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築地を舞台にした映画5つのパターン!小津もゴジラも両津勘吉も、築地大好き!
築地を舞台にした映画5つのパターン!小津もゴジラも両津勘吉も、築地大好き!
(C)2016松竹
古き良き日本の情緒と活気と人情をたたえる町・築地(松竹本社もこの地にあります)を舞台にした映画『築地ワンダーランド』が現在上映中です。
現在何かと騒がれがちな築地ではありますが、そんな喧噪をよそに、この町の魅力こそを描出していく本作。
ならば、この町を舞台にした映画もいろいろあるのでは……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.164》
ってことで、ちょっとばかし調べてみました。築地を舞台にした映画たち!
築地を舞台にした映画
築地を主舞台にした最近の映画として、すぐに思い浮かぶのは、2008年の『築地魚河岸三代目』でしょうか。これは小学館ビッグコミック誌に連載されていた人気漫画を原作とするもので、銀行の人事部員だった主人公が、妻の父の跡を継いで築地魚河岸の仲卸「魚辰」の三代目を務めることになり、そこでの様々な騒動を描いた、往年の松竹大船調を瀧身に受け継いだ人情劇。
どちらかといえばシティ派として映えるイケメン大沢たかおと築地魚河岸のギャップ(失礼!)が魅力的。その伝で申せば、監督も、かつて日本中にブランド・ブームを巻き起こした田中康夫のデビュー小説の映画化『なんとなく、クリスタル』(81)でデビューした松原信吾というのも何やら意味深ではあります。
V6の井ノ原快彦主演の『天国は待ってくれる』(07)は、築地の小学校で学び、今は築地市場、朝日新聞社、銀座の文鳩堂で働く男ふたり女ひとりの友情ラブストーリー……といえば大体ご想像の通り、恋の三角関係のお話になるわけですが、ここではプロポーズした男が交通事故に遭って昏睡状態に陥り、残された恋人と、彼女をひそかに慕っていた主人公(イノッチです)の想いがドラマのメインになっていきます。監督は『きつね』(83)で仲倉重郎、『迷走地図』(83)で野村芳太郎と、松竹映画の名匠に助監督として就いていた土岐善將。やはりどこか松竹大船調の韻を踏んでいるようです。
『最高で駄目な男・築地編』(10)はバナナマン日村勇紀主演『築地で一番ダメな男』、加藤和樹主演『TSUKIJI流』、中野英雄主演『かんからちん』と、築地で働く3人のダメ男を主人公に描いた人情オムニバス映画です。
一気にさかのぼって、1952年の新東宝映画、並木鏡太郎監督の『魚河岸帝国』は、築地市場で「帝国」とあだ名される社長が指揮する魚河岸での運搬を担う男たちの恋と人情の物語。戦後の築地市場の風景を記録している作品として再注目してもいいのではないでしょうか。
小津や成瀬が愛した築地
小津安二郎監督の戦後第1作『長屋紳士録』(47)の中に、度重なる空襲によって焼け野原と化している敗戦直後の東京の景色の中に、空襲の惨禍から免れた築地本願寺などがさりげなくも印象的に映し出されます。従軍経験があり、戦争が何たるかを身をもって知っていた小津監督は、それゆえに戦争の地獄を耐え抜いた建物に未来の希望を象徴させているかのようにも思えてなりません。
『麦秋』(51)はヒロイン紀子(原節子)が住む鎌倉と、彼女の勤務先である東京の丸ビルなどが主な舞台となっていますが、そんな彼女の親友アヤの家は、築地の料亭「つきぢ田村」で撮影されています。築地の食の代表として昔も今も親しまれ続ける「つきぢ田村」、食通で知られた小津監督ならではのロケーションともいえるでしょう。
『彼岸花』(58)には聖路加国際病院聖ルカ礼拝堂が映し出されます。これは明治38年からの歴史ある建物で、関東大震災などを経て、現在の建物は昭和11年に建てられたものですが、その完成当時は全ての病室から屋上の十字架を見ることができたとのことです。
成瀬巳喜男監督の『銀座化粧』(51)は、銀座のみならず築地や新富町、入船などの建物や路地、公園などが巧みなロケーションで映し出されていきます。
それからおよそ10年後に成瀬監督が築地を舞台に撮ったのが『秋立ちぬ』(60)。父を亡くして築地の親戚に預けられることになった少年の哀感を描いた傑作です。
