映画コラム

REGULAR

2017年06月21日

「世界は今日から君のもの」あらゆるクリエイターと、クリエイターを目指す人たちに、ぜひ見てもらいたい秀作。

「世界は今日から君のもの」あらゆるクリエイターと、クリエイターを目指す人たちに、ぜひ見てもらいたい秀作。

■「役に立たない映画の話」




(C)クエールフィルム







門脇麦の、微妙で精細な表情と台詞回し。


先輩 いやもう、試写を見て惚れ込んでしまいまして・・。


爺 門脇麦ちゃんが出ているからじゃろう(笑)。上戸彩、土屋太鳳に続いて麦ちゃんか。このミーハーめ(笑)。


先輩 ちちち違いますよお!!! 確かに麦ちゃんは、この映画でとても魅力的ですが、それ以上にこの作品は、ある種の人たちの琴線を確実に刺激します。クリエイターと呼ばれる方々が見ると、とても感動すると思うんです。


爺 そんなに感動的な映画なのか。「今日から世界は君のもの」。含みのあるタイトルじゃなあ。


先輩 その意味については、尾崎監督ご自身から聞きました。


爺 尾崎監督という方は? それほどたくさん映画を監督していないよね?

先輩 映画を監督するのはこれが2本目です。ただし、テレビドラマの世界では、もはやベテランと言える方で、「特命係長 只野仁」「結婚できない男」「梅ちゃん先生」「ブラック・プレジデント」「オトナ女子」などを書かれている脚本家です。



クリエイターならば、だれもが感情移入してしまうドラマ。


爺 で、どういう話なのかね?


先輩 一言で言ってしまえば、引きこもりだった女性が自分の才能に目覚めて、その道のプロになることを決意するまでを描いた物語です。


爺 えらくシンプルだな。


先輩 そのシンプルなプロセスを、実に丁寧に描いているんですよ。


爺 引きこもっている時の描写とか?


先輩 それもありますが、彼女が自分の才能に目覚めるプロセスとか、でもプロとして生きることの苦しさとか。正直、僕も似たような経験をしていますので、ちょっとうるうるしてしまいました。


爺 お前さんの場合、クリエイターとはまた違うだろう(笑)。


先輩 純粋なクリエイターではありませんよね(笑)。でも、ひとつの仕事をする。僕だったら1冊の本を書き上げて完成させる、そのプロセスでは同じようなことがあるんですよ。


爺 そーかいそーかい。


先輩 だから、この映画を見たクリエイターの人たちが、皆感動したり感激したり、僕のように「ここで描かれているのは、自分自身だ」と思った人も多いんじゃないでしょうか。


爺 監督自身の経験も入っているのかな?


先輩 少なからずご自身の体験を反映させたことはあるとは思いますが、そこはプロですから、それだけに終わっていない。面白くするための脚色やフィクション故の創作はもちろんあるでしょう。



(C)クエールフィルム







YOUの存在感と、真実の服の色の変化に注目。



爺 で、その引きこもりの女性が門脇麦ちゃんってことだな。


先輩 そうです。もう本当に、気が弱くて、心細くて自信がなくて人間関係を構築するのが下手で、見ていて守ってあげたくなる女性を演じています。ただし、実際の彼女はそういうタイプではないそうですが。


爺 その麦ちゃん演じる女性が、周囲の人との関わりの中で覚醒していくプロセスを描いているわけかい?


先輩 そうです。周囲の人たちも、すこぶる個性的で、なんたって麦ちゃんの父親がマキタスポーツさん、母親がYOUさん。


爺 いくらなんでも、濃すぎなんじゃないか(笑)?その両親は。


先輩 特筆すべきはYOUさんで、彼女は実の母親として麦ちゃん演じる真実に、けっこうキツい言葉を投げかける役なんです。でもそれは、母親としての愛情から出ている言葉であって、決して真実が憎いわけではない。そのあたりのニュアンスというか微妙なさじ加減を表現出来るのは、今、この女優さんしかいないんじゃないでしょうか?


爺 確かに適役だな。離婚した母親という役だから、母であると同時に、女としての存在感も求められる。そういうキャラを演じるの、YOUはうまいよね。


先輩 それと、真実が覚醒していくプロセスを分かり安く表現しているのが、彼女が来ている服装。この衣裳、すべて古着なのですが、その色合いに真実の精神状態が反映されているんですよ。


爺 そりゃまたベタな(笑)。


先輩 ラストシーンでは、彼女は真っ白い服を着て微笑みます。

爺 そこまでにどんな事が起きるのか、楽しみに見てみよう。その尾崎監督とは、お会いしたのかね?


先輩 はい。インタビューしてきました。近くここで披露すると思いますが、ディテイルの意味や、それぞれのキャラクターの役割とか、色々とお話してもらいました。


爺 それは楽しみだ。

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(企画・文:斉藤守彦)


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