映画コラム

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2017年04月12日

『夜は短し歩けよ乙女』は星野源が「パンツを恵んでください!」と叫ぶ快作!必見すぎる3つの魅力!

『夜は短し歩けよ乙女』は星野源が「パンツを恵んでください!」と叫ぶ快作!必見すぎる3つの魅力!



(C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会



現在公開中の『夜は短し歩けよ乙女』は、星野源さんが主人公の声優を務めていることでも話題のアニメーション映画。実際に観てみると……これがもう、他の映画とは一線も二線も画すほどの、とんでもない快作でした!以下より、その魅力を紹介します!

1:天才・湯浅政明監督の“ドラッギー”な映像表現がすごすぎる!


アニメファンにとっては、本作が湯浅政明監督の最新作であるということが、まず見逃せないポイントです。テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」に原画から関わっており、その劇場版『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』では絵コンテも担当。「ピンポン THE ANIMATION」に至っては監督、シリーズ構成、脚本、全話の絵コンテ、演出までを手がけていた大ベテランなのです。

湯浅監督の特徴は、いい意味で狂っているかのようなパースの取り方、独特な揺れる線、奥行きのある映像表現などにあります。劇場版の「クレヨンしんちゃん」のクライマックスにとんでもないアクションがある!と思ったら、その多くで湯浅さんの仕事が関わっているのです。

その天才・湯浅政明監督の特徴が、この『夜は短し歩けよ乙女』ではまさに本領発揮!(原作小説の表紙イラストを手掛けた)中村佑介さん原案のキャラが動く、というだけでも感動してしまうのですが、他にも“アニメでしかできない”表現が満載。原作のファンタジーめいた言葉や独特の表現の数々が、“ドラッギー”と言ってもいいほどにぐるんぐるんと動きまくるアニメーションで具現化されるですから、たまりません。これまでの湯浅監督作品が好きな人はもちろん、「斬新なアニメーションが観たい!」と思う方にとっても必見なのではないでしょうか。



2:原作小説を見事にまとめあげた!たった“一夜”だからでこその疾走感に酔いしれろ!



森見登美彦さんによる原作小説は全4章で構成されていて、それぞれ分けられた(季節ごと)の物語になっていました。しかし、この映画版ではそれらのエピソードが統合され“たった一夜の物語”になっているのです。

これにより映画としてのダイナミズムが生まれただけでなく、前述した湯浅監督のドラッギーな映像表現と合わさって、映画全体に“疾走感”が生まれています。目まぐるしく動く奇想天外な画や、歌や音楽、キャラクターを観てワクワクしていたらあっと言う間にエンディング!それでいて、93分という短い上映時間にたっぷりと情報が詰まっているので、一度観ただけでは咀嚼できない、濃密な時間を過ごすことができました。

何より、“人の縁”を紡いでいく摩訶不思議な物語を“一夜限り”で体験できることが、何よりの僥倖と思うことができました。人はどこかで誰かの影響を受けていたり、何かを伝えることができている……その面白さとおかしみを、たった93分(一夜)で、アニメーションという最高の娯楽で味わえるなんて、素晴らしいとは思いませんか?



(C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会



3:豪華声優陣のファンは必見!素晴らしいタレント声優は星野源だけではなかった!



本作はその声優陣の豪華さも魅力の1つ。特に花澤香菜さんのファンは、もう明日地球が終わろうとも観るべきでしょう!“黒髪の乙女”の浮世離れしたような可愛らしさがよりも原作さらにパワーアップしており、「なむなむ」の言い方や、飲み比べの勝負をする時の凛とした雰囲気などなど……もう全編において花澤香菜オン・ステージと言える大活躍、観る人全てが恋に落ちてしまいそうなほどの魅力に満ち満ちていました。

“女装をして男を魅了してしまう”という役を演じる神谷浩史さんも見逃せません。つまりは、“女声”を披露するということであり、それを聞いた瞬間、神谷さんのファンでなくても“ドキッ”としてしまうでしょう!この“学園祭事務局長”というキャラが、原作よりもかなり目立っているのも嬉しいですね。そのモテモテで破天荒なキャラに、神谷さんの声はぴったりでした。

そして、湯浅政明監督が直筆の手紙でオファーをしたという星野源さんも素晴らしい仕事をされています。初めのほうに叫ぶ「パンツを恵んでください!」から勇ましさやら情けなさなさが混在している名演技を見せていますし、何より聞いているだけですごく楽しそうに声の仕事をされているのが伝わってきます。テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の主人公そのまんまを思わせるところや、終盤のとある“声の使い分け”には、星野さんならではの愛嬌と演技力が合わさってどえらいことになっていました。