戦後の築地の町に希望を託した小津と、哀感を描出した成瀬。作家としての個性は異なりますが、両者ともこの町に映画的情緒を見出していたことは間違いないようです。
特撮もアニメも勝鬨橋は映画的破壊のメッカ
隅田川に架かり、築地と月島を結ぶ勝鬨橋も古くから映画の舞台となってきました。
『ゴジラ』(54)では映画の中盤、東京に上陸したゴジラが新橋や銀座から上野、浅草を練り歩いたゴジラが隅田川を下り、勝鬨橋をひっくり返すような形で破壊し、その影響で築地は水に吞まれてしまいます。
この後も勝鬨橋は『日本沈没』(73)の第二次関東大震災で、『地震列島』(80)では東京直下型大地震で、ともに本震によるねじれで崩壊するなど(ちなみに『地震列島』のそのシーンは、『日本沈没』からの流用でした)、特撮映画に欠かせない重要な場所ではあります。
(余談ですが最新特撮映画『シン・ゴジラ』では、勝鬨橋ではなく丸子橋などを思い切りぶっ壊してましたね)
その他、勝鬨橋は『機動警察パトレイバー2the Movie』(93)では攻撃ヘリのロケット弾で可動部が破壊されます。
『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』(99)では、隅田川を下るテロリストの船を阻止すべく、勝鬨橋を開いて巡視船やしまが通過し、船ごと川を封鎖するシーンがありました。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE』(99)のクライマックスも、東京中を飛び回る暴走ミサイルを回避するために勝鬨橋を跳開させてジャンプ台代わりにするといったユニークな趣向が図られています。
まだまだいっぱい!築地でロケされた映画
『彼岸花』に登場した聖路加国際病院聖ルカ礼拝堂は、村川透監督『殺人遊戯』(78)や野村芳太郎監督『震える舌』(80)などにも登場し、また西川美和監督の『夢売るふたり』(12)は、築地のすし富や築地市場などでロケされています。
一方、築地を舞台にしているのではなく、築地を別の場所に見立てて撮影された映画もあります。
三谷幸喜監督の『THE 有頂天ホテル』(06)の舞台となるホテルは、実際にはさまざまなホテルでロケし、それらをひとつのホテルのように組み合わせて描かれていますが、そのひとつが聖路加病院に隣接する東京新阪急ホテル築地なのでした。
中原俊監督のキネ旬ベスト1を獲得した吉田秋生原作の名作少女群像劇『櫻の園』(90)では、築地本願寺の調光室にて、美術係以外の2年生が嫌われ者の坂口先生と相対する講堂の控室シーンが撮影されています。
やはり「築地はワンダーランド」!
(C)2016松竹
ちょっと変わり種の築地映画ということでは、実際に起きた事件を基に、海外での誤った日本食の蔓延を危惧した日本政府によって発足されたスシポリスが、世界をまたにかけて「間違った寿司」を一掃しようとするコメディ3DCGアニメ『SUSHI POLICE』。テレビアニメから劇場用作品まで製作されたこのキテレツオモシロアニメ、何とスシポリスの本部は築地市場の中に設置されているという設定なのでした。
『ステーキ・レボリューション』(15)は、およそ2年の歳月をかけて世界20か国以上を調査し、世界一おいしいステーキベスト・テンを決めていくドキュメンタリー映画ですが、その世界3位に輝いたのが、我が国・わが築地の「築地さとう」なのでありました! 使用している肉は丹波牛。オーナー自らの目利きで一頭丸ごと買い付け、2、3週間熟成させたもの。さすがにお値段もそれなりのようですが、生きているうちに一度くらいは行ってみたいものですね⁉(ランチタイムは割とお得だそうです)
こうやってざっと映画作品を並べていくだけでも、改めて築地という町がいかにワンダーランドであるかがお分かりいただけるかと思います。
『築地ワンダーランド』を上映している映画館・東劇も築地にあります。映画を見終わった後、ぜひいろいろなところを聖地巡礼してみてください。
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(文:増當竜也)
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