映画コラム
『エブリバディ・ウォンツ・サム』ありふれた物語だからこそ楽しめる5つ理由
『エブリバディ・ウォンツ・サム』ありふれた物語だからこそ楽しめる5つ理由
(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED
『ビフォア・サンライズ』などでのリチャード・リンクレイター監督最新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』。大学生になる直前の3日間の馬鹿騒ぎを描いた作品で、主人公たちの若さゆえに行動にとても共感ができ楽しい映画です。同作の魅力をお伝えします。
1:3日間という時間設定
主人公が大学生活を始めるため、寮に引っ越してくるところから話は始まります。日本と違って、アメリカではクラブの寮、いわゆる「クラブハウス」というのがあり、主人公は大学野球部の寮に入ります。
寮で先輩たちから、寮のルールやら学校のルールやら生活やらを学んで行くわけで、体育会系の大学生ですから上下関係の洗礼やら、ナンパやら相当おバカなことを教えられます。大学生くらいの男ってこんなもんよねと微笑ましく感じられます。
先輩たちの指導や、部活の練習、そして先輩女性たちとの交流する3日間で、高校生から大学生へと成長していく姿を描いています。その大人の階段の上り方の描き方が秀逸でした。
大学といえば、「人生の中で最後の休暇」という人もいるくらいの自由でいられる時間。さらに主人公は、厳密にいえば高校を卒業したてで大学生になる直前の本当に貴重で自由な時間なのです。大学が始まる直前の思いが語られるシーンが特に良かったです。しかもその後が……。
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2:80年代の衣装や音楽
時代設定が80年代で髪型や衣装、ダンスミュージックもそれに即したものになっています。その時代はといいますと、まさにリンクレイター監督の大学生の頃。当時をよく知っているだけに、時代背景などは現実に忠実といえるでしょう。
音楽も懐かしさが感じられ、当然ながら雰囲気とすごくあっていて楽しくなってきます。特にナンパにディスコに行くシーンなどの音楽は最高です。
3:チームメイトが魅力的
クラブハウスにいるのは先輩や同輩。当然ながら個性豊かな面々。主人公はピッチャーなので、ピッチャー同士そりが合わなかったり、変人扱いされたり。
体育会系のためか、短気で勝敗を気にして負けたらすっごく怒るけど、その後すぐ普通に接する先輩。この先輩との卓球勝負シーンがとても面白いです。
またクラブハウスの過ごし方を教えてくれる先輩や、女性関係で、引っ越してきてすぐに故郷に帰ってしまう同期もいたり。個性的なメンバーなので、遊ぶ時もかなり激しく、やりすぎて出入り禁止になるシーンも。そういうおバカなところも大学生らしくて楽しいな、と思います。
野球の練習でも、新入生たちは先輩たちからかなり激しい歓迎されたりもします。なかなか面白いシーンなのですが、これはやられたくないな、とも思いました。
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4:主人公が魅力的
野球部に入る新人ピッチャーという立場の主人公。これだけ聞くと、「頭脳よりも肉体派」とイメージするかもしれませんが、結構主人公は賢かったりします。文武両道、そしてナンパに連れて行かれた先でも、先輩を差し置いて気に入られるなど、天は二物も三物も与えています。それでいて傲慢なわけでもなく、人当たりもいい好青年。
5:スタッフロールにも注目
本編も楽しいのですが、スタッフロールにまさかの仕掛けがあり、最後まで飽きません。どんなものが用意されているかは、是非本編を鑑賞してください。「まさかこんな飛び道具が来るとは」と思いました。しかもかなり上手い。
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まとめ
同作の描き方、実は『6才のボクが、大人にになるまで。』とほぼ同じなのです。フォーカスしている時間が短いこと、場所や主人公が違うこと以外は基本的に同じなのです。リンクレイター監督は同作を『6才のボクが、大人になるまで。』の精神的続編と称しているのもそのためです。続編といっても話が続いているわけではなく、手法が同じというだけなので見ていなくても理解できる内容です。
何より特別なことはほとんど起こらず、とても楽しく共感しやすい映画だと思いました。この共感しやすさが同作の最大の魅力だと思っています。しんみりすることもなく、最後まで笑っていられる作品です。
(文:波江智)
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