映画コラム

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2016年12月20日

きっと原作を読みたくなる―日本小説に基づいた映画5選

きっと原作を読みたくなる―日本小説に基づいた映画5選

依然として日本人の読書離れが騒がれていますが、実際小説を読まない人はどのぐらいいるのでしょうか? 毎日の忙しさと疲れに圧倒され、なかなか本を手に取らない人が少なくないかもしれません。もしあなたも文学に興味があるけどなかなか小説を読む時間がないという状況に置かれているのなら、小説に基づいた映画を観てみてはいかがですか?
というわけで、前回の「小説を読む時間がない人へ―映画化された名作海外文学6選」に続き今回は日本文学の作品に基づいた映画を紹介します。

1:『蜜のあわれ』


蜜のあわれ


(C)2015「蜜のあわれ」製作委員会


1959年に発表された室生犀星の幻想文学作品が原作。老作家の「おじさま」と少女・赤子との関係を中心に物語が進行します。ある時は人間、ある時は金魚の姿を表す赤子と老作家が一緒に暮らし、二人のあいだにエロティックなふれ合いが生まれます。このように秘めた恋に結ばれていた「おじさま」と赤子の前にある日老作家の過去の女の幽霊が現れる。
室生犀星作品の独特なエロティチズムと耽美が見事に表象する映画です。

2:『駆込み女と駆出し男』


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劇作家・井上ひさしの晩年作品『東慶寺花だより』を映画化。舞台は江戸時代の鎌倉、幕府公認の縁切寺だった東慶寺です。複雑な事情を抱えた女性たちが離縁を求めてそこへ駆け込んできたが、寺に駆け込む前に、御用宿・柏屋で聞き取り調査が行われる。そこで調査を行う御用宿の居候が、ワケあり女たちの再出発を手助けするためにさまざまなトラブルに巻き込まれるというヒューモラスな物語です。

3:『八日目の蝉』


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角田光代文学は、母娘関係の困難を披露する作品がたくさんあります。誘拐犯の女と誘拐された少女との逃亡劇を描く『八日目の蝉』がその中で特に人気を集め、そのベストセラー小説が2011年に映画化されました。
子どもを身ごもっていた希和子は、相手が結婚していたために中絶することに。子どもを産めなくなってしまった希和子が、男の妻の赤ん坊を誘拐し逃亡します。「本当の家族」のように暮らしていた二人の幸せはいつまで続けるのでしょうか?
『八日目の蝉』の他『空中庭園』や『紙の月』など、映画化された角田光代の作品がたくさんあります。

4:『私の男』


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第138回直木賞を受賞した、桜庭一樹によるベストセラー小説が熊切和嘉監督によって映画化。
北海道と東京を舞台にする本作品が、津波によって孤児となった10歳の花と彼女を引き取ることになった遠い親戚だという腐野淳悟との関係を描き出す作品です。一緒に暮らす二人が父娘以上の関係を結びますが、その歪んだ関係にまつわる秘密がいつまで守られるのでしょうか?
『私の男』の他、熊切和嘉監督によって映画化された文学作品が田口ランディーの『アンテナー』や瀬戸内寂聴『夏の終わり』などもあります。

5:『トニー滝谷』


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『風の歌を聴け』や『ノルウェーの森』など、映画化された村上春樹の作品が多いです。その中で特に『トニー滝谷』をおすすめ!
子どものときから孤独を抱いていた主人公・トニー滝谷は、買い物依存症の女性に恋をして結婚する。ある日彼女が死んでしまい、トニーに残されたのは決して埋められない孤独と彼女が愛していた衣服。そこでトニーが亡き妻の大量の衣服を着てくれる女性を雇うことに。
この映画は、第57回ロカルノ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞を受賞された他に、ラス・パルマス国際映画祭審査員特別賞第と20回高崎映画祭グランプリの受賞も果した傑作作品です。

いかがでしたか? もちろん映画鑑賞と読書が全く違う経験であり、映画を観ただけで小説を読んだと同じになるわけではありません。しかし、読書から離れている状況にいる人にとっては映画こそが文学世界に入るための第一歩なのではないでしょうか?

(文:グアリーニ・ レティツィア)

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