場。作品の上映前にトークイベントが実施されました。
築地市場で行われている真実を見る
「築地の方々やいろいろな方々の気持ちが含まれてこの映画がやっと完成しました」と挨拶をした遠藤監督。
![2TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/2345a2bbad98be7ffbfea03b78f1e9642c7861a9.jpg?w=760)
どのようにして本作の撮影に臨んだのかと問われると「この映画は築地の人を記録したかったんですね。日本の食文化の豊かさを再確認したり、そこで果たしてきた築地の役割を描くってことなんですけど。文化というのは常に先人たちから受け継いで次に渡していくものなので、僕たちがどんな文化を育んで次にどうやって渡していくかというきっかけになればいいなと思います」と、監督はあくまでも築地市場に関わる人々について描いた作品であることを強調しました。
そう、本作は現在いろいろと騒がれている豊洲への移転問題を取り上げたものではありません。遠いところから漁をして運ばれてきた大切な魚を築地の人々がどう売るのか。その面白いやり取りがはっきり収められています。
![3TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/7d0cc25a2313f4ac993247981ef3fd17b0a338a2.jpg?w=760)
服部さんは「築地は仲買人(仲卸業者)の方と魚を買い付けに来るお店の店主さんの丁々発止なんですけどね、例えば、Aさんという料理人には本当のことを言うんですよ。でもねBさんには嘘を言うんですね。それをこの映画は克明にとらえているなと思ったんですよ。カメラが回ってるところでやってるんですから」と、鼻息荒くコメント。
1年4ヶ月におよぶ撮影期間中に撮られた映像のなかに、たしかにそのような驚きのシーンがあります!本当にリアルな現場の姿です。みなさんはぜひ劇場でご確認くださいね。
![4TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/1ef508dc4d073070bd5364674a27f75f0f010988.jpg?w=760)
しかし、仲卸の島津さんは「決して嘘をついているわけじゃなくて、その人が欲している魚がみんなそれぞれ違うからなんですね。良い魚を探しているのかもしれないし、値段が安くてちょっといい魚を探しているのかもしれないし。僕らはお客様のニーズを的確に把握するのが仕事なんです」と、買い付けに来た人とのコミュニケーションのなかでニーズを読み取り、ピッタリな魚を提供するのが築地市場の仲卸なんだとおっしゃっていました。
“情報”を提供できる仲卸の強み
“目利き”についてコメントが述べられるシーンがあるのですが、「目利きってお客様があって初めて成り立つものなんです。魚の選び方と目利きは違います」と島津さんは言います。卸業者から良い魚を仕入れてきて単純にそれを料理人に売るのではなく、やはりニーズを基にして魚を渡す。
また、明日の天気は悪いから今日のうちにこの魚を買っておいた方がいいよなんていう情報を提供するのも仲卸業者の仕事。つまり、料理人にとって築地は仲卸業者から魚を買う所だけでなく、料理に直結する魚の情報を手に入る場所でもあるんですね。
魚の良し悪しはある程度までなら誰でもわかるそうです。産地直送で市場を通さずに魚を仕入れる料理屋も増えていて、市場の流通量は減少傾向にあります。そんななかで市場が移転するかどうか不透明な事態にもなっています。
![5TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/8d061ce953f9dcb658c3b632926361054af2fcef.jpg?w=760)
服部さんが市場の行く末について非常に不安そうな態度を示すと、島津さんは「僕らは誇りを持って仕事をするプロフェッショナルです。たぶん、僕の代わりはいっぱいいるけど、僕ら築地の仲卸が束になったらその代わりはどこにもいないので、僕らがいるところが一番だと思っています」と、たとえ市場の場所がどこになろうとも要求に合うピッタリな魚を提供できるぞという頼もしい返答に、筆者も清々しさを感じました。
撮影期間は1年4ヶ月、多くの人の協力で完成
なんと、本作の製作にあたり、市場内の一般立ち入りが禁止された場所にも初めてカメラが入ったそうです。監督をはじめ撮影クルーはそうとう苦労したことでしょう。
「築地市場のドキュメンタリー映画ということで、実は簡単に撮れた映像はひとつもなくて、いろいろな苦労がありました。僕らの努力ではできなかったですし。クラウドファンディングで(資金調達し)空撮ができるようになったりですね。場内を撮影していると肉体的に限界に達する瞬間が訪れるのでそこで買い出しに行くのですが、そのときに会った方から『クラウドファンディングで応募したよ』と声をかけていただいたのが嬉しかった」と監督。
![6TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/36534a3747c00c3f06ae4d4167e64eb33b75e81d.jpg?w=760)
きっと、通常のお仕事をされている方々の邪魔をしないように、と非常に緊迫した雰囲気のなかで撮影が進められたんじゃないでしょうか。撮影に協力してくれた築地の人々やクラウドファンディングで支援してくれた方々の力でこのような素晴らしい作品が完成しました。トークイベントでのお話と試写を通じて、なぜここまで築地市場が愛されているのか、どうして多くの料理人が築地に足繁く通うのか、その答えがわかった気がします。
![7TSUKIJI WONDERLAND](https://images.cinema.ne.jp/media/article/37810/images/a12d39895c1662e6ac2f9c8e57fd9ef13ad3d4fc.jpg?w=760)
『『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』は2016年10月1日(土)に東劇にて先行上映。10月15日(土)より全国ロードショーとなります。日本の食文化を支えてきた築地市場。そして、長い歴史のなかで常にニーズに沿って変化し続けてきた築地の文化を今後も見届けていきたいです。
そうそう、鑑賞後には絶対においしいお寿司が食べたくなりますので、先にお近くのお寿司屋さんを予約してから劇場へ行ってくださいね!
(取材・文:アスカ)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。