俳優・映画人コラム

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2017年07月02日

ピンク!アイドル!ドキュメント!天才監督・堀禎一の世界に注目!!!

ピンク!アイドル!ドキュメント!天才監督・堀禎一の世界に注目!!!

■「キネマニア共和国」

夏の娘たち~ひめごと~



今も昔も、まだ巷には知られていない才能があまたいるものですが、日本の映画界も例外なく優れた映画人が存在します。
特に今の時代、製作本数が激増する中で、その分新たな人材が次々と登場してきているのです。

今回ご紹介する堀禎一監督もそのひとりで、7月1日より彼の最新作『夏の娘たち~~ひめごと~』が東京ポレポレ東中野にて公開されますが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.241》

これを記念して、これまでの堀監督全作品の特集上映が同館にて開催されます!

世界はまだ知らない堀禎一
その映画作家としてのキャリア


まずは堀禎一監督のキャリアをざっとご紹介しますと、1969年兵庫県生まれ。東京大学文学部仏文科を卒業後、94年にドキュメンタリー映画の伝説的名匠・佐藤真監督の『おてんとうさまがほしい』の制作助手として映画界入りし、その後数々のピンク映画で助監督を務め、2003年『宙ぶらりん』(成人映画タイトル『SEX配達人 おんな届けます』/DVDタイトル『弁当屋の人妻』)で映画監督デビューを果たします。

その後もピンク映画を数本手掛けつつ、2007年には初の一般映画『妄想少女オタク系』を発表。

妄想少女オタク系 [DVD]



以後、ピンク映画とラノベ系アイドル・ティーン映画を並行して撮り続け、14年からは静岡県浜松市の北端に位置する急斜面集落で行われている茶葉の栽培や、その加工の様子などを収めた『天竜区奥領家大沢別所製茶工場』をはじめとするドキュメンタリー“天竜区”シリーズを手掛け、異彩を放ちました。

今回の特集上映では、彼がこれまで手掛けたピンク&アイドル&ドキュメンタリー作品を一挙上映します。

(詳細はポレポレ東中野ホームページまでどうぞ)

実は私自身、堀監督作品をすべて見ているわけではなく、ドキュメンタリーに関しては未見なので、今回の上映がなおさら貴重でありがたく思える次第ですが、劇映画での彼の作品群からうかがわれるのは、登場人物の繊細な感情を淡々と紡ぎあげながら、人間の正負の心、その機微こそがダーク・ファンタジーであるかのように夜の闇を活写し、一方では川の水の清らかな流れなど田舎の風景(特に夏)を対比させ、一貫して静謐な面持ちを崩すことなく、人が生き続けることの切なさや哀しさなどを描出していくところにあるような気がしています。

そういったこちらの想いを確信の域にまで高めてくれたのが2011年の青春ファンタジー映画『魔法少女を忘れない』でした。いつか誰からも忘れられてしまう宿命を背負った元魔法少女(谷内理早)を護ろうとする兄(高橋龍輝)、そして仲間たち。しかし現実はひとり、またひとりと彼女の存在が記憶から消されていってしまいます。夏の田舎、夜の闇、誰も悪くないのに残酷な顛末へと静かに、そして確実に転がり落ちていくさまなど、魂を揺さぶられるジュヴナイルとして強く記憶に刻印された映画です。

血縁のタブーを清冽に描く
『夏の娘たち~ひめごと~』


新作『夏の娘たち~ひめごと~』もご紹介しておかねばならないでしょう。
夏の娘たち~ひめごと~ サブ18



養父の最期を看取るため、山あいの田舎に戻ってきた直美(西山真来)は、そこで義弟の裕之(鎌田英幸)と再会します。

ふたりはかつて、本当に血が繋がっていないのかどうか不安がりながらも、男女の仲にまで発展していた間柄でしたが、その愛が再燃していきます。しかし……。

ここではヒロインとその仲間たちを中心とする群像劇スタイルで、女たちのひと夏を切なくも淡々と捉えていきます。

そして血縁や家族間の近親相姦など、タブーともいえる日本の土着性に着目しつつ、しかしながらあくまでもそれらを清冽に描出していくことで、男女の心の光と闇が克明に、そして繊細に浮かび上がっていきます。

お通夜で皆が黒い喪服をまといながら和やかに語らい合うシーンでの闇との対比がお見事で、かたや仲間たちと川辺で遊ぶ際の水の冷たさが見ている側にまで伝わってくるかのようなヒンヤリ感。

女同士でアイドルごっこに興ずるさりげないショットからは、それまでのティーン映画キャラのその後といった趣も感じられます。

ヒロインの実家の旅館の構造を立体的に切り取った撮影も効果を上げていますが、ところどころぎこちないズームがあったりと、このあたりの意図は聞いてみたいところです。

本作のチラシの見出しには「世界はまだこの映画作家を知らない」と記されていますが、実際まだ多くの映画ファンは堀禎一という名前はご存知ないことでしょう。

その意味でも、今回は世界に先駆けて彼の名を脳裏に留める絶好の機会ともいえるものでしょう。

日本にこのような才能がいたことを、ぜひ確かめてみてください。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

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