特筆すべきは、風変わり過ぎるキャラ“パンツ総番長”を演じたロバート(お笑い芸人グループ)の秋山竜次!マジメなキャラが声質にぴったりマッチしており、その芸達者っぷりは他の声優さんとなんら遜色ないというレベル。さらに劇中で秋山さんは歌までも披露しており、それがもうめちゃくちゃ上手い!実は、秋山さんはCMでも歌を披露していたり、バラエティ番組のために曲を書き下ろすなど、アーティストとしての才能が抜群だったのです。今回の起用は、もう大・大・大正解でしょう。



ミュージカル「レ・ミゼラブル」でエポニーヌを演じていたほか、NHKドラマ「純情きらり」の挿入歌も手がけていた新妻聖子さんが、秋山さんとデュエットをするシーンも必見ですよ。

ちなみに、本作はミュージカル映画と呼んでも過言ではないくらいに、終盤は歌って踊るシーンが多くなります。花澤香菜さん、神谷浩史さん、星野源さん、ロバート秋山さん、新妻聖子さん演じるキャラクターが歌って踊って、まさに“夢のように素敵な一夜”を見せてくれるって……これはもう必見では?『ラ・ラ・ランド』や『SING/シング』を観て、「もう1つくらい歌モノの映画を観たい!」と思っている方にもおすすめします!


おまけその1:『四畳半神話大系』との“リンク”を見逃すな!



2010年に放送された深夜アニメ「四畳半神話大系」は、湯浅政明監督が監督、脚本、絵コンテ、演出、挿入歌作詞までも手がけた他、原作者は森見登美彦さん、脚本は上田誠さん、キャラクター原案は中村佑介さん、主題歌はASIAN KUNG-FU GENERATIONと、本作『夜は短し歩けよ乙女』と同じスタッフが結集している作品です。

「四畳半神話大系」をどういう作品であるかをざっくりとご説明すると、“大学生のキャンパスライフが、どのサークルを選ぶかでどう変わるかをそれぞれ描く”というもの。映画ファンにとっては、“分岐した人生”をフローチャートのように見せた『ミスター・ノーバディ』を思い出す方も多いでしょう。言うまでもなく、湯浅監督の独特の映像センスも大きな魅力になっています。

「四畳半神話大系」と『夜は短し歩けよ乙女』はキャラクターに“リンク”があることも大きな特徴です。たとえば、両作品には“樋口師匠” と“羽貫さん”という完全に同じ名前と外見をした人物が登場します。
さらに、「四畳半神話大系」の“小津”と『夜は短し歩けよ乙女』の“古本市の神様”は、同じ顔つきになっていました(声優も吉野裕行さんで同じ)。“古本市の神様”は、原作では女の子にも見える美少年として描かれていたのに、映画ではあえて“小津”と同じ顔をしたキャラとして描くことで、両作品がリンクしていると意図的に描写しているのです。

この他にも、「四畳半神話大系」と『夜は短し歩けよ乙女』には、数多くのリンクしている要素があります。ぜひ両作品を観て、“つながり”を感じる面白さに浸って欲しいです。


おまけその2:劇中のお酒とバーにはモデルがあった?



余談ですが、『夜は短し歩けよ乙女』の劇中に登場するお酒“偽電気ブラン”は、同じく 森見登美彦さんによる小説「有頂天家族」、およびそのアニメ版の劇中にも登場します。実は“電気ブラン”そのものは実在しており、太宰治著「人間失格」の中で、電気ブランは酔いが早く回るお酒として名前が出ていました。通販でも電気ブランを買うことができるので、劇中の黒髪の乙女のように、“飲み比べ”をしてみるのもいいかもしれませんね。

さらに、『夜は短し歩けよ乙女』の劇中で登場する、200円という激安価格でカクテルが飲めるバーは、「bar moon walk」というお店がモデルになっているそうです。京都に実在する他、東京にも店舗があるので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。チャージ料の400円(税抜)は別途かかりますが、本当にたったの1杯200円で、数々のカクテルを楽しむことができるようですよ。

bar moon walk公式サイト
http://barmoonwalk.jp/sp/


おまけその3:『マインド・ゲーム』と『夜明け告げるルーのうた』も要チェックだ!



2004年の『MIND GAME マインド・ゲーム』をご存知でしょうか。『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅監督による作品で、そのあらすじは“ヤクザに殺されたけど蘇って、今度はクジラに呑み込まれてしまう”という破天荒過ぎるもの。とんでもない“性行為”の描写があるのでお子様にはオススメできませんが、観ていて頭がおかしくなりそうなほど(褒めています)のすさまじい映像表現に圧倒される傑作なので、『夜は短し歩けよ乙女』が気に入った方にぜひ観て欲しいです。

そして5月19日より、早くも湯浅監督の最新作『夜明け告げるルーのうた』が公開されます。少年による“心の解放劇”が物語の主軸になるということですが、果たしてどんな奇想天外な映画になっているのか?今から、ワクワクが止まりません!

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(文:ヒナタカ)

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