インタビュー
元週刊ファミ通編集長が『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』を語る
元週刊ファミ通編集長が『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』を語る
仮面ライダーとゲームの一周した関係
大谷 加藤さんは初代仮面ライダーを観ていた世代なんですよね?
加藤 そうです。仮面ライダー1号は自分が小学校低学年の頃ですね。その頃は当然「仮面ライダーってかっこいい!」という気持ちがあって、バイクが好きになったし、大きくなったら乗りたいって思うわけですよ。将来はバイクショップの店員になりたいな、とか。
大谷 仮面ライダーが、憧れの大人像みたいな感じ。
加藤 それが今の子供達って、バイクどころか車からも離れちゃってるじゃないですか。メカとかマシンを操縦する楽しさとか、モノとしてのカッコよさとか、古い男子的な価値観と変わってきている。じゃあそれに代わるものが何かと考えると、小さい頃から操縦する楽しさを感じられるものがゲームだったり、ゲームが上手い人がかっこいいみたいなことにもなってる。熟練や免許が必要なものって、遠いものになっているんじゃないかな。だから、ゲームが仮面ライダーのモチーフになることに時代の流れを感じるよね(笑)。
大谷 仮面ライダーが時代を映しているわけですよね。
加藤 そうですね。ゲームって、コンピューターができることのひとつでしかなかったし、もともとは異端児みたいなもので。僕が「ファミコン通信(週刊ファミ通の前身誌)」に入った頃はコンピューターの黎明期で、実用書や解説書を作っている人たちから見たら、コンピューターで遊んでる奴らっていう感じだったんですよ。ゲーセンなんて不良のたまり場だったし、クールジャパンとは程遠いものだった。
大谷 確かに! 実際には見たことないけど、不良ってゲーセンでカツアゲしてるイメージあります(笑)。
加藤 その中からいろんなゲームが生まれて、徐々に魅力的なものに変わっていったわけで、僕らはいかにゲームが面白くて素敵なものなのか、広めていかなきゃいけなかったんですよ。でも、今は小さい子供から大人まで誰でもやっているように、普及しきってひとつの文化として確立した。それが仮面ライダーのモチーフになっているっていうのは僕から見ると一周しちゃってるように見えるんですね。
大谷 見終わった後に「ゲームをやっていた世代が仮面ライダーを作る時代になっている」っていうお話もしてましたね。
加藤 僕はゲーム製作者の話を聞くことも多いんですが、彼らは「変身!」という言葉に、いかに子供時代にワクワクしたかというのを語るわけですよ。「俺がゲームを作ったら、仮面ライダーを見て感じたものをどう取り入れる?」「ゲーム的な表現にするならどうする?」って生まれたゲームもあるんです。仮面ライダーが子供達にとってかっこいいものであり続けてきたから、その感情をゲームっていう文脈に移植して、コンピューター上で操作して面白いものに置き換えてきたんですよね。それが今や、仮面ライダーを置き換えてきたゲームという文化を、さらに仮面ライダーの中に入れ直してみようってことになってるわけじゃないですか。そこが興味深いし、なるほどって思う部分もある。
大谷 時代の流れによって、入れ子式になってきていると。
「エグゼイド&ゴースト」製作委員会 (C)石森プロ・ テレビ朝日・ADK・東映
加藤 影響を与えたものがさらに返ってくる、っていう。パンチ、キックって、ゲームの必殺技のハシリじゃないですか。でも、そもそもライダーキックが先ですから。だから、ライダーが敵を倒して「ゲームクリア!」っていうのも一周してるんですよ。
大谷 おおお、なんだかわかるような混乱してきたような…。でも、ゲームはゲームでさらに進化してますよね。特に今年は家庭用のVRも発売されて。
加藤 そうなんですよ。「エグゼイド」でも、AR(拡張現実)とVR(バーチャルリアリティ)の両方が演出されているのが面白いですね。「ゲームスタート」で、劇中の現実世界にブロックなんかが現れるのがAR的で、最後に敵の中に入って戦うのがVR的。今時のゲームの技術やあり方が投影されているところもすごいなぁと思いました。
大谷 一方で、3頭身の変身フォームっていうのはゲームキャラの原点回帰でもありますよね。
加藤 そうそう。昔はスペック的に2頭身以上のキャラって動かせなかったから、その時代を思い起こさせるよね。ゲームキャラが人間みたいな頭身になったのはだいぶ後のことで、エグゼイドも変身のレベルが上がることで頭身が上がって自由に動けるようになるし、強くなる。そこはゲームの歴史として正しいというか、ゲーム文化に対するリスペクトを感じましたね。
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