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映画『ミスト』があのラストに至った「3つ」の大きな理由

(C)2007 The Weinstein Company.All rights reserved.



2021年2月16日に午後のロードショーで『ミスト』が地上波放送されます。本作はとにかく衝撃的なラストが語り草となっており、原作者のスティーブン・キングが小説から変更したその結末を絶賛したことも話題となっていました。

このラストは、人によっては「最悪だ」「そんな風になるわけがない」などと、激しい拒否反応を覚えるでしょう。しかし、筆者は結末に至るまでの物語を振り返ると、そこには明確にいくつかの大きな理由があり、納得できるものであったと考えます。そのワケを、以下より解説していきましょう。

※以下より、映画『ミスト』の結末を含むネタバレに触れています。観賞後にお読みください。
 

1: 約束を守ろうとする実直な人間の、「他の全ての方法」が失われてしまったから

主人公のデヴィッドの最後の選択は、車に乗り合わせた仲間たちを、自身の息子を含めて銃殺するというものでした。銃弾が足りなかったためデヴィッド自身は怪物に殺されることを願うも、霧の中から現れたのは軍の戦車でした。そして、物語の序盤に8歳の長女とその弟を救うためにスーパーの外に出て行った女性が、救助用のトラックに子どもと一緒に乗っているのも目にします。あと数分だけでも希望を捨てずに待っていたら、集団自殺をせずに済んだのに……という絶望的なラストとなっていました。

この結末に至ったのは、デヴィッドが息子との約束を守ろうとする、良くも悪くも実直な人間であったことが、まず大きな理由でしょう。「何があってもママの元へ戻る」と約束していたが、母親は自宅の窓辺で糸に覆われて死亡していたため、その約束は叶わなかった。「お前を1人にして悪かった。もう二度と置いていかない」と約束していたからこそ、息子を集団自殺からの生き残りの1人にはしなかった(この場の5人に対して銃弾は4発だった)。何より、息子と「僕を怪物に殺させないで」と約束していたから……デヴィッドは、仲間を含めて息子を銃殺するという最悪の選択をしてしまったのです。

それ以外にも、デヴィッドは仲間のアマンダにも「君1人じゃない、僕たちも一緒だ」と“一蓮托生”であることを話していました。この世の終わりを象徴するかのような、長い脚を持つ巨大生物をも目の当たりにしていました。車の中では、仲間のダンとレプラーは「仕方ない、できる限り努力をした」「誰も否定はできない」とも口もしていました。こうした1つ1つの出来事が、デヴィッドが「もう拳銃で集団自殺するしかない」までに絶望する理由になっています。

その選択に至ったデヴィッドは、火をつけたモップのために大火傷を負った青年ジョーに「俺を救えないのなら、ひと思いに頼む」と言われ、「そんなことを考えるな。必ず何か方法を見つけるから。もう少し頑張ってくれ」と答えていたこともあり、決して自殺を推奨するような人間ではありませんでした。しかし、もしも「他の全ての方法」が失われてしまったら、人は今まで考えるはずもなかった(集団)自殺を選択するほどに絶望をしてしまう。その事実を、この映画は恐ろしいまでの冷徹さで描いているとも言えるでしょう。

狂信者のカーモディの脳を撃ち抜いたオリーもまた、「他の方法があれば撃たなかった」と言っていました(逆に言えば、その拳銃と銃弾があったせいでオリーは殺人を犯し、デヴィッドもあの選択をしてしまったのですが)。しかし、本人が「これしかない」とまでも思う選択であっても、それが本当に正しいかは、結果を知るまでは誰にもわからないものです。だからこそ、あの最悪の後味を残すラストは逆説的に「どんなに絶望したとしても、集団自殺という選択は絶対に間違っている」という、痛烈な批評にもなっているとも言えます。

その批評の証明とも言えるのが、前述したように序盤にスーパーの外に出て行って「子どもの命を救うことを最優先にした」女性が子どもたちと共に生き残っていたという事実。それと相対するように、デヴィッドは自身の子どもを自らの手で殺してしまうのですから……その絶望は、死よりも恐ろしいでしょう。

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